先日、4ヶ月の赤ちゃんがBCGの予防接種に当院を初めて受診されました。
一見してアトピー性皮膚炎が疑われる状態でした。当院は上越でも知名度は高くないので、赤ちゃんに湿疹があると他の小児科や皮膚科を受診されていることが多いのです。往々にして、“乳児湿疹”と診断され良くなっていないケースが多いのです。実は湿疹の相談に来たかったのだけれど、乳児検診や予防接種のついで(?)に相談を受けることもありました。今回もそうだと思いました。
あまりにも放っとけないくらいの湿疹だったため、問診と診察の結果、予想通りアトピー性皮膚炎と診断できる状況でした。たいていのケースでは、「薄々気付いていたんですが、やっぱりアトピーですか。治療もお願いします。」となるのですが、あまり反応がなかったので「触れないで欲しかったのかな?」と思っていました。
予防接種は可能と判断しましたので、接種して診察室を出て行かれました。治療は、もちろん親御さんの希望がなければ開始することはできません。「湿疹の相談に来たかった訳じゃなかったんだ」と思っていました。
実は、あとでスタッフに聞いてみてもらったのですが、上のお兄ちゃんも同じような湿疹があり、治療しても良くならなかったようで、そのまま様子をみたら徐々に治っていったので、この赤ちゃんも様子を見るつもりだったそうなのです。
先週末、アレルギーの学会に参加してきたことをお話ししましたが、ファーストコンタクトが大切であるという話が出ていました。日本語に訳すと「最初の接触」ということになるでしょうか。
どういうことかと言いますと、ぜんそく症状を繰り返すお子さんを最初に診た医師が“風邪”とか“気管支炎”と診断すると、親御さんはそう思い込んでしまうのです。そりゃ医学に関しては素人で、分からないからプロに相談に来られるのです。そのプロがおかしな説明や指導をすると、そういうものだと考えてしまうのです。驚いたことに、ぜんそくを急性疾患と考えている方もいるのだそうです。上越でもそんな対応をしている小児科医もおりますが…。
上のお子さんも治療しても良くならないため、今回の赤ちゃんも様子を見るつもりだったそうですが、ある意味とても不幸なことだと思います。お兄ちゃんの時からアレルギーの専門医が対応していたら、こんな考えを持つには至らなかったのだと思います。つまり、ファーストコンタクトが上手くいかなかったがために、医学に期待しなくなってしまったのでしょう。最初に対応した医師が「もう少しキチンと対応してくれていたら」と思うし、医師に責任はあると思うのですが、本人はそうなったことに気付いていないことでしょう。アレルギーの診療にはいろんな問題点が存在しています。
先日の学会でも、他県でアレルギーの専門医として頑張っていらっしゃる小児科の先生とも話をしてきたのですが、やはり当院と同じように他院で治療して良くならないと、その先生のもとを受診されるケースが多いのだそうです。皆やることは同じで、ガイドラインを示し「その治療はガイドラインに載っていないので、ガイドラインの薦める標準治療をしましょう」と説明しているのだそうです。
上越の場合は、そもそもアトピーをアトピーと診断されていないことが極めて多いので、ガイドラインに沿うところまで行っていないことが多いのです。いつも食物アレルギーの子ども達の食事制限を最小限にするために「食物負荷試験」の存在を広めたいと言っていますが、アトピー性皮膚炎やぜんそくの正しい診断も広める必要を痛感しています。
先日、湿疹で受診された赤ちゃんは自宅近くの「内科•小児科」で診てもらってもよくならないため、有名な「小児科•アレルギー科」に行き、それでも良くならないため当院を受診されました。ファーストコンタクトはおろか、サードコンタクトになってしまいます。当院で初めてアトピー性皮膚炎と診断され、標準治療が開始された格好です。当院に来られるケースはたいていこんな感じです。
アトピーで困っている患者さん達がどんな小児科、どんな皮膚科でもプロ並みの治療を受けられるように「ガイドライン」が作成され、標準治療が提唱されているにもかかわらず、こんな有り様です。学会に参加して発表を聞いていると、全員が当たり前のように標準治療を行っています。参加する小児科医自体がアレルギー専門医であり、ガイドラインを熟知しています。学会が終わり、地元に帰ってくると、アレルギーの医療も“格差社会”だなと思い知らされます。
テレビやラジオに出て宣伝しまくるようなおかしな真似はしたくありませんが、ある程度は知名度を上げる努力をしなければ、ファーストコンタクトもできないし、患者さんも救えない状態です。
ちなみについ先日、冒頭の赤ちゃんの兄が咳が長引き、近医で「ぜんそくっぽい」と診断されていましたが、良くならないと受診されました。問診と診察で明らかにぜんそくと診断されました。当院で治療をさせて頂くことになりましたが、お母さんは赤ちゃんのアトピーも気になっていたのでしょう。もう一度説明し、当院で標準治療をさせて頂くことになりました。とりあえずホッとしました。親御さんの期待に応えられるよう、頑張りたいと思っています。


