小児科 すこやかアレルギークリニック

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食べられる場合もあるけれど
2009年06月11日 更新

昨日は、ある小児科で卵を完全に除去するように勧められていたにもかかわらず、食べても何ともなかった話をしました。

患者さんにしてみれば、「こんなことなら早く制限を解除して欲しかった」というのが正直な気持ちでしょう。しかし、これを読んで「主治医が何も言ってくれないから自宅で食べさせてしまおう」とか、小児科医自身も「意外と食べられるみたいだから、検査が高くても食べさせてみよう」などと誤解してもらっては困ります。

以前も触れましたが、「食物負荷試験」をやったことのない医師が、卵でアナフィラキシー“ショック”という最重症の症状を起こしたことのあるお子さんに、医院内で食べさせるケースもあるようです。何も起きなかったからよかったものの、その話を聞いた私自身が怖くなってしまいました。食物アレルギーは、よく分からなければ専門医に紹介することを推奨されています。他の医師に紹介したくないのかもしれませんが、そんな安易なものではありません。「プロ」の微妙なさじ加減が不可欠なのです。

先日、ある患者さんに卵製品の「食物負荷試験」を行いました。この患者さんもある小児科で卵を完全除去するように指導されていました。昨日のケースと違うのは、以前卵製品を食べてさほど強くはないけれど、アレルギー症状が誘発されていたことです。ただし、アレルギー検査はかなり下がっておりました。昨日の話の流れからすれば、卵焼きが食べられてしまうのではないか?ということになると思います。

過去の経験から、いきなり卵焼きというのははばかられたので、卵入りの焼き菓子を選択しました。お菓子は卵焼きに比べれば、卵の成分はかなり少なく、私としてはこれまで完全除去を続けてこられた親御さんに対し、卵製品が食べられるという“夢みたいな話”が現実であることを立証しようと考えていました。つまり、勝算は充分と内心考えていたのです。

食べ始めてしばらくして、さっきまで喜んで食べていたのに「食べたくない」と言い出し、トイレに行ってゆるい便をしてしまいました。食物アレルギーの症状は、何と言っても蕁麻疹などの皮膚症状が出やすいので、負荷試験に時間がかかっていたために、飽きてしまったのかもしれないなと思っていました。

その他に明らかなアレルギー症状がなかったので、お菓子程度なら食べられそうだと考えて、帰宅して頂こうと思いました。しかし、その直後に“事件”が起きました。咳が出て、蕁麻疹がパラパラと体に出始めたのです。つまり、焼き菓子程度でも反応が出てしまうことが明らかになりました。

私の目の前で起きましたので、すぐに診察をして対応薬を投与して、まもなく症状は落ち着きました。院内で起きてくれたので、速やかに対応できました。

ここで問題にしたいのは、アレルギー検査は疑陽性くらいまで下がっていたこと、昨日の話は1歳の子でしたが今日は5歳という高い年齢だったことです。

検査が下がってきたら食べてもいいというのは、ケースバイケースであることがご理解頂けると思います。また、以前も1歳半だから大丈夫とか、2歳になれば少しずつ自宅で食べさせればいいと説明された患者さんの話をしましたが、あまり根拠のないことが分かります。病気には軽いものから重いものまであり、ひと括りに年齢で区切るのはおかしいのです。1歳が食べられて、5歳が食べられない、そういうケースもあるのです。

この患者さんに家で卵焼きを食べさせてみたとしたらどんな重い症状が出たのだろうかと思います。ちょっと想像しただけでもゾッとします。非専門医の指導の元で、自宅でアレルゲンを負荷して欲しくないのは、こういうことが起こり得るからです。

今回のお話で「食物負荷試験」は入念に問診した上で、専門医が丁寧に慎重に負荷する食材を選び、行うべきものということがご理解頂けたと思っています。食物アレルギーの患者さんには、医学的根拠のある正しい医療を受けて頂きたいと願うばかりです。