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「花粉症っぽい」
2011年04月15日 更新

花粉症というとスギ花粉症というくらい、スギの花粉が代表格と言っていいでしょう。

「花粉症」とは何らかの花粉が鼻に入り、アレルギー症状を起こすもので、スギだけが原因という訳ではありません。ヒノキや春のイネ科のハルガヤ、カモガヤ、秋の雑草のブタクサ、ヨモギもれっきとした原因になります。

結構、混同されていますが、花粉症は「アレルギー性鼻炎」です。アレルギーによって鼻に炎症が起こり、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが起こる病気です。アレルギー性鼻炎の原因は大きく分けて2種類あります。

それは1年中症状のみられるものと、ある季節にみられるものの2つになります。前者を通年性、後者を季節性と言っています。通年性の多くはダニ、ハウスダストが原因になっています。後者は花粉症が主であり、スギ花粉症なら花粉の飛散は3~4月が中心ですから、患者さんはこの季節を迎えると憂鬱になり、この季節が過ぎると症状が出なくなります。

新潟では、今年は雪が多く、3月後半になっても雪が降ったせいで、花粉の飛散が遅れた印象があります。遅れてきた春とともに、外出すると目が痒い、鼻が詰まるといった訴えで医院を受診される患者さんが増えているようです。

先日、ある耳鼻科で「花粉症っぽい」と診断され、薬をもらっているという患者さんが当院を受診されました。

「○○っぽい」って何ですか?と思います。いつも言っていますが、医師は医学的に根拠のあることをやらなければなりません。当院には「ぜんそくっぽい」、「アトピーっぽい」と“診断”されている患者さんが毎日のように受診されていますが、正しい診断のもと、正しい治療をすべきです。そして患者さんには、正しい医療を受ける権利があります。

私がいつもベストの医療をできているとは限りませんが、正しい、根拠のある医療をやろうと努力はしているつもりです。「診断基準を満たすので、ぜんそくと診断されます」とか、「まだアトピーとは診断できません」と言っています。ですから、「○○っぽい」と“診断”されている患者さんをみると、いつも気の毒になります。

分からなければ専門医に紹介するのが、当たり前のことですが、特に開業医は経営方針もあるでしょうから、まず紹介というのは期待できないというのが、上越で開業し、3年半経った私の結論です。逆に残念ながら、患者さんの方が医師を信用に足るかどうか見極める必要はありそうです。

さきの「花粉症っぽい」と“診断”されていたお子さんは、耳鼻科で鼻をのぞいて、その所見から花粉症を考えられたのでしょう。アレルギーで鼻炎を起こしている場合、鼻の粘膜に特有の所見がみられるはずですので、耳鼻科ならではの診察でそう思われたのだと思います。しかし、プロならば「花粉症っぽい」ではなく、「スギが原因の花粉症です」とキチンと診断する必要があります。

スギ花粉症ならば、一般的にはゴールデンウィーク明けくらいに花粉が飛ばなくなり、それに伴う症状はみられなくなります。もし鼻の所見が、ダニやハウスダストが原因であれば、花粉症ではないことになりますし、ダニはゴールデンウィークが過ぎても消えませんので、症状は持続することになります。

花粉症の診断のポイントは2つあると言われています。ひとつは「アレルギーであることの証明」、もうひとつは「アレルギーの原因の特定」です。

アレルギーであることの証明は、耳鼻科医なら鼻の所見を確認したり、他科の場合は鼻水を調べ、アレルギー反応が起きていると見られやすい「好酸球」という細胞が多くみられれば特定できると言われています。

アレルギーの原因をアレルゲンと言いますが、アレルゲンを特定する努力も必要です。これには3種類の検査があります。食物アレルギーでもよく用いられる、血液検査です。スギ、ハルガヤ、ブタクサなどを個別に調べることができます。

あとは、皮膚テスト。エキスを腕に垂らし、その部分を小針で傷つけ、同部が腫れればアレルゲンと特定できる可能性が高くなります。もうひとつは、私のよく言う「食物負荷試験」的な検査です。鼻の中にスギならスギのエキスを染み込ませた紙を入れ、鼻炎症状が誘発されるかどうかを確認する方法です。少なくともこの方法は当院ではやっていませんが、ここまでやっている病院は少ないと思います。

食物アレルギーの診断においては、アレルギー検査は当てにならないことが多いと繰り返していますが、花粉症については信頼していいと考えています。先の「花粉症っぽい」と診断された患者さんは、それ以上の検索もなく、薬が処方されたそうですが、血液検査をすべきではなかったかなと思います。

小児科は、熱が続いた時など採血し慣れているので、アレルギー検査はあまり躊躇しないように思いますが、他科だと小さいと採血に自信がないのか、検査されないことが多いように思います。

私は無駄な点滴、無駄な採血をすべきでないと繰り返しています。日頃診療していると、目に余るようなことがされていることも見かけます。ただ、この花粉症に関しては、お薦めの治療は花粉の飛散前から抗アレルギー薬を内服し、なるべく症状が出ないように予防することです。スギが原因と特定されなければ、来シーズン以降の準備のしようがないのです。

1歳の赤ちゃんを連れてきて、鼻が出ると「花粉症ではないか?」と心配する親御さんもいます。一般の人は、スギ花粉症と騒がれている時期に鼻が出ると心配するのは当然です。ただ、こんな赤ちゃんは確率的に花粉症でないことが多く、採血をするのはかわいそうです。まず本当に花粉症を疑っていいのか、見極めるべきです。

本物の花粉症の患者さんは、晴れの日の外に出た時に目が痒くなり、くしゃみ、鼻水が出ます。遊んで帰ってきたら、目が真っ赤ということもあるでしょう。このように即時型反応が出やすいので、症状の見られるタイミングをよく観察することが重要と考えています。ただし、夜になってジワジワと花粉症の遅れてくる反応として、鼻づまりがひどくなることもありますので注意が必要です。

最近は、花粉症の低年齢化が進んでいますが、これらのことに注意してより疑わしいお子さんを検査させて頂いた結果、当院の今シーズンの最低年齢は2歳5ヶ月です。こんな小さいうちから発症してしまうのです。目薬など嫌がる年齢ですが、必要な治療ですし、「だいたいもう3週間くらいの辛抱だから」とアドバイスを送ることもできます。的確に診断したからこそ、適切な指導ができるのだと思っています。

余計なお世話かもしれませんが、巷ではどんな感じで「花粉症」と診断され、治療されているのか心配になってしまいます。

最後に、花粉症で眼症状が強い場合、フルメトロンなどのステロイドの入った点眼薬が処方されることがあります。これにはルールがあるのですが、原則的に眼科医しか処方できないことになっています。

ステロイド点眼薬の副作用として、眼圧上昇が挙げられます。子どもではあまり眼圧の高い子はいないでしょうが、連用して眼圧が上がってしまっては困ります。副作用に注意しながら、治療していく必要があります。したがって眼圧を測ることのできる医師しか、処方できないのです。

ルールを守った上で、根拠のある診断をされ、適切な治療を受ける患者さんが増えるよう念じてやみません。