小児科 すこやかアレルギークリニック

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2010年11月12日 更新

日々、日常診療の他に、インフルエンザの予防接種をやっています。

今年は例年よりは予約枠を拡大しているのですが、接種希望者が多く、平日なら数十人います。

当院は食物アレルギーの患者さんも多いので、ひとりひとり安全に打てるかどうかを吟味する必要があります。昨日の話ではないですが、冷静に考えれば、親御さんもゼーゼーいうのはぜんそくではないか?と考えることはできるはずです。でも主治医に「風邪です」と言われると、そんなものかと納得させられているように思います。

残念ながら、ぜんそくと診断するのが苦手な医師もおりますので、ゼーゼーを繰り返せば、主治医が何と言おうと「ぜんそくではないか?」とシンプルに考える親御さんが増えれば、過小治療で良くならない子ども達を減らすことができるのではないかと思っています。

その点、一般の方の間でも広く知れ渡っているのが、「卵アレルギーがあると、インフルエンザの予防接種ができない」というものです。これはある意味、間違いです。「極めて重症な卵アレルギーがあると、接種できない可能性がある」という言い方が適切でしょう。当院では、卵でアナフィラキシーを起こした既往があっても、卵白の値がクラス6でも接種は行っています。当院はアレルギーの体質が強いお子さんが多いにもかかわらず、今のところ希望者に接種できなかったことは一人もいません。

これも専門でない先生が、何かあったら困るということや、自分の身を守るためと言うこともあるでしょうが、「卵アレルギーの子はインフルエンザの予防接種はできない」と繰り返し言っていることが、ある意味“患者の常識”になってしまっているのだろうと思っています。

だったら、先に述べた「ゼーゼーを繰り返したらぜんそくの疑いが強まる」、「赤ちゃんの湿疹にはアトピー性皮膚炎が多い」ということが“患者の常識”になってもらわないと、いつも言っている過小診断、過小治療でよくなっていない患者さんが新潟県内には多いので、一向に困っている患者さんを減らせないのです。

いずれにしても、インフルエンザの予防接種は患者さんの体質を考えながら、接種できるかどうかを判断し、接種しているつもりです。ただ、小児科医として予防接種を打てるかどうか判断する必要があるのは、卵アレルギーだけではないのです。

例えば、熱性けいれんやてんかんがあり、けいれんを起こして間もなければ、接種できるかどうかは主治医の判断になりますし、ガンマグロブリンという免疫グロブリンの注射を受けている場合は、6ヶ月以上空けないといけないなどといったルールがあるのです。

先日、インフルエンザの予防接種をしようとしたら、病歴のところに「川崎病」と書かれていました。川崎病の場合、先のガンマグロブリンの点滴をするのが治療法ですので、「接種はできるかな?」と一瞬考えたのですが、生ワクチンの場合のみ6ヶ月以上空ける必要があるので、接種には問題はなく、接種致しました。

当院では開院以来、何人かは川崎病と診断し、入院をお願いしたケースはあります。私はその患者さんが川崎病になったことは把握していませんでしたが、実は最初はうちで診ていたことが判明しました…(汗)。

カルテを見直してみると、発熱2日目で体に発疹が出ていた状況で受診されていました。さほど機嫌も悪くなく、頬も含め腕や太もも、体にも発疹が出ていました。ちょっと恥ずかしいのですが、発疹の理由として「派手めなリンゴ病かもしれない」と記載していました。

リンゴ病は頬と腕と腿に発疹が出る病気で、体にも出ることがあります。大して熱は出ないことが多いのですが、私はその患者さんの発疹を不思議に思い、自分の知っている病気は当てはまらなかったので、よく分からないけれど、強いて言えば「派手めなリンゴ病?」と考えました。分からない病態にぶち合った時は結構印象に残っています。そういえば、そんな説明を親御さんにしたことを思い出しました。

実は、その後も熱が続き、目や唇が赤くなり、近くの病院を受診して「川崎病」と診断され、入院治療を受けられたのだそうです。退院後も何度か当院を受診されていたのですが、私はそのお子さんが川崎病にかかったことを認識していませんでした。今回のインフルエンザの予防接種の時に、私が「リンゴ病?」と悩んだ答が分かったのです。

