先日、ぜんそくで診ている患者さんが診察室に入るなり、「すみません。大きな病院に行っちゃって。」と言われました。
最初は何のことかよく分からなかったのですが、咳が続くため、心配になって総合病院に相談に行ったのだそうです。私がこの場でよく書いているセカンドオピニオンってやつです。私のやっていることに不安を感じられたのなら、私の説明不足もあったのかもしれんません。
最近の寒暖の差が原因と考えていますが、喘息のお子さん達がかなり調子を崩しています。治療していても改善が思わしくないお子さんも少なくありません。当院はぜんそくのお子さんを多く診ていますから、一度に調子の悪いお子さんが大勢受診されると、特に熱などの感染兆候がなければ、まず気候を疑います。その辺はキチンと説明していました。
私としてはこの患者さんに関しても手を抜くようなことはしていませんでしたから、「セカンドオピニオンで他の病院を受診したい」とおっしゃるのであれば、紹介状を書くのはやぶさかではありません。
ぜんそくや呼吸器疾患は、問診が重要です。その次に聴診や喉を診て鼻が悪さしていないかも確認します。それだけでかなりの正確性を持って治療はできるものだと思っています。
病院の先生には申し訳ないのですが、いろいろ検査をやって頂いたようです。私のやっていることに見落としはないとは言いませんが、方針には自信がありました。聴診、レントゲン、採血、耳鼻科への診察依頼などお手を煩わせてしまいました。結果はやはりというが、良かったというか特に異常は見出せなかったそうです。結局、ぜんそくの調子が悪いのだろうという結論でしたので、また引き続き当院で治療してくださいとも書いてありました。
病院は、ある程度キチンと検査をするという姿勢が求められると思います。私の方針は、検査や処置はなるべくしないと考えています。開業医であまり必要のないと思われる検査や処置をしているところもありますが、特に小児科医は必要最低限にするのが“プロ”だと思っています。私の方針を信用して通院してくださっている患者さんも少なくないと思いますが、患者さんによっては検査しないのもいけないのかなと考えさせられました。
ぜんそくでは専門的に考えながら医療をしているつもりですから、病院に行ったと言われて少しビックリしたというのが正直なところです。他の医療機関で治療しても良くならずに当院を受診され、そのまま当院に通院してくださる患者さんはこれまで大勢いました。説明も人一倍行っているつもりですから、その逆はあまりないと思っていましたが、やや反省させられるエピソードでした。
別の病院から紹介状を持って受診された患者さんがいらっしゃいました。ある医院にぜんそくで1年以上通院していたそうです。4月に発熱とともに、ぜんそくの症状が極めて悪化し、点滴に通ったのだけれど、最終的に入院施設のある病院に紹介になったそうです。
検査の結果、RSウィルスが出たそうです。この場でよく触れていますが、ぜんそくのお子さんがRSウィルスにかかるとぜんそくが重症化します。RSウィルスも痰を沢山つくる病気ですから、ぜんそくの痰と言わば2倍の痰のために呼吸困難が強まり、入院する可能性が高くなります。
ちなみに、当院でもRSウィルスで悪化し、入院を余儀なくされたお子さんも少なくないですし、入院しないまでも熱とともに明らかにぜんそく症状の悪化したお子さんにはRSウィルスを全例調べていました。患者さんには「RSウィルスにかかってしまったので、ここは頑張りどころだよ」と説明し、何とかしのいだお子さんも大勢いました。
先の患者さんは、RSウィルスがぜんそくを悪化させる主要な原因感染症だと知り、かかっていた医院に電話し「何で調べてくれなかったのですか?」と伝えたそうです。その気持ちはよく分かりますが、普通はなかなか言えないかなと思います。親御さんにしてみたら、言葉は適切でないかもしれませんが「裏切られた」という気持ちは拭えなかったのでしょう。RSウィルスの検査が保険診療で認められていないことも影響しているのかもしれませんし、開業医も損はしたくないため、RSウィルスで症状が重くなっているにもかかわらず、原因が特定されていないケースは思います。
私がこの患者さんを診ていれば、RSウィルスは調べただろうと思います。私も損はしたくないですが、もし“RSウィルスを想定していて”検査をしないのであれば、医療に全力を傾けていない証拠だと思います。敢えて調べることで、逆に信用を得ている部分はあると思っています。RSウィルスにかかることで、ぜんそくの治療を強化する必要も出て、当院で治療をご希望されるに至りました。
「なぜ調べなかったのか」と指摘されれば、反省すべき点もあるでしょうから、今後の医療に役立つと思います。これもよく言っているのですが、特に開業医は自分を気に入ってくれる患者さんしか受診しませんから、間違ったことをやっていても気付きませんし、それを誰も指摘してくれません。正しいことをやろうという信念を持ち続け、ある程度は勉強していないと、おかしな治療方針になってしまいます。時には批判的な意見もありがたいことだと思うのです。
当院を受診される患者さんも、意見は言って頂いて構いません。なかなか批判的な意見には耳を傾けたくないものですが、独りよがりの医療になるよりはマシです。急に受診しなくなり、私もそれに気付かなければ、私も成長することができません。また慢性疾患の場合、あまり良くなっていないのに医師に遠慮して、つい「調子いいです」と言ってしまうケースもあるでしょう。私の場合は「良くならない」とハッキリ言って頂いた方が、なぜ良くならないのかを一緒に考えることができると考えています。
医療に対して受け身の患者さんは多いと思います。ぜんそくを“風邪”、アトピーを“乳児湿疹”と診断されているケースはあまりに多く、RSウィルスなのにマイコプラズマと誤って診断され、マイコプラズマの点滴に通わされている患者さんもいます。全ての医師のやることがいつも正しいとは限らないと言えるだろうと思います。患者さんのご意見が医師を育てると思っています。時には批判的な意見も必要なのだろうと考えています。


