子どものアレルギーは、専門医が極めて少ないため、正しい知識、正しい指導が普及していません。
今度触れようと思っていましたが、お母さんが子どもの頃にある食物でアナフィラキシーを起こしており、それ以来ずっと除去していました。お子さんが生まれ、1歳を過ぎたのにその食品だけは心配で食べさせられないのだそうです。その気持ちはよく分かります。遺伝の影響は大きいからです。ただし、本当に食べられないかは検証が必要だと思います。
私が前勤務先の病院で働いている頃、ある病院職員のお子さんが湿疹が出て治らないと私の元を受診されました。
アトピー性皮膚炎でした。そう診断されるとは思っていなかったようで、動揺されているように見えました。ただ、私にはそれを「乳児湿疹」などと気休めの診断をすることなんてできません。経過が長引き、いずれそのウソがばれてしまいます。アトピーという診断がその時は受け入れ難くても、母はお子さんに起きている現実を知る権利があるし、キチンと理解して頂く必要があると考えています。アトピー性皮膚炎には食物アレルギーを合併していることが多いので、アレルギー検査も実施しましたが、いくつかの食品が陽性になっていました。
アトピー自身は重症ではありませんでしたが、軽症とも言い難い状況でした。症状を安定させるには、やや時間がかかりましたが、落ち着いていきました。食物アレルギーも疑われましたので、「食物負荷試験」を行い、食べられるかどうかシロクロをつけたりしていました。そうこうしているうちに、二人目のお子さんが生まれました。
アトピー性皮膚炎は、乳児期早期に発症することがあるのですが、不安は的中しました。生まれて間もなく、やはり湿疹が出たと私の元を受診されたのですが、兄を彷彿とさせるようなそっくりの症状だったからです。
ガイドラインに則り、診察してみるとアトピー性皮膚炎の診断基準を満たしていたので、アトピー性皮膚炎と診断しました。今度は親御さんもアトピーと予想されていたようで、「やっぱりそうですか」という感じの対応だったように記憶しています。アトピーの重症度としては、兄と同等かやや軽いくらいでした。ステロイドなどの薬の塗り方もだいぶ慣れてきており、治療を開始して間もなく症状は落ち着いていきました。
私が上越に開院してからも、40キロの距離を兄弟で通院して下さっていた訳ですが、彼らがお兄ちゃんなりました。そう、下にまた弟ができたのです。つい先日のことですが、そのお子さんが生後3ヶ月になった時に、当院を初診されました。神様は意地悪と言わざるを得ないのですが、3人目もアトピー性皮膚炎と診断できる状況でした。「またしても…」という気持ちでした。
疫学的に言っても、アレルギーは男の子に多いと言われています。ぜんそくもアトピーも何故か、男は女の1.5倍くらい多いというデータが出ています。今回紹介した3兄弟のケースは、男兄弟ですし、殊更に遺伝の影響の大きさを思い知らされます。
確かに当院には兄弟で通院されているケースが多く、二人ともにぜんそくだったりアトピーだったりします。ただし、女の子の姉妹で二人ともアレルギーなんてこともあります。
これを発症予防に使えないかという考えもあります。つまり、上の子がアレルギーだと、これだけ遺伝の影響が無視できない訳ですから、下の子をリスクが高いと考え、何とか発症を予防することができないか、というものです。しかし、母が妊娠中や授乳中に卵や乳製品を除去しても、予防できないことが分かってきています。
当院を初診される患者さんで、他院で上の子はぜんそくと診断されているのに、下のお子さんが咳が長引いても、“風邪”としか診断されていないこともよくあります。診療する上で、ご両親や兄弟のアレルギー歴を確認することは、正しい治療のヒントになると言えると思っています。


