小児ぜんそくで対応が難しいのが、「乳児」と「思春期」だと以前書いたと思います。
「乳児」は気管支が細い、痰が貯まりやすい、痰を出せない、症状の進行が速い、薬が上手く飲めない・吸入も上手く吸えないなどが理由として挙げられると思います。一方、「思春期」ともなると気管支も太くなり、痰も上手に出せるようになるでしょう、薬も飲もうと思えば、吸い薬も吸おうと思えば上手にできますよね。ところが、思春期特有の“自立心”が邪魔をします。部活や塾、友達付き合いなどで忙しいため、なかなか通院も難しく、“反抗期”でもあり親御さんの言うことに聞く耳も持ちません。ぜんそくが軽ければいいのですが、重ければ、本来なら治療をして発作を起きにくくするためにしっかり治療しないといけないのに、発作を我慢したり、簡易式の「シュッ」という吸入器で発作をかわすようになります。
ぜんそく発作は、気管支が狭くなって、酸素不足により苦しくなります。本当は気管支が炎症を起こして“荒れ”ているので、吸入ステロイドなどの炎症を抑える(荒れをしずめる)治療が必要なのですが、吸入するとあっという間に気管支を広がり、呼吸が楽になる「気管支拡張薬」に依存するようになります。それを吸えば、確かに“一時的”には呼吸困難は改善されるのですが、効果が切れると間もなく苦しくなり始め、また「シュッ」とやってしまう。この治療はまさに「その場しのぎ」であるのですが、繰り返しているうちに発作が収まってしまうこともあるのです。思春期の患者さんにしてみれば、通院せずに発作をやり過ごすことができればいいと思うのでしょう。尚更、通院しようなんて気も起きないのです。
少し前の話ですが、ぜんそくの死亡率が上がった時代にその原因として、この簡易式の気管支拡張薬の過度の使用が考えられていました。ぜんそくは発作を繰り返すことで、気管支の敏感さが増し、より発作を起こしやすくなります。発作をしのげても、実はその陰で、炎症は進行し、発作の起こしやすさは確実に増大していくのです。
重めの発作を起こした時に、この薬を吸うと確かに楽にはなるのですが、残念ながら、普段と同じくらいまでには楽にはなりません。それは気管支が狭くなっているために奥まで薬が入らないからでしょう。また長期連用のために薬が効きにくくなっている可能性もあります。発作の加速度が強いと、またじきに苦しくなりますが、再び吸うと最初よりは効かないものの、少し楽になるので、また吸ってしまう。繰り返し吸入しているうちに酸素不足が進行してしまい、死亡してしまうケースすらあるのです。
私も、思春期の子の対応では結構苦労しています。できればこういう年代になる前に、ぜんそく発作をほとんど起こさない状態にしておきたいのが本音です。当院では、最近は小学校中学年から中学生の子の受診が目立つようになりました。「主治医から治ると言われてきたのに、なぜ良くならないのか?」と疑問に思って「アレルギー専門と聞いて来ました」なんて言われることが多いです。ぜんそくは、最近では6割くらいしか治らないのではないかと言われています。専門医でも、発作を繰り返す子が「治る」かどうかは確約できないのです。とにかくキチンと治療することが重要だと思います。
思春期の、将来のある子供たちの力になれるように、いい方向にもっていけるように、丁寧に問診し、肺機能検査で客観的に評価もして、その子に合った治療法を選択しながらひとりひとりにじっくりと対応していきたいと考えています。


