14年程前に勤務していた総合病院の整形外科の先生に、こんなことを言われたことがあります。
「整形外科というのは、半分は精神科のようなものなんだよ」
それを聞いて、同じ医療関係者ながら、真意が分かりませんでした。解説をして頂いて、ようやく理解できました。
つまり、整形外科を受診されるのはご老人が多いと思いますが、腰やひざなどの“痛み”で受診されることが多いと思うのです。同じ痛み止めを処方するにしても、話をよく聞いてあげたり、「この薬、よく効くから」と一言添えるだけで、おじいちゃんやおばあちゃんはホッとして、痛みの感じ方も軽減するそうなのです。
私にとっては、ある意味“衝撃”的でした。まだ若かった私は、診察の中で、話を聞いてあげることやいわゆるリップサービス(?)は小児科には、それほど必要のないことだと考えていたからです。アレルギーにどっぷりつかる前の話ですので、尚更よく分かっていなかったのでしょうね。
その後、アレルギーを志し、国内有数の小児アレルギーの専門病院に勉強に行かせて頂くことになります。そこで「アレルギー学」という学問がとっても深いものであること、新潟県はアレルギーに関して遅れていて専門的医療が普及していないこと、アレルギーで本当に悩んでいる患者さんがあまりにも多いことなどなどに気付くに至りました。
毎日専門外来ができるようにと開業を思い立ち、小児アレルギーにこだわった医療を心掛けてきました。そういう風にやってきてみて、現在は親御さんの話に耳を傾け、よく説明し、このようにすれば症状を安定させることができると、治療の筋道をつけてあげることが重要なんだと考えています。ただし、これはアレルギーだけではないはずです。
はやっている小児科に行っていた親御さんが、よくおっしゃる言葉に「聞ける雰囲気ではなかった」というのがあります。先日、市外から受診された患者さんはぜんそくがあり、かなりの頻度で咳が聞かれるそうです。その患者さんは今年の冬にぜんそく発作で入院してしまったのですが、その時も何十キロも離れた当院に「現在の治療でいいのか教えて欲しい」と受診されました。
そして今回も治療を強化すべきか、今の治療のままでいいのか相談に来られたのです。「いつも薬をもらっている小児科では混んでいるので、聞くに聞けないし、ここ(当院)に来るとキチンと話を聞いてもらえるし、説明もしてもらえる」とおっしゃって下さいます。
私だって頼られれば何とかしなければと思うし、80キロ程離れた街から受診されると、親御さんがどれだけ切羽詰まっているのかを伺い知ることができます。普通の開業医では、こういうシチュエーションはあまりないでしょうが、そんな患者さんに2~3分の診療で帰したら、期待に応えていることにならないし、医師としての人間性にも関わると思っています。
ふと思い出した冒頭に紹介した整形外科の先生の話って、的を得ていることに気付きました。
日頃から言っているように、医師は医学的根拠のある正しい医療を行うべきでしょう。診断が適切でなかったり、治療が重症度に合っていなければ良い医療とは言えません。しかし、正しい薬を出せばそれだけでいいかと言えばそうではないでしょう。キチンと説明し、安心感を持ってもらうことも重要です。
お子さんが病気になると、親御さんも精神的にも相当ストレスがかかります。特にアレルギーは慢性な経過を辿りますから、尚更だと言えるでしょう。親御さんの話に耳を傾け、ストレスを軽減させる努力は必要でしょう。親御さんの気持ちを思い遣ることも治療の一環と考えていいのだろうと思います。
小児科医の場合も、本当に患者さんから信頼を得るためには、時間をかけて話を聞いたり、説明することが重要なのだろうと考えています。


