「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」が出たにもかかわらず、食物アレルギーの対応が全く充実していないのが新潟県の現状でしょう。
それを何とかしたいと、密かに作戦を練っています。実際に、当院でエピペンを処方しているお子さんの親御さんは、給食の時間をとても心配に感じており、万が一の事態に備えて、エピペンを園で預かってもらうことを希望しています。
園側も、慣れないことをやるのは、何かあった時の責任問題にも発展しかねないことを危惧しており、「できれば、やりたくない」というのが本音だと思います。ただ、厚生労働省がエピペンを預かり、最悪の事態では打つことを推奨しており、それは“正論”なので、受け入れざるを得ないのだろうと思っています。
食物アレルギーの重い患者さんが、エピペンを処方され、園側も預かり、いざと言う時のために備えて準備をしておくのが、理想でしょう。その“理想”を実現するには、多くの課題があると思っています。
園にエピペンを預かってもらうように話をすると、「医療行為だから」と即座に断られることも多いのですが、「市全体の問題だから」と答えられる場合もあります。市側に聞いてみると、行政の理解不足も残念ながらあり、国の方針が守られていないことになります。
市側がエピペンを預かる方針を打ち立てても、現場である園がエピペンのことを十分理解していないと、なかなか実施できません。行政側と園への理解不足を同時に解消することが必要だと思っています。
本来、アナフィラキシーの既往があれば、かかりつけ医からエピペンを処方されるべきですが、当院に食物アレルギーで受診される患者さんの場合、重症であってもエピペンを処方されていないし、エピペンの存在すら知らされていません。紹介状を持って来られる患者さんもほぼ皆無です。
地域における食物アレルギーのより良い体制作りを阻んでいるのは、残念ながら同業者の理解不足も要因のひとつでしょう。開院して4年、せめて「食物負荷試験」を広めたいと思っても、紹介されてくる患者さんは、ほぼありません。
先日、こんなことがありました。ある患者さんが生卵や甲殻類を除去しており、来年小学校に上がることもあって、今後どう解除していくかをかかりつけ医に相談したそうです。
実は、お父さんがエビとカニが食べられないそうで、甲殻類はとても不安で食べさせられなかったのです。そのかかりつけの先生は、当院が負荷試験をやっているのかご存知で、以前ヤマイモアレルギー疑いの患者さんを紹介してくれたこともあります。
ところが、どういう訳か、総合病院に紹介状を書いたのだそうです。病院の先生も、困ってしまい、「負荷試験をやっているのは、この辺では田中先生のところくらいだから」と当院に相談に行くことを促してくれたそうです。
これってどう思われますか?。明らかな二度手間であり、よほど当院に紹介したくなかったのでしょうか?。親御さんは、お子さんの長引く咳でその小児科に通院しており、あまりに改善しないので「なぜ良くならないのですか?」と言ったのが気に入らなかったからではないかとおっしゃっていました。
いずれにしても、相当「ガッカリ」な対応です。というか、患者さんへはものすごく迷惑をかけてしまっています。自分の専門外で対応できなければ、対応できる専門医に紹介するのが筋なはずですし、患者さんからすれば、どの医師が何を専門にしているかはよく分からないことが多いので、それを知っている医師が、各医師の得意分野を重んじて、連携するのも地域の医師の役目だと思います。
私は、専門分野以外で「自分には荷が重いな」、「専門家の方がもっと良くできるだろう」と思えば、専門医に紹介状を書いています。根底には、自分を頼ってくれる患者さんにベストのことをやりたいと思っているからです。自分にそれができないなら、できる医師に委ねる。当たり前のことをやっているだけです。私が妙にプライドの高い医師なら、そうはしないのかもしれませんが、そんなプライドは患者さんには全く関係のない話です。
別の医院さんでも、一生懸命やっているのは伝わらない訳ではないのですが、その先生の知識では対応しきれていないこともよく見かけます。結局、症状が良くならないと言って当院を受診されることはよくあり、この地域の連携のなさを嘆かわしく思っています。アレルギー専門医は当院しかなく、少しはこだわって勉強しているつもりですので、私の知識や技術が活かされるべき患者さんは他にも大勢いるはずだと思っています。
先の食物アレルギーの患者さんは当院で負荷試験を行なうことにしました。父が甲殻類のアレルギーがあるから、子どもにも同じ甲殻類アレルギーが遺伝しているとは限らないからです。来年、小学校に上がるので、これを機に除去する必要があるのか確認したいという親御さんの気持ちを尊重して、近々負荷試験をやろうと思います。
ちなみに、アレルギー検査と皮膚テストで「アレルギーを起こさないだろう」という予想はできており、本人がこれまでずっと除去していたので、負荷試験時に口にしてくれるかどうかが最大の懸案事項ですが、何とか解除したいと思っています。
親御さんのご希望もあり、今後は食物アレルギーも咳に関しても当院で診ていくことになりました。親御さんにしてみれば、お子さんのために一生懸命、適切な治療をしてくれる医師に治療を委ねようと思うのは当然のことだと思います。今回の対応は、親御さんにとっても、ガッカリするものだったでしょう。
当院の場合、入院加療を要する患者さんは病院に紹介することになります。開業の小児科の先生に紹介する必要があることはあまりありません。ただ、感染症で仕事を休めないと言われると、希望されるところに連絡票を書いています。私自身は連携をしようと思っているのですが、逆がそうでないのは悲しい限りです。
医療機関がお互いの持ち味を尊重しつつ、もう少し連携のある医療をできる体制を望まずにはいられません。そうしなければ、食物アレルギーなど必要な体制を整備することも難しいだろうと思っています。


