今日、「幼稚園の先生に紹介されて来ました」とおっしゃるおばあちゃんが、咳の続くお孫さんの手を引いて初診されました。
以前から咳が長引きやすかったそうですが、近くの医院で診てもらっても特に今回は治りが悪く、幼稚園の先生から当院を紹介されたというのです。その園では、咳の長引く子が当院を受診して、咳が止まったということが2~3回あったそうで、受診を勧められたそうです。とても有り難いことですし、真面目に取り組んで来てよかったと思います。
前医の診断は“風邪”でした。しかし、専門的に診察してみると、実は“ぜんそく”でした。“風邪”は、短期間に治る「急性」の病気です。一方、“ぜんそく”はゼーゼーや咳き込みを繰り返す「慢性」の病気です。同じ「咳」が出る病気ではありますが、診断は大違いです。一番の違いは“治りにくさ”であり、当然治療法も対処法も異なります。
以前もお話ししたと思いますが、ぜんそくであれば6割しか治らず、残りの4割が大人に持ち越してしまうのです。ぜんそくと認識しておらず、発作を繰り返し、ぜんそくがどんどん重くなっていくこともあります。ぜんそくがある場合、親御さんにも理解して頂き、早めに受診して頂くように話したり、急に発作を起こした時の対処の仕方を話しておかないといけません。ちょっと風邪薬を飲んだくらいで治ってしまう“風邪”とは、全く違うのです。
なぜ、こんなことが起こってしまうのでしょうか?。患者さんがどっと押し寄せる医療機関では一人当たりに時間をかけていられないのも現状でしょう。また「咳」は私の記憶が確かならば、小児科を受診する理由として「発熱」に続く2位だったと思います。小児科を受診される病気の大半が「風邪」ですので、区別がつけにくい場合もあるのかもしれません。発作時は聴診器で“ゼーゼー”が聴き取れますが、お子さんが泣いていればほとんど聴こえません。当院は聴き逃したくないので、泣き止ませてから入念に聴診しています。実は、こうやって聴こえる場合も少なくありません。当院は知名度が低いですし、逆に他院に通院しても咳の治らない冒頭のような患者さんが受診されます。アレルギーの専門医として、ぜんそくは見逃したくないと思っているので、尚更見つけやすい状況にあるのかもしれません。しかし、専門的知識を持って、ちょっぴり時間をかけて問診したり聴診すれば、ぜんそくの診断は難しくないのです。
当院は「丁寧に説明し分かりやすい医療を」をモットーにしていますが、さすがに“風邪”の患者さんに5分も説明はしません。しかし一般外来の中で「慢性」の病気をいかに見つけ出すかは、腕の見せ所だと考えています。なにせ、“子供たちのぜんそくが治るのか”、それとも“大人に持ち越すか”がかかっているんですから、一生の問題になり得るのです。
確かに、ごく一部の本当に重症の患者さんは治療が難しいのですが、軽い状況から「早期発見・早期治療」でそれ以上重くしないことも重要だと思うのです。となると「ぜんそくです」と診断した日に、なぜぜんそくと判断したか、どう治療するか、どんなことに気をつけないといけないか、発作時の対応、なぜ治療を継続しないといけないか、予後などを親御さんにお話ししなければならないことが沢山あります。平気で20~30分かかってしまいます。これはアレルギー専門医としての私のこだわりです。
私にとって「小児科」として“急性”の子を何人も診ることも大事ですが、「アレルギー科」として、ぜんそくなど“慢性”の患者さんに向き合うことも重視したいのです。急性の患者さんが多い医療機関では、一人当たりに時間をかけられないようですから、“慢性”に時間を割くというのは現実問題として難しいのではないでしょうか。どんなに効率のいい説明をしても、3分診療では到底無理です。ある程度話せたとしても、患者さん側に充分な理解が伴わず、一方通行である可能性があります。一筋縄ではいかないようなぜんそく患者さんを役割分担といいますか、紹介して頂けると有り難いと思っています。


