外来で「吸入器を買った方がいいですか?」と時々聞かれることがあります。私は「いいえ、買わなくてもいいです。」、いつもそう答えています。
“吸入器”とは、ぜんそく発作の時に気管支拡張薬を霧状にして、それを吸うことで気管支を広げて呼吸を楽にさせる機械のことです。多分、発作を起こすのは夜間が多いので、吸入器を持っていれば、いつ発作を起こしても安心ということなのだと思います。
吸入器を買う意味は二つあると思います。“いざという時に備えて”という意味合いと、“日頃の治療に使う”という意味です。以前、インタールという抗アレルギー薬に、メプチンという気管支を広げる薬を混ぜて、1日2回というように定期的に吸入をする治療が一世を風靡したことがありました。これを続けていると、発作を起こしにくくなるということで、ぜんそくの患者さんでちょっと重い子供たちは、たいてい連日の吸入治療を行っていました。
専門医の間でも、若干意見の差があるのかもしれませんが、私は吸入器を購入して頂くことには賛成はしません。まず、「発作時のために買っておく」なら、発作を起こさないようにすればいいと思っています。ぜんそくの症状を時間をかけて問診すれば、キチンと治療すべきか、しないで経過をみていいか、だいたい区別がつきます。過去の入院歴、発作頻度、気管支の敏感さなどを聞けばいいのです。そもそも“発作を起こすことを前提に吸入器を買う”というのはちょっと変だと思いませんか?。発作を起こした時点で、患者さんは呼吸困難や睡眠障害などの“苦痛”を味わってしまうのです。吸入しなければならない可能性が高いのなら、専門的な知識を持って早め早めの対処で、発作は抑えられるものだと思います。
インタールの定期吸入のために吸入器を買って頂くのも、最近はより効果的な内服や別の吸入薬が利用できますので、朝と晩に子供さんをなだめすかして5~10分かけて吸入する必要はなくなると思っています。吸入器は2~3万程度しますし、手間のかかる治療法です。以前よりも買わなくて済む状況にありますので、私は無駄な出費を避けるような治療法を選択しているつもりです。
予防的治療が必要と判断されれば、最近の薬は効果が高いので、いきなり入院するほどの重い発作を起こす可能性はかなり少ないはずです。気になることがあれば、早めに受診するようにお願いしておけば、発作の芽を摘むこともできると考えています。当院もかなりぜんそくの患者さんが増えていますが、吸入器を買って頂いた患者さんは一部の例外を除いて、一人もいません。
ぜんそく発作を繰り返したりすると、ぜんそくの薬を、歴史のあるものから新しいものまで何種類も飲んだり、吸ったりしている患者さんを目にすることがあります。“あれもこれも”ではなく、その患者さんの症状に合った“必要最低限”の治療薬を選択してあげるべきだと思っています。
ぜんそくと診断されて、治療を受けていてもなかなか症状が治まらない方、充分な説明を希望される方、薬が何種類もあって1種類でも減らしたい方、薬の中止を指示され、じきに症状が出ることを繰り返している方など、またぜんそくと診断されていなくても咳が長引いてお困りの方も含めて、ご相談下さい。


