先日外来をしていたら、某市からはるばるご両親がお子さんを連れて受診されました。ある小児科アレルギー科にかかっていていたそうです。皮膚がガサガサして痒いという症状があるのに、「皮膚の診断は何と言われていましたか?」と聞くとお母さんは「卵アレルギーです」と答えられました。
「いやいや、卵アレルギーは卵を食べて蕁麻疹などのアレルギー症状が出るものであって、皮膚がガサガサしているだけなら卵アレルギーとは診断しませんよ」と言うと、「そういえばそうですね」ということになりました。
おくすり手帳をみると、過去に3件の小児科と1件の皮膚科を受診されているようです。どの医療機関でも皮膚についての診断はなされなかったそうです。最後にかかった小児科でアレルギー検査をして、卵アレルギーが判明したそうです。でも、いつも言っている通り、卵を食べて症状が出た訳ではないので卵アレルギーではなく、卵アレルギー疑いと診断するのが正しいと思います。
結論から言うと、診断名はアトピー性皮膚炎でしょう。3件の小児科では保湿剤が、1件の皮膚科ではステロイド剤が出されていました。医師は的確に診断し、重症なら症状に合った治療を行わなければ、症状を改善させることはできないのです。なかなか症状も改善せず、充分な説明もなかったので、親御さんは医者を替えるという行為を繰り返していらっしゃいました。その結果、しびれを切らして当院まで来られたそうです。
某市の患者さんが、なぜ当院のことをご存知だったのかよく分かりません。でも困り果てて藁をもつかむ思いで当院を受診してくださったのかと思うと、ご両親ともに充分理解して頂くまで説明をしようと思いました。他の患者さんには申し訳なかったのですが、混雑しているから「重症でじっくりと説明を受けなければいけない患者さん」の説明が短いのというのは“おかしい”ことだと思っています。私は医院の都合よりも、患者さんの都合を優先すべきだと考えています。
週明けの混雑する外来の中、30分くらいはお話ししたと思います(汗)。お母さんは、うんうんうなづきならがよく聞いて下さいました。お父さんもアトピーとの診断は想定外だったようで、最初は驚いた表情でしたが、最後には「ここまで来てよかったなー」と奥さんに話しかけていました。
診断も治療方針も充分お示しできたと思いますので、多分、これで医療機関を替えることはないだろうと思っています。ちょっと遠いのですが、腰を据えて治療に取り組んで下さるといいなと考えています。
赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の罹患率は10%を超えています。アトピーはありふれた病気です。「診断」があるから、「治療」に進めるはずなのです。体中くまなく診察すると、赤ちゃんらしい正常の皮膚は少なく、重症と判断されました。
こういう場合は、保湿剤の効果は期待できません。皮膚が炎症を起こしていますので、ステロイドは効果的なはずです。しかし、残念ながらステロイドもどれくらいの量をどれくらいの期間使用するという説明もありませんでした。患者さんはステロイド自体に敏感なことが多いので、使用量の目安を示さないと往々にして過小治療になることが多いのです。
来月、この某市のある幼稚園でこどものアレルギーについて講演する予定になっています。アトピー性皮膚炎の診断を的確に行って初めて治療が成り立ちます。こどもを扱う職種の方々に、アレルギーについて正しい知識を持って頂くために力になりたい、そう思いました。


