25日の外来はいつもよりも混雑していました。何でだろう?と思ったら、子ども達が春休みに入ったようです。道理で小学生の新患が多かったのだと納得しました。当院は例年、春休みは患者さんが増えるのです。
今の医学はエビデンスという医学的根拠のある医療をやるべきとされています。
私は田舎の開業医。日本の第一人者の先生の元で学ばせて頂きましたが、私自身はまだ学ぶ身です。こんなことを言うのは10年早いのかもしれませんが、医師はなぜその治療法を選んだのか?という問いに答えられなければならないと思います。
それを簡単に実践できるようにしたのが、私のよく言う「ガイドライン」です。日本の第一人者の先生方が、どの患者さんも専門家並みで同一レベルの医療を受けられるようにと「ガイドライン」を作成しました。それに沿った診断や治療をすれば、患者さんは近くの医療機関で専門病院と同じ方向性の医療を受けられるはずです。
先日、6ヶ月のお子さんがゼーゼー言って、咳込みも強いと当院を受診されました。近くの小児科医ではない先生に診てもらい、ぜんそくだと言われたそうです。ぜんそくの治療もなされていましたが、心配になって当院を受診されました。
乳児のぜんそくは、専門医でも診断が難しいと言われています。それは赤ちゃんの気管支が細くて、痰が溜まりやすく、その痰が震えてゼーゼーしやすいのです。病気の診断は医師の裁量に任されています。ぜんそくと言われれば、ぜんそくになってしまいます。しかし、各医師の経験や知識は同一ではないはず。医師によって診断が変わってくる可能性が高いのです。それでは医療もへったくれもありません。
先のガイドラインでは、「症状を繰り返しているか」を重視しています。家族のアレルギー歴も参考になります。アレルギーの体質は遺伝しやすいからです。ぜんそくの治療としての吸入をして改善があるかどうかも確認する必要があります。ぜんそくならぜんそくの治療が有効なはずですから。
その赤ちゃんは、ゼーゼー言うのが初めてでした。ご家族もご兄弟もアレルギーはありませんでした。吸入の反応も見ていませんでした。つまり、ぜんそくと診断できないことになります。その先生が小児ぜんそくの「ガイドライン」をどれだけ知っているのかはよく分かりません。
ただ、今後ゼーゼーを繰り返し、本当にぜんそくの診断基準を満たしてしまうかもしれません。その時はぜんそくという診断が付いてしまいます。しかし、ゼーゼーしたからぜんそくでは、ちょっと乱暴だと思うし、何のためのガイドラインかということになってしまいます。
一方で、最近は“気管支炎”と診断しているようですが、ゼーゼーを繰り返し喘息の診断基準を満たしているにもかかわらず、“風邪”と診断して、風邪薬を出し続ける小児科医もいます。こういった患者さんにぜんそくであることを理解して頂くために、ガイドラインを指し示しています。当院の診察室の脇のガイドラインの診断基準が記載してあるページは手垢がついています。いつもそのページを開いているからです。
新しい医療を勉強していれば、治療は同じ方向に向かうと思うのですが、診断も治療も異なるがために症状が改善しないということが起こってしまうのです。ダメ押しとして「風邪じゃないから、風邪薬を効かないんです」というと「あー、そうですね」と理解して頂けるようです。
症状が変わらないのに、何度も通って同じ薬を出し続けられている患者さんをみると、いつもガッカリします。それだけ信頼をしていたんだなとも思います。でも、医師が期待に応える必要があります。ガイドラインに沿った治療をすれば、わざわざ当院まで来る必要はないのに…と思います。
新潟だけに限らないのかもしれませんが、患者さんが受け身すぎるように思います。確かに患者の権利を振りかざすと、信頼関係がギスギスしたものになりかねません。しかし、アメリカでは別の専門医に治療方針を確認する「セカンドオピニオン」が当たり前のように行われていると聞きます。
患者さんは素人ですから病気に詳しくないのは仕方ありません。だからプロに頼らざるを得ません。でもプロはプロなりのレベルの医療をやらなければならないと思います。
先日も患者さんにガイドラインを見せたら、「こんなものがあるんですね」とビックリされました。「いえいえ、これを使って診療するのがスタンダードな医療です」と答えました。このように、ガイドラインをご存知でない患者さんの方が多いと思いますが、多少なりともガイドラインを知っていれば、医師もより緊張感を持って診療できると思います。変な言い方かもしれませんが、患者さんも自分やお子さんの身を守るためにも強くならなければならないのと思うのです。
ぜんそくと診断されていなくても痰がらみの咳が長引いたり、アトピーと診断されていなくても痒い湿疹が長引いたりすれば、ぜんそくやアトピーを疑われてもおかしくない状況だと思います。ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎にもそれぞれガイドラインが存在します。お子さんのなされている治療が適切かどうか、ネットでガイドラインを調べてみることをお勧めしたいと思います。
現在の治療について相談したい方も受診して頂ければ、対応したいと思っています。


