土曜は診療が終わったら、パンを食べながら、長岡市に向かいました。食物アレルギーの講演のためです。
過去3回に渡り、長岡市内の園で話をしてきたのですが、今回もというか園長先生が理解のある方で、周囲のいくつかの園にも声をかけて頂き、数十人が集まって下さいました。私は数人でも構わないと思っていますので、何十人も集まって頂けると、つい張り切ってしまいます。
当院があるのは上越市で、上越市、妙高市、柏崎市といずれも市を挙げて、エピペンや抗アレルギー薬を預かり、緊急時に対応するという方針を決めています。周囲にはアレルギー専門医はおらず、これらの3市のエピペンを処方されている児のほぼ全例が私が処方したものなので、私が講師として招かれ、各市の全園の職員が集まり、食物アレルギーについて学ぶという勉強会を実施しています。
これは敢えて言わなければなりませんが、長岡市は市がエピペンや抗アレルギー薬を預かる決定を下しています。ところが、こういう勉強会の実施はしていません。
その結果、どういうことが起こるかと言えば、現場が情報不足に陥ります。市がエピペンや抗アレルギー薬を預かることを決定していれば、市が責任を持って誤食によりアレルギー症状が誘発された際の対処法を園の職員に知ってもらう必要があります。だからこそ、先に挙げた3市では全体の勉強会を実施しています。
当院にかかっている食物アレルギーの患者さんで、特に重症な方の親御さんは、その辺の小児科医より知識を持っていると思います。園の職員にそういう人がいれば変わってきますが、そうでなければ、園に食物アレルギーのことをよく分かっている人は誰もいないということになります。
これまでで、当院で診ている患者さんが園に上がった時に園長先生ですら「こんな重症な食物アレルギーの子はみたことがない」とおっしゃいます。ベテランの先生がそうであれば、若い、なりたての保育士となれば「食物アレルギー??」って感じでしょう。皮膚に症状が出やすいのですが、蕁麻疹さえも見たことがないかもしれません。
アナフィラキシーやそれ程強い反応でないにしろ、一度でもそういう経験をした親御さんは、子どもを守るために必死になります。勉強もします。お子さんの3度の食事、おやつなどは細心の注意で与えることになります。
一方、園で食物アレルギーのことをよく分からない職員が、給食の対応をすると親御さんに比べ、油断を招きやすいと思っています。その子に食物アレルギーがあることを知っていれば、もちろん注意はするでしょうが、親御さんよりは理解が少ない分、モチベーションは相対的に低くなると思います。
実際、大規模な調査で1年間に誤食のあった園は29%であったという報告があります。つまり、3分の1の園がミスをしていることになります。
私の経験上、食物アレルギーの子を持つ母は、園にお子さんを預かってもらう身なので、誤食があってもあまり文句は言わないと思います。人間に完璧を求めることは難しいことを知っているからです。その代わり、何かあれば的確に対応して欲しいと願っていると思います。
確かに、県内には認識不足により、そういうシステムを取れていない地域があります。行政のひとつひとつが地域の患者さんのために努力し、食物アレルギーの子ども達を守るために、システムを作っていくべきです。日本人的な発想かもしれませんが、「あの市が始めたので、うちでも」となるかもしれません。私の願いは、新潟県の30市町村がそうしてくれることにあります。
中越地方の中核的な市である長岡市が、周囲に先立ち、エピペンや抗アレルギー薬の預かりを決定しました。それは大切なことなのですが、全体的な研修会を行なうような気配はありません。どうするつもりなのでしょうか?。
当院は、この地から70キロ離れていますが、通院している患者さんも少なくなく、当院に通う患者さんからのツテで「園で勉強会をやりませんか?」と働きかけて、勉強会をやってきました。週末のものがこれで4回目になります。合計の参加者は160人を越えました。
これから分かることは、市が薬の預かりを決定したことで、その方針に従わなければいけない訳です。各園に市から通達は行っているようです。しかし、食物アレルギーのことをよく分かっていない人に、いざと言うことに抗アレルギー薬の内服や、エピペンを打つと言ったところで、スムーズにできるでしょうか?。どう考えても、不可能でしょう。
市がそういう方針を決めたことは、患者さんにとって有り難いことでしょうが、その後のフォローを考えるべきでしょう。結局、それがないため、現場が不安になり、食物アレルギーを学ぶ機会を与えられないため、私のような者の話でも「是非とも聞きたい」と集まって下さるのでしょう。
食物アレルギーは乳幼児の間で5~10%いると言われています。これは長岡市とて例外ではありません。つまり、どの園にも患者さんはいることでしょう。患者さんは皆が重いとは限らず、軽い人の方が多いでしょうが、誤食が起きれば蕁麻疹などの症状は出るでしょう。いや、これまで食べていなかったから分からないだけで、誤食でいきなり強い反応が起こってしまうかもしれません。
現時点で、市内の園で私の話を聞いて下さった方は、それなりに食物アレルギーの知識を持ち、誤食時の対応は取れると思います。しかし、まだ聞いていない園では、キチンとした対応ができない可能性が高いと思います。
市の立場からすると、子どもの健康を守るという意味では、「不公平」な状況に陥っていると言えます。市の方針で対処薬を預かっても、速やかに対応できる園とそうでない園があることは問題があると言えるのではないでしょうか。
今回は行政に対し、辛口の言い方になってしまいましたが、市町村合併により、私の実家は長岡市になっています。長岡市には是非とも頑張って欲しいというエールの意味がこもっています。早急な対応をお願いしたいと思っています。


