RSウィルスをご存知でしょうか?。
大人や年長のお子さんがかかると“風邪”症状で済むのですが、赤ちゃんの気管支のしかも細い部分で大暴れして、痰も作るし、気管支を荒らします。その結果、ぜんそくでもないのにゼーゼー、ヒューヒューいって激しい咳が出ます。場所が細い気管支(酸素を運ぶパイプ)ですから、ほんの少量の痰で窒息しそうになってしまいます(=呼吸困難)ので、体力のない乳児の場合は入院治療が必要になるケースが少なくありません。
しかも、荒らされた気管支はその後もゼーゼーいいやすくなってしまい、ぜんそくと似たような経過を辿ります。赤ちゃんの時にRSウィルスにかかったグループと、かからなかったグループを比べてみると、かかった方がゼーゼーいいやすく、10年以上その傾向が続いたという報告があります。
つまり、RSウィルスにかかったかどうかで、“その子の人生が変わってきてしまう”可能性があると言っても過言ではないと思うのです。
このウィルス、お母さんのへその緒からもらった免疫は効かないため、生後1~2ヶ月から痰の絡んだ咳やゼーゼーがみられるようになります。生後半年くらいは感染症にかかりにくいことはご存知でしょうが、この年代の赤ちゃんが苦しそうな咳をすることで、普通の小児科医ならRSウィルスではないかと推測することができます。
インフルエンザかどうか調べる検査はご存知ですよね?。細い針金で鼻の穴の奥から鼻水をもらってきて調べる検査です。同じ手技でRSウィルスの有無を調べることができます。しかし、これに関して変な決まりがあります。入院している患者さんだと保険で認められているのに、外来では認められていないのです。つまり、外来診療しかしていない開業医では調べる程に赤字になるのです。
ある市の医療機関のホームページを見ていると、A医院の出している感染症情報には「RSが流行っている」と書かれているのに、同じ市のB医院の情報によると患者数が実数で表されているのに、RSの患者さんがほとんどいないことになっているのです。
当院は、ぜんそくの専門的医療を提供していますし、呼吸器疾患にもこだわっています。ましてや、その患者さんがRSにかかったことで人生がかわってしまうかもしれないと思うと、調べずにはいられません。なぜ咳が止まらないのか、なぜゼーゼーしてしまうのかと、患者さんが困まり果てて当院を頼って受診して下さるのですから、損得の問題ではないと思うのです。
当院は、乳幼児がゼーゼーいわなくても咳が止まらないとRSウィルスを調べることがあります。またぜんそくの患者さんがゼーゼーいうのはよくあることですが、治療しても良くならず、もしやと思ってRSウィルスを調べると陽性のこともあります。こういうケースでは合併している訳です。こうなるとアレルギーの専門医でないと、分かりづらいのかもしれません。
ちなみにRSウィルスは、通常秋から春にかけて流行しますが、上越市では今年はなぜか夏場に大きな流行があり、市内の病院の小児科病棟の入院患者さんの全員がRSウィルスだった時期もあったそうです。当院からも入院治療が必要と判断された患者さんを何人も紹介して治療して頂きました。最近も少数ですが、陽性の患者さんはいます。
以前、ネットで読んだのですが、RSウィルスの感染状況は、医師のすべてが調べている訳ではないので、正確な把握は難しいと書かれていたように思います。麻しんや水ぼうそうのように典型的な発疹が出ないため、疑わないと分からないし、ゼーゼー言った状態はぜんそくとの区別が難しかったりします。日頃から診断技術を磨いていないといけないと思います。しかも検査料の問題も絡んでいます。
「感染症情報」は、患者さんが参考になるように出されていると思うので、医療機関も出すからには、なるべく正確な情報を提示できるように努力すべきだと思っています。


