小児科 すこやかアレルギークリニック

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根拠のないこと
2009年10月27日 更新

ふと気づくと、基礎疾患のある患者さんに新型のワクチンが始まる11月2日まで1週間を切りました。

未だに何日に何人分の新型ワクチンが届くのか、何の連絡もありません。私の大して“根拠”のない推測ですが、泉田知事も大っぴらに11月2日から妊婦と基礎疾患のある患者に優先的に接種を始めますと言い切ったので、形の上でも始まるのではないかと思っています。しかし、新潟県に入っているワクチンは当初はかなり少ないと言われています。

こんな状態で医療の現場で大混乱がおこったら、知事の責任はどうなるのでしょうか?。“根拠”のないことは言うべきではないのです。私は“根拠”のないことをする人は信用していません。患者さんの命や健康を守る医療において、なおさら“根拠”は重要になってきます。

今は季節の変わり目でもあり、咳のお子さんが非常に多いのですが、一度当院にかかったことのある患者さんは、また咳が出ればほとんどの方がまた頼って下さるように思います。新患も毎日ビックリするくらい何人も受診してくださっています。当院は宣伝はしていません。“根拠”のあることを行い、良心的に医療していれば、患者さんは自分を頼ってくれるという信念があるからです。

先日、ある患者さんがある小児科で食物アレルギーと診断されたため、心配になって当院に駆け込んでこられました。相当困っておられましたので、時間をかけて対応しました。話を聞けば聞くほど、驚きました。というか正直呆れてしまいました。

私は話を聞いただけで、アトピー性皮膚炎と分かりましたが、アトピーとは診断されておりませんでした。乳児湿疹というには明らかに無理な病状でした。私は「軽いけれどアトピーはありますね」と説明しました。

アトピー自体は軽症だったのですが、なぜかスピラゾンローションというステロイド外用薬を塗り続けるように指示されていました。「ずっと塗っていい」という説明でしたが、本当でしょうか?。実際、ステロイドについて大きな不安を感じていらっしゃいました。改善してきたら、保湿剤を使って維持していくのがアトピーに関するガイドラインに載っているやり方だと思いますので、私はステロイドは止めて保湿剤に移行するように説明しました。

アレルギー検査をして、卵白が2、ミルクが1でした。それでも卵アレルギー、ミルクアレルギーと診断されていました。患者さんはまだ乳児で、卵は食べたことがありません。卵アレルギー疑いと診断すべきです。また、普通ミルクを飲んでいるにもかかわらず、ミルクアレルギーと診断されていました。

本来なら、医師が食物アレルギーの説明を充分にした上で、栄養士がそれに基づいた栄養指導を行うのが普通なのですが、この医院ではいきなり栄養士に回されたそうです。ミルクを飲んでいても特に症状は出ないにも関わらずです。卵の除去はまだしも、普通ミルクを止めるように指示されていました。普通ミルクを飲んでいるミルクアレルギーなんて聞いたことがありません。私は「ミルクはまた飲ませてもらってもいいでしょう」と話しました。

追い討ちをかけるように、母乳を与えている母にも卵とミルクを完全に除去するように指導されていました。おかげで、それ以来、母は好きなものを食べられなくなりました。お母さんには「お気の毒に…」としか言いようがありませんでした。

この患者さんには“根拠”のある対応を見つけることが難しいほど、“根拠”ないことが繰り返されていました。

医師は日々勉強して、技術を売ることで職業が成り立っています。病気で困っている患者さんの症状を“改善”させるのが仕事のはずです。患者さんも苦痛から解放され、医師も報酬を得る。これが本来の「医療」ですよね?。中には、ぜんそくを“風邪”と診断されて、良くならない患者さんもいますが、この場合は症状が良くも悪くもならないので、“横ばい”と言えるでしょうか。

しかし、今回の患者さんの場合は、医療(!?)が介入することで患者さんが苦しむ羽目に陥っています。敢えて言わせて頂きますが、医師も栄養士も“根拠”のないことをいくつも行い、その結果患者さんを追い込んでいるのです。“改悪”と言われても仕方ありません。これは「医療」だろうか?、これで報酬を得ていいのだろうか?と思ってしまいました。

当院が食物アレルギーを専門的にやっていることをご存知なので、「なぜ紹介してくれないのだろうか?」と残念でなりません。今回もそうですが、少し前の米アレルギーのお子さんの離乳食として「毎日うどんを食べさせなさい」という?マークの付くような指導を繰り返すべきではないでしょう。

医師は、患者さんの改善を優先して考えるべきだと思っています。自分ができなければ、できる医師に紹介して患者さんを改善させてもらうのが筋でしょう。私がもし患者さんを紹介しない気持ちを推測すれば、「自分のやり方で間違いはない」と思っているか、「かかりつけの患者を減らしたくない」、「あの医院はアレルギーを診てくれないんだと思われてしまう」、「後輩には紹介するのはプライドが許さない」ことなどでしょうか。これは全て私の推測ですが、「患者さんを治したい」という気持ちが不在であることに気づきます。

新型インフルエンザのワクチンもすべて当院で引き受ければ、収益も上がるでしょうが、当院はぜんそくのお子さんが多いため、11月の時点でワクチンの流通が少なければ、一部の患者さんしか受けられないので、「優先接種対象者証明書」を多く書くことになりそうだと思っています。自身の収入よりも患者さんの健康を考えれば、自ずとそうなるはずです。利益を追求するようになったら医師としては終わりだと思っています。残念ながら、そんな医師は意外といるように感じています。

医師は、“根拠”のないことはやるべきではありません。それは信頼してかかってくれる患者さんを裏切ることになります。私は自分のやっていること、特にアレルギーに関してはそれなりに自信を持って診療しているつもりですが、その反面で日々「何か迷惑をかけていないか」と不安も常に感じています。

私が開業医として長くやっていく際に最も心配していることは、「裸の王様」になってしまうことです。いつの間にか医療が我流になり、“根拠”のないことを繰り返してしまうことです。患者さんは素人なので、自分の医療をすんなり受け入れるし、誰も「それって違うんじゃないですか」と指摘もしてくれません。そのまま本人も使い慣れた、時代遅れの医療を繰り返してしまいます。

“根拠”のないことは行わず、ずっと真面目に患者さんを優先した医療を心掛けていきたいと思っています。