今年の秋は、私も経験がないくらいゼーゼー言いったり咳が止まらないお子さんが多いので、困り果てて当院に駆け込むケースが多いように思います。
ぜんそく患者さんはアレルギー性鼻炎を合併していることが多く、親御さんが「鼻がのどに落ちて咳になっている」と考えて、耳鼻科を受診するケースが多いようです。耳鼻科の先生もそう考えて治療されるのですが、良くならないことが多いのです。
先日来られた患者さんは、ある耳鼻科に通っていました。咳がひどくなると、テオドールという薬を処方され、しばらく続けては止めてをかれこれ3年以上繰り返していました。テオドールといえば、ぜんそくの治療に使う薬で、最近は主役の座を降りています。にもかかわらず、ぜんそくという診断を告げられたことはなかったのだそうです。
いつも同じことの繰り返しで、母も方針を聞いてみたそうですが、「まあまあ、取り敢えず飲んでおきなさい」なんて言われていたそうです。こういう話ってよくあることだと思いますが、患者さんのことを考えるとベストを尽くさない態度は疑問に思うし、分からなければ分からないと言うべきでしょう。何故なら、ぜんそくは耳鼻科の守備範囲ではないからです。
お母さんには正直に説明しました。ぜんそくであること、運動時の咳込みは「運動誘発ぜんそく」といってぜんそく特有の病態であること、思春期にさしかかっての発作は大人に持ち越す可能性が高いことなどなど。お母さんにとって衝撃的な話にとても辛そうでした。しかし、ぜんそくであることを理解し、立ち向かってもらわないと大人になってもゼーゼー、ヒューヒューを繰り返すのです。治せる可能性のあるうちに努力すべきだろうと思います。ご理解頂けたと思っています。
最近は、本当にこういう患者さんが多いのです。一見してぜんそくと分かるような典型的なケースでも、小児科にかかっているにもかかわらず“風邪”や“マイコプラズマ”と診断されています。多分、当院に来られる患者さんは氷山の一角であり、先日も述べた通り、発作を起こせば点滴をしてもらうものと考えている患者さんは少なくないと思います。新型インフルエンザで俄然注目されている「基礎疾患」を見逃されているケースは結構とあるものと思われます。こういう患者さんが新型インフルエンザにかかるとかなりの確率でぜんそく発作を起こすのです。
これを解決するには、小児科医や耳鼻科医が“良心的”になることでしょう。つまり、自分の知識で対応してみて良くならなければ、専門医に紹介することしかないと思います。開業医は横のつながりがほとんどありません。患者が減るのは死活問題なので手放したくないと思うのかもしれませんが、患者さんにとってメリットは何もないのです。逆に、患者さんからの信用を落としかねないと思っています。
医療って不公平だと思っています。ぜんそくはキチンと診断して、適切に治療しないと大人に持ち越す可能性が大きくなります。初めて会った患者さんにも、「オレが何とかしなきゃ」と思い、20分くらいはじっくり説明しています。一方、ぜんそくを“風邪”などと診断して何人も診れば、結果として医院の売り上げは上がります。予防すれば具合が悪くならないので、点滴や吸入も必要なくなります。しかし、病気を見逃して点滴を繰り返せばやはり売り上げは上がります。
また、診療をこだわって説明すればする程、時間がかかります。ワクチンは医院にとっての大事な収入源でもあります。ビジネスライクに新型のワクチンの予約を取ったりする方針の医院さえあります。今は季節性インフルエンザのワクチンを行っていますが、当院は説明が長いので、大勢のワクチンを打つ時間が取れません。こだわらずに、一人当たりに時間をかけない医療の方が、時間的余裕ができてインフルエンザのワクチンを大勢打つことができます。
今年、季節性インフルエンザのワクチンを当院で受けられない患者さんが多かったのも、こだわったスタイルで診療した結果、昨年大勢の患者さんにワクチン接種ができていなかったので、今年はかかりつけの患者さんが増えてニーズが高まったにもかかわらず昨年の実績で配分を決められてしまったこともあるのです。
新型ワクチンに関しても、当院がぜんそく患者さんを多く診ているにもかかわらず、昨年の季節性ワクチンの実績で配分しようという話も出ています。当院にかかりつけの患者さんにとっては不利に働くでしょう。まだどうなるか分かりませんが、季節性のように新型ワクチンもあまり入ってこない可能性があります。
11月2日から基礎疾患を持つ患者さんへの接種が優先的に始まりますが、一部の情報では新潟県全体でも当初は少ししか入ってこないようです。11月に入れば接種できるとお思いの患者さんにとっては、思惑が外れる可能性が出てきました。なお、10月19日からまず医療関係者のワクチン接種が始まる予定でした。自分たちが優先されるなんて申し訳ないと思いますが、現時点で当院には届いていません。やはりいろんな面で、新型ワクチンは遅れがあるようです。
当院はこだわって、真面目に医療に取り組んでいるつもりですが、季節性ワクチンでも新型でも患者さんにご迷惑をお掛けしている気がしてなりません。どうしていくのが良いのか、考え直さないといけないのかもしれません。ちょっと楽天の野村監督のようにボヤいてしまいましたが、真面目にやればやるほど思うようにはいかないもののようです。
そうはいっても、目先に新型インフルエンザの流行があり、新型ワクチンもいずれは入ってきます。当院に配分された範囲内でコツコツとやっていくしかなさそうです。


