先日は、夏休みを活かして当院を受診されたような患者さんが目立ち、よかったと思っています。
やはり、園や学校を休まなくていい夏休みを利用して、離れた街からアレルギーのような慢性の病気の相談に来られると、こちらも張り合いが出ます(笑)。
負荷試験についてはまた別の機会にと思っていますが、食物アレルギーの相談に来られた患者さんは、敢えて“悪い例”として挙げさせて頂き、こういうケースは専門医に早めにかかった方がいいとお薦めしたいと思います。
患者さんは中越地方の某市から受診されました。エピソードは1年以上も前のことです。ある日、小学校低学年のお子さんが給食を食べ、昼休みに遊んでいたら、腹痛を訴えたそうです。
養護の先生がみて、病院受診が必要と判断され、お父さんが迎えに行き、ある開業医を受診しました。今回連れてこられたお母さんも、急いでその医院に向かい、合流したそうです。
当初は腹痛のみという話だったそうですが、全身真っ赤っかで、ぐったりしていたそうです。その時の具体的な処置は分かりませんが、もしかしたらエピペンと同じ成分のアドレナリンを使ったのかもしれません。
ここでやるべきことは、アナフィラキシーショックの原因を探ることと、また症状が出た時に備えてエピペンを処方することでしょう。
その市でというか、その地域で中心的な総合病院を受診することになるのですが、その日の給食で滅多に食べないものは、カシューナッツだけだったそうです。確かにカシューナッツは、アナフィラキシーショックを起こし得るアレルゲンです。
比較的最近、カシューナッツのアレルギー検査ができるようになったので、その病院でも検査をすることになったそうです。ところが、結果は陰性。
アレルギー検査は、陰性だから症状は出ない、陽性だから症状が出る、と明確に分かるものではありません。でも検査がクラス0なら「原因ではないのではないか?」と考えるのが自然で、これだけ重篤な症状が誘発された訳ですから、原因を特定する努力は必要です。
ところが、担当医はカシューナッツが原因だと決めつけるようなことを言い、これまで食べていたピーナッツもアーモンドも食べてはいけないと診断したそうです。
ここの“愛読者”なら、この判断がおかしいことはもうお分かりだと思います。更におかしいのは、最初に対処した開業医も含め、複数の医師がこのアナフィラキシーショックを起こしたお子さんに関わっているにもかかわらず、エピペンの話が一切ありませんでした。
これも敢えて言いますが、地域の中心的な病院の医師が言ったから、ベテランの医師が言ったから、というのは食物アレルギーに関しては正しくないことが往々にしてあることです。多くの患者さんが、そういう医師の言うことを信じ切っています。残念ながら、もはや“宗教”と化しています。
私が診たから何でも分かる訳ではありませんが、カシューナッツが原因というのは違う可能性があるし、これまで食べていたピーナッツやアーモンドは除去の必要があるのでしょうか?、またこの1年間は何もなかったから良かったものの、エピペンを持っていなかったのは、私にしてみれば信じられません。
お母さんがカシューナッツの検査が陰性だったことを不審に思い、聞いたことのある負荷試験の話を持ち出したそうです。そうしたら「死にたいのか」というようなことを言われたそうです。
当院は、負荷試験はこだわってそれなりの件数をこなしていますが、言い方は悪いですが、死なせたことはありません。こういうのは「ドクターハラスメント」と言うのではないかと思っています。
お母さんの話はごもっともで、この医師の言うことの方が理に叶っておらず、過剰な除去を押し付けたり、専門医に紹介しようとしなかったりと、問題があることが分かります。まあ、これが新潟県やこの地区の現状を表しているのだろうと思っています。
当院を受診された日に、近くの店でナッツ類を買ってきてもらいました。プリックテストという皮膚テストを行なうためです。カシューナッツを含め、6種類のナッツ類はすべて陰性でした。
血液検査と皮膚テストが陰性であれば、原因でない可能性が更に高まります。
もしそうであれば、アナフィラキシーショックをいつまた起こすか分からない状況で、原因でないものをせっせと除去していたことになります。他に原因があれば、たまたまこの1年起きなかったと言えるのではないでしょうか。
当日の給食でカシューナッツ以外は普段から食べており、原因の特定は難しいかもしれません。分からないなら、尚更エピペンを常備して、家庭や学校でのアナフィラキシーショックに対応すべく準備をしておくべきでしょう。
私はまだまだだと思っていますが、専門医と非専門医の知識や実力の差は、患者さんが思う以上のものがあります。
今回は、敢えて新潟県ではありがちな“悪い例”を提示してみました。これを読んで、似たような感じで診断されている方がいれば、是非とも夏休みを利用して多少離れていても専門医にかかって頂きたいと思っています。


