小児科 すこやかアレルギークリニック

クリニックからのお知らせ

病院からのお知らせ

逃げない
2009年05月07日 更新

私の尊敬する先生は、医療に取り組む姿勢として以下のようなことを守ってきたそうです。

「ウソはつかない、逃げない、相手の感情に入り込んで一緒に考える、責任は最後まで持つ」

私を含めたどの医師も胸に手を当てて振り返ってみると、ごまかしたり、逃げたり、責任回避をしようとしたことは一度や二度はあるのではないかと思います。当たり前のようで、なかなかできないのが現状ではないでしょうか。

私の場合、福岡で勉強させて頂いて、新潟に戻ってきました。恩師を含め、日本の第一人者とされる先生方からいろいろとご指導を受けてきましたが、大きな影響を受けました。私の診療スタイルがガラリと変わったと言っていいでしょう。

先程の恩師の言葉は、つい先日初めて聞いたことですが、知らないうちに同じようなことを心掛けてきたような気がします。

アレルギーは、症状を繰り返す慢性の病気です。日頃から経過をみなければいけないし、継続的な治療が行われなければなりません。もちろん、信頼関係を築かなければいけないし、ウソがあっては人間としても信用されることもないでしょう。つまり、医療を行う前に人間でなければならないということです。

当院を初診される患者さんで、ぜんそくやアトピーと的確に診断されていないことが多いと言っていますが、“風邪”や“乳児湿疹”なら症状を繰り返すこともなく、じきに治っているはずです。「ぜんそくやアトピーだから、今まで治療しても良くならなかったんだ」と気付くと、それ以降は私のことを信用して下さるようになります。

ぜんそくやアトピーの診断を下すことは、その診断に責任を持つことです。診断に自信がなくて責任を持てない場合は、「ぜんそくっぽい」、「アトピーの気がある」などと診断しているのかもしれません。

いつも言っている通り、診断がなければ、次のステップである治療に踏み込めません。初めて会ったお子さんの治療法を選択することは、丁寧に問診すれば、さほど難しいこととは思いません。ぜんそくの患者さんであれば、ぜんそくのガイドラインを示し、ぜんそくであることを納得して頂きます。

その次に「お子さんのぜんそくの重症度はここに分類されるので、この治療が薦められます」と説明すれば、どんな患者さんでも軽症なら軽い治療、重症ならガッチリした治療を薦めることができるはずです。つまりガイドラインをしっかり把握していれば、症状を抑えられないということは、まずないと思うのです。

しかし、自分の知識を駆使しても改善が思わしくなかったことが、過去に何回がありました。以前ぜんそく症状がみられたことがあり、しかも運動すると症状が誘発されるので、私はぜんそくの症状だと確信しました。しかし、治療をしても思ったような改善が得られません。一般的には、治療の反応が悪いと治療不足を考え、治療のステップアップを考えます。治療を強化しても、「少し効いているようだ」程度の改善具合でした。最後に考えついたのは「この子の症状は本当にぜんそくでいいのだろうか?」ということでした。

周囲には、この患者さんに本当の診断をつけられそうな小児科医がいなかったので、私はある作戦を考えました。以前も、ここで触れたことがあるのですが、親御さんの了解を頂き、学会でぜんそくを考えてしっかりと治療をしたが、改善が得られないと発表させて頂き、会場のアレルギー専門医からアドバイスを頂こうと考えたのです。結局、会場の先生方からぜんそくと区別の難しい似た病態だが、ぜんそくではないだろうというヒントを頂きました。

発表後に3~4人の先生方から同じ病名を指摘されたので、自分の勉強不足を恥じたものです。しかし、「私は逃げなかった」と胸は張りたいと思っています。

例えば、食物アレルギーにおいても、逃げないようにするには「食物負荷試験」を行わざるを得ないと思っています。血液検査だけでは何も言えません。本当に食べさせてあげたいと思えば、「食物負荷試験」は避けて通れません。現実問題として「食物負荷試験」は県内の小児科ではほんの数件しかやっていないと思います。患者さんのことを真剣に考えれば、これらの検査ができなければ、できる医師に紹介状を書くのが本来の姿だと思っています。

私は、恩師の境地に早く達したいと思っています。しかし、恩師も何回も失敗を繰り返して、その境地に辿り着いたそうです。やはり誠実に、“逃げない”医療を心掛けていこうと思っています。