川崎病は、熱が5日続き、発疹が出て、目が赤い、唇も赤い、首のリンパ節が腫れる、指先が腫れ、のちに皮が剥けるという症状が出るのが特徴です。私が診た時点で、2日めの熱と発疹だけでした。小児科医がピンと来るのは目が赤い、唇も赤いという症状が出てからだと思うので、私が診た時点で川崎病と診断できなかったのは無理もないのですが、ただ頭の中に川崎病という病気が全く浮かんでいなかったので、意外なところで“答え合わせ”ができた格好です。小児科医としても、まだまだ修行が足りないと思いました。ただ、似たようなケースでは、今後は川崎病も想定することができるだろうと思います。

このケースでは、私の診た翌日くらいから目も口も赤くなり、徐々に重症感が出たために、そのまま病院に行かれたのだそうです。川崎病が想定されたり、もう少し重症感があれば、こちらから病院には紹介したはずです。私の診た時点で入院の適応はなかったと今でも思っていますが、紹介状を書けば、病院から返事を頂けますので、答が分かります。

同じ小児科医でも、病院に紹介したがらない医師と必要なら躊躇しない医師がいます。私は後者でありたいと思っています。医療の世界は、おかしなところがあって、紹介すれば患者が減る、つまり収入が減ると考える医師もいるようです。しかし、開業医が全て治療できれば、病院の入院施設は要らなくなります。胃腸炎も軽ければ、あっという間に治りますが、重ければ、脱水症状が強く、入院加療が必要になります。分からなければ紹介する、入院が必要と考えれば紹介するというのは、開業医の“義務”なのだろうと思っています。

以前も、虫さされを掻きこわしたような湿疹が体中に出て、最初は「こうすれば良くなるのではないか」と自分なりに考えて治療してみたのですが、思った程良くならず、逆に顔にも広がってきたため、皮膚科の先生に紹介状を書いたことがあります。湿疹は全身状態に影響が出ることは少ないため、湿疹くらいで皮膚科に紹介状を書く医師は少ないと思いますが、私も分からなかったため、答を知りたかったし、もちろん早く治って欲しかったため、紹介したのです。

紹介状の返事には、虫さされの湿疹が慢性化したものと記載されていました。それを見て「自分の考えが間違っていなかったんだ」と思いました。実は後日談があり、湿疹が良くならなかったため、その皮膚科の先生もあれやこれやと薬を替えて対応して下さったそうです。結局行き着いた答は、「カポジ水痘様発疹症」だったそうです。それ用の治療をしたらスッと改善したそうです。

これも予想だにしない答でした。こういうケースは経験がありませんでした。もしかしたら、経験していたのに気付かずに、患者さんのご迷惑を掛けていたのかもしれません。

ちなみに、「カポジ水痘様発疹症」とはヘルペスウィルスが皮膚に付着し、細かい水疱が広がる病気です。当院は重症なアトピー性皮膚炎の患者さんもみているため、皮疹を掻いた傷からヘルペスウィルスに感染し、「カポジ水痘様発疹症」を発症することはさほど珍しいことではありません。しかし、あんなパラパラと出るタイプは初めてです。

私が診つづけていたら、最後まで見極められなかったと思います。そういう意味では、紹介することでその分の収入は減ったと言えるでしょうが、分からないことを知ったかぶりをして対応しなくて済み、答も分かり、今後に活かすことができる訳ですから、充分得をしたと思っています。

やっぱり各医師は得意分野、不得意分野があるのですから、地域で連携して紹介し合いながら患者さんにより良い医療を提供できるようにすべきでしょう。当院は子どものアレルギーにはこだわっているつもりですが、逆に総合病院の先生から紹介はありますが、開業医の先生からはまずない状態が続いています。症状が良くならずに当院に移ってきた患者さんの診断や治療をみると、申し訳ないですが、診断も治療もキチンとしていないケースがほとんどです。もっと早く紹介して下さってもおかしくない状態です。

少なくとも当院では、分からないものは分からないと素直に認め、必要があれば紹介状を書くというスタンスを続けていきたいと思いますし、こういう考えが地元に広まってくれるといいなと思っています。