小児科 すこやかアレルギークリニック

クリニックからのお知らせ

病院からのお知らせ

学会の思い出(その1)
2007年12月03日 更新

もう3~4年前のことですが、ある中学生の男の子のことで私は悩んでいました。小児ぜんそくの患者は、運動が刺激になって咳やゼーゼーが出て、呼吸困難がみられる「運動誘発ぜんそく」という症状が、報告により差はありますが5割から9割にみられると言われています。その中学生は陸上部のいわゆるアスリートでしたが、一生懸命走るとヒーヒーいって呼吸困難がみられるというのです。

この症状は激しい練習の時にしか出ないので、受診された時に充分に問診をとった上で「運動誘発ぜんそく」の典型的パターンと考えました。ちょうど陸上のシーズンでもあり、彼も忙しかったので治療を始めることにしました。運動誘発ぜんそくの治療はいくつもあり、福岡でいろいろ対応を教えて頂いてきたので、いくつかの中から薬を選んで治療に当たりました。残念ながらあまり効果はなく、別の薬を試してはさほど効かないの繰り返しでした。「近々、大事な陸上の大会があるので何とかして欲しい」と頼まれ、強い薬も出して一時は効いた印象がありましたが、その後効果はハッキリしませんでした。

問診上は診断は正しいと考えていましたが、治療による結果が伴わず、徐々に「果たして運動誘発ぜんそくという診断で正しいのだろうか?」と思うようになりました。“運動負荷試験”といって院内でエルゴメーターという自転車をこがせても「発作」は起きませんでした。また“気道過敏性試験”といってぜんそく患者は、他の人と違って気管支が敏感だから発作が起きるのですが、気管支の敏感さを測る検査があるのです(これについては近々書きます)。ほとんどのぜんそく患者はこの検査で「陽性」(気管支が過敏だということ)になるのですが、何とこの中学生の結果は「陰性」。やれることは全てやってみましたが、なかなか病態のシッポさえも捕まえることはできませんでした。残念ながら、その頃は陸上の練習で「発作」が頻繁に繰り返されていたのです。

アレルギーの専門の先生の集まる集会で、これまでの経過や検査結果を説明し、何とか「答え」を出そうと努力しましたが「何だろうね」という反応でした。一部「運動を控えさせるべきではないか」というご意見も頂きましたが、彼は3度のメシよりも陸上が好きな少年でした。好きなことはとことんやらせてあげたいのが私の考え方です。口が裂けてもそんなことを言うつもりはありませんでした。しかし、その場で「実際に走らせて症状を確認すべきではないか?」という貴重なご意見を頂き、私はハッとさせられました(つづく)。