小児科 すこやかアレルギークリニック

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それだけ!?
2008年10月21日 更新

食物アレルギーの詳しい診療は、「食物負荷試験」をやっている医師でないと難しいと思います。

低年齢児では、ともすると14人に1人くらいの割合で食物アレルギーがみられます。これだけの頻度であるのに、負荷試験はなかなか普及しておりません。しかし、先日、市の検診で「入院した上で卵を1個食べた」とおっしゃるお母さんがいて、地元でもやる医療機関が出てきたようです。当院だけでは、実施しきれないので患者さんにとっても歓迎すべきことだと思います。

新たに始められた先生も、実際に負荷試験をやってみて、いろいろな困難にぶつかると思います。それは最初にどれだけ食べさせるか、という問題です。例えば、牛乳なら唇にちょっと付いただけで腫れる子もいれば、(とりあえず)5ml飲んでも何ともない子もいます。以前やった負荷試験のスタートが5mlでうまくいったとしたら、また5mlで始めようとすると、とても敏感な子では強いアレルギー反応は避けられないでしょう。

過去の摂取状況をよく聞いて、考えながらスタートの量を設定しないといけません。しかし、完全除去をしていて、全く食べていないのなら予想すらできません。そういう場合は、皮膚テストが参考になります。あらゆる手段を駆使して、負荷試験における不慮のアナフィラキシーを避ける努力をしないといけません。

以前、イクラを食べてアナフィラキシーを起こしたお子さんがN市から紹介されてきました。3年ほど除去していたので、食べられるかどうかハッキリさせて欲しいとの依頼でした。イクラはアレルギー検査もできますが、確か「2」くらいのどちらとも取れるような値でした。

自宅から当院まで120キロ以上あるので、何度も受診できません。先ほどの話のように、いきなり限界の量以上を食べさせてアナフィラキシーに陥ってもらっても困ります。そこでイクラ自体を使ったプリックテストをやってみました。結果は「陽性」でした。

私は迷いました。食べるとアレルギー反応が起きる可能性がある。でも皮膚テストも大きく腫れて、正確でないこともある。食べさせてみないと分からない。でも最初に食べさせる量の設定も難しいし、自宅から遠いので強い反応を起こさせることはできない…。しばらく葛藤がありましたが、ご家族がシロクロ付けることを望まれて、県庁所在地からはるばる私の技術を信じて、こんな田舎の医院まで来られましたので、決行することにしました。

負荷のスタート量を決めるの当たり、イクラ一粒をさしだし、口に入れるように患者さんに言いました。そして噛まずにすぐに口から出させました。ご両親は「えっ、それだけ!?」という顔をしています。

その15分後に、口の周りに蕁麻疹が数個出始めました。ここで負荷試験は「陽性」と判断しました。それ以上アレルギーを進行させないようにと薬を飲ませ、心配しましたが、そのくらいの症状で食い止められました。

この負荷試験で分かったことは、「この患者さんはイクラを一粒たりとも食べられない」ということです。ご両親は一部始終を見ておられますので、しばらくイクラを食べさせようとは思わないでしょう。患者さんには痒い思いをさせて申し訳なかったですが、本人もイクラはこの3年くらいは未知の食物でした。彼自身も赤いツブツブの食べ物を食べられないことは理解できたと思います。

この時の負荷量は、これまでの経験と勘で決めました。自分で言うのも何ですが、的確な設定ができたと思っています。何はともあれ、シロクロを付けるという責務は果たせたのではないかと思っています。今後、私は食物負荷試験の必要性を説いていこうと思っていますし、負荷試験の認知が高まるにつれて病院では少しずつ入院の上での負荷試験が普及していくものと思われます。というか普及させていかなければならないのです。

しかし、患者さんにとって入院して負荷試験を受けることは、経済的や時間的に制約を受けると思います。私は患者さんのニーズに合わせて、外来にこだわって「食物負荷試験」をやっていこうと思っています。