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母の食事制限 根拠のあることをやろう
2010年02月10日 更新

ネットニュースを見ていたら、「〈メタボ検診〉腹囲基準根拠ゆらぐ」とのタイトルが目に飛び込んできました。

ここ最近、急にメタボという言葉が広まり、日常会話の中でも使用されていると思います。男性の“腹囲85センチ”という基準も広く知られていると思います。

その85センチの“根拠”が3万人のデータを分析してみたら、あまり根拠のないものだと分かってきたようなのです。個人的には体が小柄な人もいれば、大柄な人もいます。例えば、体格に恵まれた上に腹筋や背筋を鍛えたプロ野球選手は、ほとんどが85センチを超えているのかなとも思います。個人的には、それを一律85センチというには無理があるだろうと思っていました。

成り立ちはよく分からなかったのですが、ちょっと調べてみると「日本肥満学会」が定めた診断基準のようです。腹囲85センチ以上(男性)が必須でその他に血圧が高い、中性脂肪や血糖が高いの3項目中の2項目以上を満たせば、メタボと診断できるようです。

学会が定めたものですから、もちろん根拠のあるものでなければなりません。今回3万人を対象にデータ分析を行ったら、腹囲85センチ以上が当てにならない可能性が指摘されたのです。

学会が提言するものは、いい加減であってはなりません。しかし、当時はそう定めた訳ですから、国民の健康を守るための提言と考えれば、これだけメタボという言葉が普及していることを思うと、ある意味で成功しているのかもしれません。ただし、その基準が間違っている可能性があるのなら、とんでもないことだと思います。早急に見直し、修正し、我々に正しい根拠を示すべきでしょう。

昨日も触れましたが、医師によって尿路感染症、マイコプラズマ、RSウィルスの診断ですら異なる可能性があるのです。診断基準を守れば、どの医師にかかっても診断や治療方針は同じはずなんですが…。あとは各医師の努力や良心にかかっているのかもしれません。

近頃はアトピーの新患が市内、市外から多いのですが、中には皮膚科から移ってこられる患者さんもいます。以前も書きましたが、アトピー性皮膚炎における食物アレルギーの関与は小児科は大いにあると考えているし、皮膚科は全くないと考えています。過去には学会で小児科医と皮膚科医の間で論争が繰り広げられたと聞いています。現在は、皮膚科の第一人者の先生方は、確かに食物アレルギーが悪化要因になり得ると考えておられるようです。

私の開業しているような地方では、なかなかそうはいきません。良い悪いは別にして、食物アレルギーについて触れる皮膚科の先生は、まずいないと思います。いや、いませんでした。

これまで食物アレルギーには一切触れなかった先生が、ここ最近は母に卵を控えるよう指導し始めたようです。そこから来た数人のお母さんが、そう指導されたとおっしゃっていました。考えが変わったのか、当院の影響を受けたのかはよく分かりません。塗り薬もパターンが変わったようです。

皮疹の悪化に卵や乳製品がかかわっているかもしれないと心配するお母さんは少なくないと思います。母の卵を控えるように指導することは、患者さんの目には「きめ細かく配慮してくれる」ドクターという風に映るかもしれません。

ただし、よく考えてみて頂きたいのは、お子さんの皮疹の悪化に母乳経由の卵が関与している場合にのみ有効であって、悪さしていないのであれば、しなくてもいい我慢を強いられる訳です。ありがた迷惑と言えるかもしれません。

そのためには、前半に述べた通りの“根拠”が必要です。それほど割合が多いとは思っていませんが、例えば母乳中の卵の影響が20%の確率だったとします。お母さんはお子さんが20%に入るのか、影響のない80%に入るのかを知りたい訳です。知らないから「プロ」を頼っているのであって、プロは20%か80%を判断しなければならないのです。それを片っ端から母の卵制限をするとしたら、どう思われますか?。必要のない除去をさせられる可能性が高くなってしまいます。

アトピーは様々な悪化要因が関与していると言われていますから、食事の影響などを念頭において対応することは大切です。ただ全員を除去するというのは危険です。繰り返し述べている“根拠”がなければいけないのです。しかも、母乳経由で移行するアレルゲンは卵だけでなく、牛乳や小麦や先日「ザ!世界仰天ニュース」でもやっていたピーナッツなども考えなければなりません。アレルギー検査で卵白が反応していれば、少しは分かるのですが、検査もされていないようです。なぜ卵だけなの?という疑問も残ります。

生まれて間もない我が子の体に皮疹が出て、痒がっていれば、母親はそれが充分大きなストレスになります。それに追い打ちをかけるような根拠のない母親への卵の除去はすべきではありません。それこそ、お母さんのストレス発散がケーキやお菓子を食べることであれば、それさえも奪うことになってしまいます。本当に悪化要因になっていることが確定すれば、お母さんもお子さんのために頑張れると思うのです。

申し訳ないのですが、この辺は小児科でアレルギー専門医の領域ですので、紹介して頂く必要があると思います。お互い分野が異なれば、分からないことは少なくないはずです。紹介して頂ければ、卵を制限する必要があるか、当院で検討してお返事を書きたいと思います。

そもそも母の卵の除去って、何をどうすればいいのでしょうか?。

母がビスケットやクッキーなどの卵がほんの少量しか含まれていない食品まで除去しなければいけないのか、卵料理のような濃いものだけ除去すればいいのかという問題もあります。アレルギー検査で卵白の項目がクラス0から6まであります。クラス2以上が陽性と言われていますが、2以上なら卵を除去するよう指導しなければならないのでしょうか?。母乳への卵やピーナッツ成分が移行するのは研究で確認されていますが、母が食べて1時間後に上がってくるというデータもあります。では母が卵を食べて時間を空ければ影響はないのでしょうか?。

私も何でも知っている訳ではないですが、この辺の基礎知識がなければ、母の食事指導は難しいだろうと思っています。ちなみに食事制限を指示された母には、卵の除去は「冷静に見極める必要があるが、当面は必要ないでしょう」と説明しました。“根拠”を時間をかけて話しましたので、納得して帰って行かれました。

私のやっていること何もかもが適切とは言えません。しかし、“根拠”のあることをやりたいという気持ちは持っているつもりです。“根拠”のあることを徹底してやろうと思えば悩むし、自分の力のなさを思い知らされます。

地元では有名な先生がそういった指導をし続けた場合、当然影響力が大きいため、母への卵の除去がこの地域でのスタンダードになってもらったら困ります。私が「食物負荷試験」を広めたいのは、無駄な除去をなくしたいがためです。それと同じように母の食事制限に関しても、無駄な除去をなくしていきたいと思っています。