小児科 すこやかアレルギークリニック

クリニックからのお知らせ

病院からのお知らせ

母似かどうか
2010年11月10日 更新

アレルギーは、親の遺伝の影響を受けることが多いと言えましょう。

両親に何らかのアレルギーがあると、お子さんがアレルギーになる確率は5~7割というデータもあるようです。

実際、当院を初めて受診する患者さんに問診でアレルギーの家族歴を聞いています。両親ともにアレルギーがないと記載されているケースももちろんありますが、意外と少ないと思いますし、よくよく話を聞いてみると、花粉症がアレルギーと気付いておらず、「なし」と書かれていることもあります。

先日、当院を初診された患者さんが診察室に入って来た時に、問診票の家族歴のところに目が止まりました。父に甲殻類アレルギー、母に小児期に魚でアナフィラキシーと記載されていたからです。ほとんどの患者さんに家族歴は聞いていますが、両親ともに食物アレルギーの患者さんというのは、非常に稀だと思います。

お母さんは、子どもの時に魚を食べて強いアレルギー症状を起こしたことがあり、それ以来、魚を除去しているそうです。この家庭では魚が食卓に並ぶことはほとんどないそうです。そうなってしまうことは致し方ないと思うのですが、問題は「お子さんまで食物アレルギーなのかどうか?」ということだと思います。

お母さんはご自分に似ているはずとお思いのようですが、本当のそうなのかを証明するのが小児科医の役目だと思います。実際に1歳を過ぎても魚は一切与えておりませんでした。魚アレルギーの場合はビタミンD不足が心配ですから、本当なら他のもので代替しなければなりません。

まずアレルギー検査をさせて頂きました。いくつかの魚の項目を調べてみました。私自身、両親ともに食物アレルギーで、しかも母が魚でアナフィラキシーを起こしたなんて言うケースは多分初めてだったので、「そこまで母似なものなのか?」という思いはありました。

1週間後、結果を見てみると、調べた魚の項目はすべて陰性でした。つまりクラス0だったのです。じゃあ食べても何の問題もないかと言うと、現在も魚を食べていらっしゃらないお母さん自身がなかなか怖がって食べさせられないのです。お母さんの気持ちもよく分かります。

となると、お母さんの背中を押してあげるために、「食物負荷試験」をやることにしました。いつも書いているように、「食物負荷試験」をやっている小児科医は極めて少ないため、「食べても大丈夫なようだから、家で食べさせてみて。何かあったらすぐに受診して下さい。」というのが常でしょう。

いつも思うのですが、これでは不親切です。今回のケースのように、お母さんがアナフィラキシーという非常に恐い思いをされている場合は、アレルギー検査が陰性であっても、「はいそうですか。では食べさせてみます。」とはならないことが多いのです。「ついててあげるから、医院で食べさせてみよう」が親切な対応だと思うのです。どの魚を食べさせてみるかと相談になりましたが、とりあえずシラスを食べさせてみることにしました。

そして負荷試験当日になりました。「食物負荷試験」は何か想定外のことが起こることもない訳ではなく、何か起こればすべて私の責任になります。責任を負いたくないからやらないという考えもあるでしょうが、医療には常に責任がついて回ります。逃げていては何もできないことになると思うのです。

シラスをスプーン1さじから食べさせてみました。負荷試験で大事なことは、スムーズに食べてくれるかどうかです。いくら小さい子とは言え、“食べたがらない”のは心配な症状のひとつです。その点は問題なく、“箸が進んだ”ようです。

「食物負荷試験」の場合、卵ならゆで卵や卵焼き1個、牛乳なら牛乳200ml、小麦ならうどん100gというように「これくらい食べればいいでしょう」といった食材の量が決められています。魚アレルギーの場合は、切り身30gという規定があるようですが、シラスの場合は量に決まりはありません。負荷試験としては、“マイナー”な食材は“適量”与えることになっています。

ゆっくり時間をかけて食べる量を増やしていく途中、眠くなって寝てしまいました。それでもある程度の量は、無事に食べることができました。お母さんも先月当院を初めて受診したばかりなのですが、トントン拍子に話が進み、「食物負荷試験」に至りました。そして食べても何もアレルギー症状は起きませんでした。負荷試験を終わった後のお母さんのうれしそうな表情が印象的でした。

やはり小児科の役割は大きいのだと思います。医師の中には「親に似る可能性が高いから、食べさせてはいけない」と指導する小児科医もいることでしょう。両親が食物アレルギーなのですから、確かに似る可能性はあります。確率の話を出してもきりがないのです。ただ本当にそうなのかは証明する必要があるのです。

魚はいろんな種類があるので、全部の魚を負荷試験する訳にはいきませんが、もう1回くらいは別の魚を負荷してより自信をつけて頂こうと思っています。親御さんは“素人”な訳ですから、「恐くて何もできない」のを何とかするのがプロであると考えています。

「アレルギー検査が陰性だから負荷試験をする意味がない」という意見もあるかもしれませんが、クラスが0でも恐いものは恐いと思うのです。母の気持ちを考えてみると、意味がないとは思えず、背中を押してあげることことの方が大切だと思っています。

ソバやピーナッツは強いアレルギー症状を起こすことがあるため、検査が陰性であっても食べさせられない親御さんは時々いらっしゃいます。同じような意味で、負荷試験をやることがあります。

「食物負荷試験」は例えば、卵アレルギーがある場合、卵焼きを1/3食べたところで蕁麻疹が出たとします。食べられる、もしくは食べられない量を決める検査だと思います。しかし、卵でアナフィラキシーを起こしたとことがあり、のちにアレルギー検査が陰性になっても、恐くて食べさせられない親御さんもいます。当院では、1歳児ですが、卵がクラス0でも負荷試験をやって症状が出たことという経験もあります。

結局、負荷試験は食べられるかどうかシロクロをつける検査なので、通常はアレルギー検査が陽性であっても食べられることを証明しているのですが、今回のようにクラス0であっても心配で食べさせられない場合は、「食物負荷試験」の適応になると思っています。そうなると、負荷試験の適応はその分、広くなる訳で、負荷試験をやる医師が少ない現状ではカバーできないと思っています。

恐くて食べさせられないお母さんの背中を押す小児科医が増えてくれることを願っています。