先日、食物アレルギーという病気は血液検査だけで判断すると、結構な確率で“オーバー”な除去になってしまうと書きました。その場合、悪気はないにしろ“被害”を被るのは患者さんとご家族となります。
アレルギー検査をやるのは、小児科医であることが多いですが、血液検査の結果、主治医から「卵と乳製品と小麦を除去して下さい」と言われてしまうこともあるでしょう。乳児期なら離乳食は米と野菜で進めることが多く、まだ小さいうちは何とかなると思います。これが1歳、2歳、3歳となっていくと、いろんなものを口にするようになります。今の時代は、表示を見るとたいていの食品に卵か乳、小麦が入っていますよね?。成長とともに園に預けるケースも増え、お母さんの目の届かないところでいろんなものを摂るようになってきます。仮に小麦を摂れるようになったとしても、卵と乳の2大アレルゲンを完全除去する食生活は、果たして継続可能でしょうか?。ご自分のお子さんが食物アレルギーだったとしたら、そのような制限を続けていけるのだろうかと、顧みることをお勧めします。「言うは易し、行うは難し」だと思うのです。
厚生労働省が作成した「食物アレルギーの診療の手引き2005」にはアトピー性皮膚炎が食物アレルギーが引き金で悪くなってしまうような病態の場合は、血液検査をして3項目以上が陽性の場合は「専門医に紹介」と書かれています。また卵焼きやヨーグルトを食べて、じんましんのほかに乾いた咳を立て続けにしたり、ゼーゼーいったり、嘔吐したりすることがあります。このような「皮膚」と「呼吸器」、または「皮膚」と「消化器」、というような2つの臓器に渡る症状を起こした場合を「アナフィラキシー」といいます。重めのアナフィラキシーを起こした患者さんは、やはり「専門医に紹介」と明記されています。
食物アレルギーの治療の基本は、“アレルギーを起こす食品の除去”に尽きます。食物アレルギーは年月とともに、少しずつ卵や乳製品を摂れるようになっていく確率が高いです。しかし、いつも言っているようにアレルギー検査が「0」になるのを待つのはナンセンスです。私の経験ですと「2」や「3」でも食べられるケースが少なくありません。食品を除去している最中は、間違って卵や乳の入ったものを食べても症状がなければ、除去や制限を見直すチャンスです。しかし、完璧に除去していた場合は、頃合いをみて「食物負荷試験」が必要になります。厚労省のガイドラインによると、この場合もやはり「専門の医師による食物負荷試験」と記載されています。
ここでいう専門医とはアレルギー科を標榜する小児科医でしょうか?。これなら県内に相当する先生は数多くいらっしゃいます。もしくは日本アレルギー学会認定の専門医でしょうか?。こうなると県内で6名程になってしまいます。先日の食物アレルギー研究会では、日本の第一人者の先生が「アレルギー専門施設で負荷試験をマスターしてきた者」にすべきであるとおっしゃっていました。となると県内では更に減ってしまいます。
医学にはEBM(科学的根拠)が大切だと書きました。こうした風潮の中で、「食物アレルギーの診療の手引き2005」が生まれました。必要最低限の除去をするためには、やはりチャレンジ精神は必要なのです。かといって“家”で行う無謀な挑戦という意味ではありません。“医師の目の前”で行う「食物負荷試験」は食物アレルギーの管理には必要不可欠な検査であると認識して頂きたいと思います。この検査の存在を初めて知った方は野蛮な方法と思われるかもしれませんが、プロがやれば症状が出たとしても軽く出る程度のことがほとんどです。逆に、検査だけで除去や制限をし続ける方法は数年前まではスタンダードな治療法でしたが、今となっては“古い”やり方と言わざるを得ず、EBMに基づいていないのです。
北海道や東北には、食物負荷試験を受けに関東まで行かなければいけないのかと悩んでいる患者さんもいらっしゃると聞いたことがあります。これだけ医学が進歩しても、こういった格差といっては言い過ぎかもしれませんが、不便な状況が存在してしまうのです。患者さんはみな“適切”な医療を受ける権利があると思うのです。この状況は、ガイドラインを作った厚労省が先走っているのか、医療機関の対応が遅いのか、私には分かりません。ただ、ここまで食物アレルギーの患者さんが増えてくると、「除去しておけばいずれは治る」と除去が全てといった昔の状況から変わってきているのは確かだと思うのです。医師側も“時代”についていこうとする努力は必要だと思うのです。
まず、「食物負荷試験」という検査が“存在する”ことを知って頂くことから始めなければなりません。私一人ではどうにもできない部分もあるので、食物アレルギーに力を入れていらっしゃる関係者の方々のお力をお借りして、何とか前に進んでいかなければならないと思っています。そして全国の食物アレルギーの子供たちが、できれば同じ都道府県内で食物負荷試験を受けて、必要最小限の除去が可能になるよう願っています。私自身は負荷試験を学んできた人間として、新潟県の食物アレルギー医療を微力ながら支えていきたいと思っています。


