相変わらず、アレルギーで困り果てた患者さんが当院を受診して下さっています。
先日、蕁麻疹が長引いていて、いろんな小児科、皮膚科を渡り歩きましたが、なかなか良くならなかったため、隣の街から当院を受診された患者さんがいました。話を伺うと反対方向の別の市まで受診されていました。当院は3つ目の市に当たります。
2週間分の薬が処方されており、飲みきって終了と指示している医師もいたようですが、それでもまた悪化していたそうです。蕁麻疹は、通常は1日で消失してしまうことが多いと思います。抗アレルギー薬を飲めば、あっという間に消えてしまいます。しかし、中には慢性化してしまい、抗アレルギー薬が有効なものの、薬を止めるとぶり返してくるケースもあります。長期間に渡り長引く蕁麻疹の方に、2週間の薬を出しても有効な対応とは言えないのです。2週間以上蕁麻疹の続く患者さんは多くはないですが、当院では何人も診ています。
「このやり方でだいたい対応できていた」と思っても、その患者さんにとって有効な治療を考えて症状を改善させないといけないのです。こういう患者さんは藁をもつかむ思いで病院を受診しています。そうしなければ、なかなか信頼を得ることができないのだろうと思っています。
ちなみに、弟さんも話を聞いただけでアトピー性皮膚炎と診断できるような状況にもかかわらず、診断が告げられないまま過小治療が繰り返されていました。いつもこの場で触れているように、アレルギーは適切な医療が受けられずに症状が軽快していない患者さんは大勢います。お母さんの「納得いく医療が受けられず、本当に何件も医療機関を回った」としみじみ言った言葉が胸に響いています。
あいにく適切に診断されず、困っているのはアレルギーだけではありません。感染症もそうですし、その最たるものがよく話題に取り上げるRSウィルスでしょう。
先日、当院にもかかったことにあるお子さんが熱が続き、夜も眠れない程の激しい咳とゼーゼーという症状がみられたそうです。とても不安に思っていましたが、ご両親とも働いており、その日は当院でなく、他の小児科を受診されたそうです。
夕方になって当院を受診され、RSウィルスの典型的な症状でしたので、調べてみるとRSウィルスが陽性でした。RSウィルスは特効薬がないため、熱も続き、喘鳴も悪化します。中には低酸素に陥り入院するお子さんも少なくありません。しかし、RSウィルスが原因だと予め知っていると、何とか冷静に対処できると思っています。
翌日、やはり両親とも仕事があり、前日と同様にお子さんを預けたそうです。その際に前日に当院であっさり分かったRSウィルスを調べてもらえなかったことがひっかかっていたようで、看護スタッフに「ここではRSウィルスは調べないんですか?」と聞いてみたそうです。そうしたら奥から事務長が出てきて、「患者を取った取られたとか言われると困るから調べない」と説明したそうです。
当院にもかかっている患者さんなので、そこでRSウィルスを調べて対応すると当院から患者さんを取ったということになるから、ということらしいのです。私は患者さんにとってベストな治療をしてくれる医療機関で対応してもらうべきだと考えています。“取った、取られた”という表現自体を私は好きではありませんが、もし、私がRSウィルスを見逃しているなら、“取って”頂いて構いません。それは私の力不足と思いますし、逆に私よりもより良い治療なり対応をして頂けるのなら、紹介状を書いてこちらからお願いしたいと思っています。
まだ途上ではありますが、当院はアレルギーはそれなりにこだわって勉強しているつもりです。私の専門であるぜんそく、アトピー性皮膚炎であっても当院で診ている患者さんの中には症状を安定させるのがちょっと難しい患者さんがいるのも確かです。先ほど言ったことはアレルギーに関しても同様であり、患者さんから他の医療機関に移りたいと希望があれば紹介状を書きますし、もっと良い治療をして頂けるのであれば差し出したいくらいです。患者さんの幸せを考えたら当然ですし、現状の力不足を反省し、それが「もっと勉強しなくては」というエネルギーになると考えています。
そもそも、先のお母さんの意図は、そこのかかりつけの患者さんにもRSウィルスを調べてないようですから、RSウィルスを調べない理由を聞いてみたのです。先日、政治を扱うバラエティ番組の中であるタレントが最近はAかBかが答えの質問にCと答える政治家が多いと言っていました。今回の答えもそれに似ているように思います。
当院には事務長はいませんが、RSウィルスを調べるかどうかは、医師の判断になります。先の質問は、医院の方針なのでその院長が答えるべきものだと考えています。RSウィルスを調べると医院の持ち出しになるので、経営を考えれば調べない方が有利でしょう。ただ、仮に当院に事務長がいたとして、検査をなるべくしない方がいいとアドバイスされても、私は調べると思います。
RSウィルスを調べることで、疑っているのに調べないという後ろめたさもなく、診療に関して全力を出したという気になりますし、その信念は患者さんにも伝わるものと思います。患者さんにRSウィルスと分かったからこその注意点を伝えておくことができます。先の患者さんはかなり熱も続き、呼吸困難も少し出て状態は決して良くありませんでしたが、何とか入院せずに乗り切ることができました。親御さんからも「キチンと診断してもらって良かった」とおっしゃって下さいました。
医療は、あまり“取った取られた”という次元で考えるものではないと思っています。開業医は個人経営のため、一人でも多くの患者さんを診る方が有利ではありますが、最も重要なことは患者さんの診断や治療に責任を持つことだと思います。自分の治療がベストか、少なくともベターで間違いないかを確認し続けることは医師の良識にかけて必要なことだと思います。各医師は不得意分野もあるでしょうし、それを連携し補い合うことで、患者さんにより良い医療を提供できるのだと信じています。


