先日、診療中のこと、お母さんからタイトルのようなことを言われました。
その患者さんは重症の食物アレルギーがありましたが、卵、ミルク、大豆、小麦、米のすべてがアレルギー検査で陽性でした。前主治医から、これらすべてを完全除去するように指導されていました。
米もいけないと言われ、でも日本人ですからご飯を食べない訳にはいきません。高価なアレルギー米を勧められていました。毎日のことですから、しかも育ち盛りですから、経済的にもややきつかったそうです。
でもおかしいところは、このお子さんはアレルギー検査をやる前は普通のご飯を食べていたんですよね。にもかかわらず、アレルギー検査だけで判断されて、費用のかかる指導をされていました。
当院が食物アレルギー専門と聞いて、受診されました。米の話を聞いて、「以前食べていたんだから、うちで食べさせても大丈夫だよ」と言ったのですが、お母さんは怖がって「やっぱり心配なんですよねー」とおっしゃいます。理論的に説明しても、それくらい医師の言葉って重いんです。いつも言っている通り、根拠のある医療をしないと、患者さんに無駄なエネルギーと出費を強いてしまうのです。
食物アレルギーの基本は、「食べて何ともないものは食べられる」です。確かにアレルギー検査の値を見ると、陽性の項目が並んでいますが、実際に食生活を聞いてみると「米の他に大豆と小麦はすぐにでも食べられそうだな」と分かりました。
私が力を入れている「食物負荷試験」は、本当に食べられるかどうかを確認する方法ですが、「食べられるはず」のものを実際に食べさせて、親御さんに自信を持って頂くという使い方も可能です。
実際に豆腐とうどん、牛乳を持ってきて頂いて、実際に医院で摂取して頂きました。いずれも何も起きず、アレルギー検査が陽性であっても食べても問題ないことが明らかになりました。
卵もいけると思ったのですが、卵焼きを食べさせてみると、口の周りに蕁麻疹が少し出てしまい、卵だけは部分的に除去をしなければならないことが分かりましたが、それ以外のもの、つまりミルク、小麦、大豆、米はあっという間に解除できました。お母さんのご都合で「食物負荷試験」の日程を決めましたが、ものの3か月でこの患者さんの食生活がガラリと変わった訳です。
それまでは外食もままならなかったそうです。今は卵製品の濃いものだけを避けていればいいのです。あとは何でも食べられるはずです。月とスッポンくらいの差があるのではないでしょうか?。「小児科はどこに行っても同じ」と決して考えて頂きたくないし、実際にそれだけの変化があった訳です。
これまではお母さんがお子さんの食事の準備をされていました。主婦がいきなり卵とミルク、大豆、小麦、米を除去して食事を作るように言われても、無理ではないでしょうか?。今は卵料理さえ気をつけていれば、普通の人と同じものを食べてもアレルギー症状が誘発されることはなくなりました。お母さんも長年のストレスからほぼ解放されたはずです。
お母さんは近々入院する予定だそうですが、お子さんの食事もさほど気にせずに他の方に任せられるため、「安心して入院できる」と言われたのです。
「アレルギー科」を標榜は自由です。日本はアレルギー科の医師であってもほとんどが「食物負荷試験」を行っていません。やや極端に言えば、医師の知識によって患者さんの食生活はどうにでも変わる、ということです。食物アレルギーのお子さんがこれだけ増えている現在では、小児科でアレルギー科を標榜するには、食物アレルギーの基本的知識を学ぶことを義務づけるなり、対応が求められていると思っています。


