小児科 すこやかアレルギークリニック

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EBM(イービーエム)
2008年02月12日 更新

「EBM」、一般の方ならこの言葉を聞いたことのない方も多いと思いますが、医療関係者の間では知らない人はいない程、大切な“方針”です。「エビデンス ベイスト メディスン」の頭文字を取っているのですが、「(科学的)根拠に基づく医療」という意味です。

これまでの医療は、経験的勘に頼ることも多かったのですが、どれほどの意味があるか分からないまま、慣習的に行われていた治療もあったことと思います。怪しいものは一切排除し、科学的に有効性の明らかな医療を提供しようというのが、今の考え方なのです。

例えば、1990年代ころまではアトピー性皮膚炎の治療にステロイドは副作用が多く、適さないなんていった意見もありましたよね。その当時はあまりEBMなんて言われていなかった時代だったので、患者さんや一般の方も含めていろんな噂が飛び交い、何が正しくて、何が間違っているのか分からない状況になりました。肝心の皮膚科の医師でさえもステロイド肯定派と否定派に分かれて、対立関係にあったと聞いています。プロでさえもそうなのですから、素人である患者さんも翻弄されてしまい、社会問題にまでなりましたよね。

それでどうなったかというと、本来、イニシアチブを取るべきであった「日本皮膚科学会」が重い腰を上げ、“EBM”に基づいたアトピー性皮膚炎を治療方針を定めようと動き始め、「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」ができました。それ以来、水戸黄門の印籠のような存在となり、ちまたに浸透するにつれてステロイドに対する不安感も払拭されてきていると思います。

私のこだわっているアレルギーに関しては、EBMに基づいた医療をと思い、重点を置いて勉強しているつもりです。例えば、小児ぜんそくは以前は気管支が収縮して苦しくなっているだけなので、吸入や内服で気管支を広げてあげればいいと考えられていました。研究が進むにつれて、小児でも成人と同じように気管支のアレルギー性の「炎症」が本態であることが判明しました。ですからぜんそくの治療は、ある程度重い患者さんに関しては、“抗炎症作用”のある薬を選択し、なるべく少ない種類を継続するのが今のやり方です。症状をしっかりと抑え込めるような効果のある選択すべきであり、それでもダメなら治療をガイドラインに沿って強化する必要があります。この考えが最近、急速に進んできましたので、逆に気管支を広げる吸入の長期の連用は好ましくないといわれてきています。時に使い慣れた従来の治療をされている先生もいらっしゃいますが、重い患者さんにはなかなか通用しないのではないかと思います。よくならなら場合は専門家に紹介して頂ければと思います。

小学生以上になると「肺機能検査」ができるようになります。肺機能が異常の場合は、大人に持ち越す可能性が高いですし、気管支拡張薬の吸入前後で肺機能に変化が出れば、いま発作を起こしている、もしくは気管支がかなり傷んできていることが分かります。これもEBMに基づく検査ですが、小児ぜんそく患者の90%以上がやったことがない検査です。全国的にも、もっと普及すべき検査です。

最近は、ぜんそく治療に「吸入ステロイド」が使われるようになり、これまでの過小治療が減ってきたため、小児ぜんそくで死亡するが人数が減ってきています。これは喜ぶべきことなのですが、発作がほとんど起きなくなれば、治療は減量して中止を考えるべきです。吸入ステロイドの中止法は一定の見解もないので、主治医によって異なります。私は「気道過敏性試験」をやるようにしています。“客観的にどれだけ発作を起こしにくくなっているのか”、“薬を中止してもいいくらいの状況になっているのか”を評価する方法があるのです。

他の分野でも、例えば食物アレルギーの食事制限に関しても、私がいつも言っている「食物負荷試験」がEBMに沿った対処法であり、血液のアレルギー検査のみの判断は正確さに欠けています。このように書き出したらキリがなく、今日のスペースには到底書き切れません。いずれにしても、患者さんは適切な医療を受ける権利があります。我々医師(小児科医)が患者さんのために勉強して、なるべくEBMに基づいた確かな医療を提供できるよう心掛けなければいけないのだと思います。