安田大サーカスというお笑い芸人がいます。
先日、グループの団長が腹痛で緊急入院したと報道がありました。ご存知の方も多いと思います。
ここで問題なのは、報道によると8日午前に急激な腹痛に襲われ、近所の内科病院を受診するも原因が分からず、救急車を要請。受け入れ態勢が整っていないという理由で複数の病院をたらい回しされたということです。
夜間や休日なら「受け入れ態勢」が整っていないでしょう。しかし、8日は水曜日の平日なんですね。平日のましてや午前中ならスタッフは揃っているはず。「受け入れ態勢」が整っていないってどういうことなのだろう?って思います。では、いつなら受け入れてもらえるんだろうって思ってしまいます。
個人的な経験ですが、4年くらい前のことです。男性の重症心身症患者さんの様子がおかしいと平日の18時半頃だったでしょうか、病棟の看護師から連絡がありました。重症心身障害者なので、どこが痛いと教えることはできませんでした。看護師さんが全身くまなく診てくれていて、睾丸が赤く腫れていることに気付いていました。触ると苦痛で表情が歪みます。
今回の安田大サーカスの団長も睾丸がねじれる「精巣捻転」という病気だったのですが、その時もこの病気ではないかと強く疑いました。私の当時勤務していた病院は泌尿器科がありませんでした。あと私にできることと言えば、泌尿器科の先生に連絡を取らないといけません。
近隣の病院の泌尿器科の先生に電話をかけ、受け入れ要請しました。結局、その日に緊急手術になりました。手術は無事に成功し、数日後に転院してきました。ホッとしたことを昨日のことのように覚えています。
今回の団長の話に戻りますが、平日で、しかも大きな病院のたくさんある都内で受け入れ拒否が起こりました。各病院の拒否した理由は詳しくは分かりません。それぞれ事情というものがあったのでしょう。しかし、どの病院も緊急手術があったり、満床だったのでしょうか?。うがった見方かもしれませんが、引き受けることはできたのだけれど、「断っておけばどこかで引き取ってくれるだろう」という病院もあったかもしれません。
たらいまわしにあって、妊婦が死亡した事故は記憶に新しいと思います。私の記憶が確かならば、受け入れ要請は夜だったと思います。病院は夜になると当直医しかいません。産婦人科医も泌尿器科医もいないはずです。「担当医がいない」と断った病院もあったようですが、いないのが当たり前です。私も病院に勤務していた頃は自宅待機していて、重症な子どもが受診し、当直医が対応し切れないとすぐに呼び出されていました。この件に関しても、真実は分かりませんが、「断っておけばどこかで引き取ってくれるだろう」という病院もあったかもしれないと思っています。
先日も奈良県の病院で心臓の病気をでっち上げられて、心臓カテーテル検査を繰り返されていた病院の医師が逮捕されました。医師のモラルの低下を表す事件のひとつでしょう。マスコミからたらい回しという言葉で報道されるようでは、モラルの低下を指摘されても反論はできないのではないでしょうか?。
誰だって急激に病気を発症して緊急入院、緊急手術になる可能性があります。夜間や休日にそんな状況に至ってしまうかもしれません。たらいまわしという言葉がなくなって欲しいと願っています。
当院は開業医なので、当直業務はありませんが、症状がよくならずに困り果てて当院を受診される患者さんが多いのです。開業医には開業医のやれることがあるはずです。やれることはキチンと行い、胸を張れるような医療を行っていきたいと考えています。


