土曜日は医院で仕事を始めたのが朝9時、仕事を終わったのが夜9時でした。何だか、勤務医時代よりも忙しい日々を送っている気がします(汗)。
土曜なので、外来は昼過ぎには終わるはずです。片道3時間かけて来てくださった来客があり、1時半に終わった診療に引き続き、2時間話をして、その後、上越市の休日夜間診療所で診療をしました。
市内の小学校でインフルエンザBが流行しており、季節外れというか学級閉鎖、学年閉鎖が行われていることもあり、インフルエンザを疑うような発熱の患者さんが多く、それより多かったのが、何度も吐き、脱水の明らかな胃腸炎のお子さんでした。
休日診療所は、インフルエンザなどの流行期は多忙ですが、今回はそれ程でもないだろうと予想していましたが、休む間もないくらい診療に明け暮れていました。お陰で、朝からのほぼ連続12時間働き詰めでした(涙)。
診療自体は、先程も書いたように1時半には終わっていました。実は先日、某市の患者さんからメールを頂きました。赤ちゃんの皮疹で悩んでおられていて、地元の小児科で細菌感染症と診断されるも、一向に改善しないため、紆余曲折を経て食物アレルギーではないかと思い悩み、結局ネットで当院の存在を知るに至り、相談に受診されたのです。
ご自宅から距離にして180キロ、車の運転に3時間かかったそうです。そんな遠い距離を受診して頂くのは、躊躇もありました。しかし、落ち着きつつある皮疹がまた悪化したり、次のお子さんが産まれた時に、また同じことを繰り返してしまわないようにと思い、受診を勧めました。
数回のメールのやり取りで、原因はだいたい分かりました。多くの小児科医、皮膚科医が誤解している分野であろうと判断できましたので、申し訳ないけれど一度来て頂ければ、親御さんの悩みの多くは解消できるだろうと思いました。
地元の小児科では、「MRSA」という耐性菌がついた皮膚感染症だと診断されていました。抗生剤の内服や軟膏の塗布をしてもなかなか改善しなかったそうです。確かにそれを“耐性菌”のせいと考えることもできるでしょう。ただし、診断が間違っているのかどうかも疑うべきではなかったかと思います。
結局、患者さんの強い希望で大学病院へ紹介状を書いてもらい、受診されるのですが、今度は「MRSAではない」と診断されます。誰を信じていいか分からなくなってしまったのだそうです。親御さんは1人でもがき、食物アレルギーの関与を疑います。地元の小児科で検査してもらうと、いくつかの項目が微妙に反応しており、そこで質問しても理解できなかったそうです。そこで当院に救いを求められたという状況です。
メールを頂いた時に、もちろん診察もしていない状況でしたが、皮膚の状況が眼に浮かんできました。当院はそういう患者さんが多いからです。この患者さんのように、ほとんどが“乳児湿疹”などと診断されており、過小診断・過小治療で良くなっていないのです。
当院のホームページを読んでいる方なら、もうお分かりでしょうが、アトピー性皮膚炎です。乳児期は細菌感染を合併し、薬を塗っても思う程、改善が良くないこともあります。ともすると乳幼児のアトピー性皮膚炎の7割に食物アレルギーを合併しているという報告もあり、だからアレルギー検査が陽性だったのでしょう。
しかも、アレルギー検査の数値だけで食べられる・食べられないの判断はできないので、「食物負荷試験」をやっていない医師にいくら聞いても「家で少しずつ食べさせてみなさい」と言われるのは、県内では日常茶飯事です。
低年齢であれば、食物アレルギーが皮膚炎に影響を及ぼしていることも多いでしょうが、成長とともにそういった影響は低下してくると思います。では、何故アトピーが落ち着かないかと言えば、“過小治療”のせいでしょう。
最近は特にアトピー性皮膚炎の乳幼児が多く、当院では“よくあること”なのですが、専門でない先生にとっては“難問”だったのでしょう。
湿疹が良くならずに、藁をもつかむ思いで片道3時間かけて受診される親御さんの気持ちをよく考えてみて頂きたいのです。片道180キロとおっしゃっていましたが、こんな“長旅”は初めてだともおっしゃっていました。普通、女性がこんな遠路を車で運転してくることは、まずありません。何故そうしなければならなかったのか、親御さんの切ない思いを察してみる必要があると思うのです。
敢えて言わせて頂きますが、前の先生には失礼な言い方になってしまいますが、もっと早くアトピーに気付いてあげないと、患者さんがかわいそうです。分からなければ、患者さんから強く希望されなくても専門医に紹介状を書くべきでしょう。この先生に限らず、治療していて良くならなければ、それ以上の対応が難しいのは医師自身が一番分かっているはずです。
咳や湿疹が良くならないという理由で、当院を受診される患者さんが後を絶ちません。多くの医師が「咳が出るのは風邪だ」とか「湿疹はどうせ、いずれ治る」なんて甘くみているように感じています。結局、言われた通りにしても良くならず、「あんな医院、二度と行かない」なんてことになっているように思います。
患者さんの期待に応えるのが、医師の役目です。「この患者さんは自分が何とかしたい」と治療に責任を持つことは大切なことですが、患者さんからすれば、その先生にしか治して欲しいのではなく、しっかりと説明して、正しく治療してくれるのであれば、どの医師でも構わないと考えている親御さんが圧倒的に多いと思っています。もし自信がないまま引っぱり、良くなる機会を逸しさせてしまえば、私なら「申し訳ないことをした」と反省するし、期待に応えていないのだから、迷惑をかけていると思うと思います。
2時間程、アトピー性皮膚炎の診断基準や治療の仕方、ステロイドの使い方や副作用のこと、食物アレルギーも、必ずしもアレルギー検査で陽性のものが皮疹の原因になっている訳ではないこと、「食物負荷試験」という方法で食べられるかどうかを確認する方法があることなど、いろいろと話をしました。自分でいうのも何ですが、こんな小児科医はとても少ないと思います。これくらいで、ようやく片道3時間の母の努力に応えられたかなと思っています。3時間かけて来院して5分や10分で済ますのは人道的ではないでしょう。
アレルギーで困っている親御さんに今回のような思いをさせたくないし、それを減らすのが私に科せられた役目でもあろうと思っています。


