小児科 すこやかアレルギークリニック

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2010年10月07日 更新

昨日の地元の新聞に先日行われた「すこやか健康フェア」の記事が載りました。

当院が食物アレルギーの啓発イベントを行い、講師の先生が食物アレルギーの新しい治療を紹介したという内容でした。食物アレルギーは、これまではいわゆる受け身で、「除去」しかなかったのに、能動的に「食べて体を慣れさせていく」という方法が具体的に載っていました。

乳幼児の食物アレルギーは5~10%の頻度があると言われており、毎日の食事のたびに困っている患者さんや親御さんは多いはずです。どちらかというと医師は、アレルギー検査をして「除去するように」と指導してそれで“おしまい”という感じですが、患者であるお子さんが一人いれば、更に周囲には幼稚園・保育園の先生や調理員、栄養士がいます。これらの方達は、食物アレルギーの知識を充分に持っているとは言い難いのですが、それでもその子を守るために食物アレルギーと戦っていると言えると思います。

そういう方にとって、「食べて慣れさせる」という食物アレルギーの新しい治療法はまさに“ニュース”だったはずです。

最近はテレビなどでも時々取り上げられ、食物アレルギーの専門医の間では、非常に注目されている治療法なのです。私も年間に何度も学会に参加していますが、もっぱら「経口減感作療法」の情報収集をしています。

確かに、現時点ではまだ研究段階なので、“治療法”とまでは言うべきではないのかもしれませんが、全国の数カ所のアレルギー専門病院からは、極めて有効とする報告がなされています。ここ数年で実用化されるものと思われます。

こんな夢のような治療法があることさえ、実は本当に食物アレルギーで困っている患者さんはなかなか入手できない状況なのだと思います。ご存知ない患者さんは圧倒的に多いのだと思います。私の本音から言えば、さすがに知らない小児科医は少ないでしょうから、もっと医師達が「もうじきこんな治療が実用化されるからね」なんて言ってくれると、患者さん達も励まされ、希望を持つことができるのだと思います。

そもそも、それ以前に「食物負荷試験」のことを知らない患者さんがほとんどです。「食物負荷試験」は私がこの場でよく触れているので、ご存知の方も多いでしょう。いつも言っている通り、「アレルギー検査が陽性」=「食べられない」という指導は間違いです。中には本当に食べられないケースもあるでしょうが、食べさせようと思えば食べさせられるのです。

つまり、卵アレルギーなら、卵焼きを食べて蕁麻疹が出たとしても、ビスケットやクッキーなどの卵の少量入っているお菓子なら食べられる可能性は充分あります。食物アレルギーの対応は「必要最小限の除去」とガイドラインに明記されています。症状が出ないものは、食べてもいいということです。そうすることで初めて“必要最小限”と言えるはずです。当院のデータでは、卵がクラス5でも卵焼きを食べられたという症例がありました。いくらクラス5であったも、こんなこともあり、これが“必要最小限”なのです。

当院にかかっていなければ、この患者さんはどうだったかと推測すると、ひたすら卵を完全に除去するように指導され、時々採血をしてアレルギー検査をみて、数値が0か1になるまで待つか、2くらいに下がってきたら「家で少し食べさせてみなさい」と言われることでしょう。ちなみに敢えて言えば、「家で食べさせて」と言うのは責任転嫁と言われても仕方ありません。

最近は、その食品を完全に除去していると、逆にその食品との相性が悪化して、より食べられなくなる可能性が示されています。にもかかわらず、新潟では検査が陽性だと完全除去を指導されるケースが多いのです。プロである小児科医の指導が、逆に病気を悪化させてしまうのですから、本当なら問題があるはずです。

確かに、そう言った指導がこれまでは主流だったのは事実です。しかし、時代は変わりつつあります。そういう意味でも患者さん達は、新しい情報を真っ先に仕入れることができる立場にあるべきですし、知る権利があるはずです。

当院が普及に努めている「食物負荷試験」は、開院して3年間ずーっと訴え続けてきました。しかし、当院が積極的に取り組んでいることをご存知のはずですが、周囲の協力が見込めないため、地元では全くと言っていいほど普及していません。

今回、食物アレルギーで困っている患者さんのために「経口減感作療法」の実用化が近いことを知り、希望を持って頂きたい一心で「すこやか健康フェア」を開催しました。ただ、これまでの流れからすると、「食物負荷試験」と同様になかなか広まらないのだろうと思っています。

そういう意味では、地元の人々が結構読んでいる地元紙に「経口減感作療法」の記事が載ったこと自体、有り難いことだと思います。メディアの力は大きいですから、少し期待しています。

患者さんには、正しい情報を知る権利があります。私に大した力はないですが、何もしないよりは続けた方がいいですし、細々ではありますが、正しい情報発信を今後も続けていきたいと思っています。