先日、N市から「食物負荷試験」を希望されて患者さんが受診されました。
負荷試験自体は無事に終わったのですが、食べられたことを踏まえ、今後の食生活について話をしていると、親御さんから突然に「インフルエンザワクチンを接種できますか?」と聞かれました。
結構重症な食物アレルギーの患者さんで、卵も除去中です。できるかどうかは、自信を持って「できます!」とは言えない状況でした。
昨シーズンも地元の医療機関でインフルエンザワクチンの接種を希望したところ、「卵を食べていればできるけれど、食べていないのでできない」と言われたそうです。果たして、これは本当でしょうか?。
また、その際、相模原病院が出しているプロバビリティカーブを示し、その患者さんの卵白の値を見て、卵は「食べられない」と結論づけたとのこと。
プロバビリティカーブとは、確かにアレルギー検査の値が高くなるにつれて、食べるとアレルギー症状が誘発される可能性が上がります。アレルギー検査の値と、負荷試験で判明した食べられる・食べられないの結果を踏まえて、作り上げた曲線のことです。
アレルギー検査の数値から負荷試験でどれくらいの確率で食べられるかどうかを予想できるのです。これは、あくまで予想であって、「食べられない」と結論づけるための道具ではありません。残念ながら、使い方を誤っていると思ってしまいました。
私がよく講演で使わせて頂いている愛知の伊藤先生のデータがありますが、プロバビリティカーブではないですが、卵白の値がクラス2から6で症状が誘発される確率を示したものです。そのグラフを指し示し、「クラス2なら約85%が卵料理を食べられ、クラス6であっても、数人ながら食べても何ともない人もいるんですよ」と言っています。
負荷試験をやっている医師とそうでない医師では、使い方が全く逆な訳です。つまり、私は「こんなに高い確率で食べられそうなので、負荷試験をしてみましょうよ」というのに、負荷試験をできない医師は、プロバビリティカーブを食べられないと結論づける材料にしてしまっているのです。
これも、「食べられない確率は○%くらいだけれど、完全除去し続けるのも大変でしょう。希望があれば負荷試験をできる医師に紹介しますよ」と言うのが正解だろうと思っています。
卵が含まれるとされるインフルエンザや麻疹のワクチンについても同様です。何とか接種できないものかと一生懸命考えるのが筋なのに、できないと決めつけています。この場合にもガイドラインがあり、ワクチンを10倍希釈して、皮内に0.02mlを注射して腫れ具合いで接種できそうかを判定する方法があります。
大して腫れなければ通常通り接種でき、そこそこ腫れれば0.1ml接種して何ともなければ残りを接種します。大きく腫れれば、接種は中止というとても分かりやすい方法があるのです。それをやっていない小児科医は多いようで、安易に「打てません」と決めつける傾向にあります。
いつから、医師は患者さんに対しベストを尽くさず、「保身」と言われても仕方ない対応をするようになったのだろうと思います。
ちなみに、この患者さんは負荷試験が終わり、N市に帰ろうかとしている時に、インフルエンザワクチンの相談を受けました。接種できないと思えなかったので、先ほどのガイドライン通りの方法を試してみました。
結果は、「そこそこ腫れた」ため、分割接種となりました。まず0.1mlを接種し、30分後に何もないことを確認し、残りを接種しました。しばらく様子をみましたが、何も起きませんでした。多分、昨年もこの方法を取れば、インフルエンザワクチンは接種できたのであろうと思っています。
急な接種の相談で帰りが遅くなってしまいましたが、無事に何事もなく受けられました。残念ながら、そう説明した医師は、これまでも、そしてこれからも似たケースで「接種できません」と言い続けるのでしょう。本当は接種できる可能性が高いにも関わらずです。
その医師のことを信頼して「予防接種をやって欲しい」と頼んだ訳ですから、医師は今回のガイドライン通りに対応するか、できそうな医師に紹介して初めて自分の責任を果たしたことになると思います。
以前学会で聞いた話ですが、某県では大学の小児科がアレルギーを中心に研究していることもあって、アレルギー症状が心配なケースは大学病院に紹介されることもあるそうです。私からすれば、開業医でも確認できる方法があり、「大学病院までいかなくても」という思いはありますが、紹介した医師は、患者さんのためを思って、接種の希望を叶えてあげたいと思って、誠実に対応したと思っています。
新潟にも、このように誠実に対応する医師が増えて欲しいと願っています。


