自身が開業医になってみて、勤務医との違いを実感していました。
以前、勤務していた病院では外来を2人の小児科医が担当していました。私の元にアトピー性皮膚炎などアレルギーの患者さんが来て、じっくり話し込んでも、隣の先生が待っている患者さんの診療を進めてくれるのです。同僚の先生に悪いなと思いつつ、話を充分にしなければならない患者さんにはそうやって対応していました。
開業してみると、医師は私一人しかいません。誰も手助けしてはくれないのです。一人の患者さんに30分話し込めば、次の患者さんは30分は待つことになります。待ち時間が長いということは、医院のデメリットになります。「もっと待たない医院へ行こう」という気持ちも出てくるでしょう。
しかし、当院を初診で来られた患者さんに、これまでは早口で説明されて、病気のパンフレットを渡されて、質問もできずに診察室をあとにしたとおっしゃる方々がいるのも事実です。特にアレルギーは、風邪や水ぼうそうのような病気と同じ対応でいいはずがありません。2~3分の説明や渡されたパンフレットで理解できる性質の病気ではないからです。
当院は、そのアレルギーを専門にやっているので、良心的にやればやるほど大勢の患者さんを診ることは難しくなります。もともと私の場合は、勤務医の生活に疲れて開業を志した訳ではありません。アレルギーの患者さんが気軽に訪れるクリニックを作りたかったのです。
そして開院して1年3か月経ちました。当院は、待ち時間が長いのは事実だろうと思います。かと言って、患者さんから当院が敬遠されているかといえば、当院を支持してくださる患者さんが確実に増えています。
医院としては、患者さんが多ければ経営に有利です。「うちは患者さんが多い。説明が足りなくても(患者さんは)仕方ないと分かってくれているはず」という医師もいるようですが、私は考え方が異なります。
当院でも、さすがに風邪などのじきに治ってしまうような病気にはさほど時間をかけていませんが、咳が長引く、皮膚が赤くカサカサしているなどアレルギーが強く疑われれば、似たような症状の病気と区別するためにも、丁寧に情報を収集して考えて対応しなければなりません。つまり、困っている患者さんには時間をかけて、診断がつかなかったり、症状がよくならない患者さんに「安心」を提供しなければならないと思うのです。診察が速くても診断もされず、症状も良くならなければ、全く意味がないと思っています。
「こんな風に説明してもらったことはない」とよく言われますが、当院は説明を私なりにじっくりとやっているつもりですし、これが当院の“売り”というか方針だと言っていいでしょう。そういう方針でやっていて、かかりつけの患者さんも当院でインフルエンザワクチンを希望される患者さんも増えています。勤務医との診療スタイルの違いに、開院当初はやや戸惑っており、どんなやり方がいいのか模索もしていました。しかし、日頃診療していて今のやり方でいいんだと手応えを感じています。
もともと「丁寧な診察や説明」と「短い待ち時間」とは相容れないものです。今後も長所を伸ばして、なるべく改善すべきは改善してというスタイルで地域医療に貢献していきたいと考えています。


