聞き飽きたかもしれませんが、今月の感染症の講演の準備に時間がかかり、診療以外では寝ても覚めても、そのことが頭の大部分を占めています。
アレルギーなら何度も話し慣れています。風邪も含めれば「感染症」は毎日のように大勢診ており、しかも、20年近く前に小児科医になってからですから、“年季”が入っている訳です。
ただ、小児の感染症の話となると、看護学生さんの授業で教科書に沿って話すくらいしかなかったし、話を進めるのに使用する1枚もスライドがありませんでした。しかも、小児科は入院する子供たちのほとんどが「感染症」です。さまざまが病気がありますし、それぞれの病気について、スライドに上手にまとめる必要があります。
地元の園の先生方が大勢聞きに来られるそうなので、講演時に配布する資料を今後役立てて頂かなければなりません。これもよく話に出しますが、RSウィルスを調べない小児科医が多いため「RSウィルスって何?」という先生も少なくないでしょうし、短期間でマイコプラズマを2回も3回もかかり、その都度点滴をされているお子さんも少なくないようですが、私に言わせれば診断ミスだと思います。マイコプラズマの迅速検査の限界を理解していないと、こんなことが起こりますし、その都度点滴を受けるお子さんがかわいそうです。私が、ある程度は地元の感染症の正しい知識を広めないといけないと自覚しています。
平日は診療が終わるとグッタリで、週末くらいしか時間が取れません。しかし、週末には大事な用がありました。土曜の夕方に新潟市に恩師が来られ、アレルギーについての講演をされるからです。教え子の私としては、恩師が近く(と言っても120キロ離れていますが)に来られているのに、参加しない訳にはいきません。
土曜と言えば、最近患者さんが極めて多く、昼過ぎからはインフルエンザも開院以来、最も多くの予約を頂いており、トップクラスに疲れる曜日と言えます。その後、高速で新潟市に向かい、恩師の講演を聞くと言うのは、結構なハードスケジュールです。しかも、ぜんそくの研究会が午後5時からですから、ハッキリ言って間に合わせるのは相当難しいのです。
恩師の講演は5時半過ぎからでしたので、数分遅れて会場に到着しました。恩師は日本のアレルギーの代表を務められた方でもあり、本当に知識の引き出しが多くあり、しかも、話も上手で聴衆を引きつけるので、アレルギーの話をさせると右に出る者はいないと思っています。いつも勉強になります。だからこそ、最新情報を求めて、疲れている体にむち打って行かねばならないのです。
感染症の講演の準備もあるので、そういう事情を勘案して「行かない」という選択もありました。しかも疲れているので、体を休めることのできる大事な週末です。しかし、行って良かったです。いろいろなデータを示して下さり、ものすごく勉強になりました。恩師の話を県内の小児科の先生に聞いて欲しかったのですが、上越からは私くらいだったでしょうか。私がアレルギーの専門だからかもしれませんが、聞かないなんてもったいないなと思ってしまいました。
その中で「これは注意喚起です」と言われたことがありました。私も正直ビックリしました。大人が小麦を食べて、運動したと際にアナフィラキシーを起こすケースが頻発しているそうです。恩師の病院だけでも、こういった患者さんが何人も受診されており、全国の専門病院でもそういったことが起きているのだそうです。
奇妙なことに、患者さんにはある共通点がありました。ほとんどが30代の女性なのです。しかも、それまで小麦を食べていました。にもかかわらず、小麦を摂取後に運動して強いアレルギー症状を起こしてしまうのです。これって本当におかしいことです。
答を言いますが、実は化粧石けんの中に小麦成分が含まれており、それを連日使用することで、小麦に弱い体質に変わってしまうのだそうです。食物アレルギーは、運動することで腸が揺らされ、アレルゲンが余計に吸収されてしまい、アナフィラキシーを起こすことがあります。今回のケースでも、小麦を食べて運動してアナフィラキシーショックを起こしているので、小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーと診断できると思います。
私は、小麦が入っている石けんがあるなんて知りませんでした。しかも、パンやうどん、パスタを食べている大人が小麦でアナフィラキシーを起こすなんて、考えもつきません。こういう知識が診療に役立つのです。A社のカレーを食べても何ともないのに、B社のカレーでアレルギー症状を起こす子がいました。ある小児科では「カレーアレルギー」と診断されていたようですが、カレーでアレルギーを起こすのならA社のカレーでも症状が誘発されるはずです。
実はB社のカレーに隠し味としてピーナッツが含まれており、ピーナッツアレルギーと言うのが答でした。これは専門医なら知っておかなければならない知識です。今回の小麦含有の石けんのケースも、最近患者が急増しているそうですから、いつアレルギー科の当院に相談に来られるか分かりません。知っておかなければならないケースです。
世界丸見え仰天ニュースで、重症ピーナッツアレルギーを取り上げた時に、再現VTRで家庭内のピーナッツを含有する製品を処分している様子が映されていましたが、洗剤も含まれていました。食べ物ではないので、正直言って「何をそこまで」と思ってしまいましたが、私の認識が甘かったことも勉強になりました。
普通の石けんには小麦は含まれていないでしょうし、最近の傾向なので、最近使われている石けんが要注意のようです。ネットニュースでも取り上げられており、それによると一部の化粧品や医薬部外品には、保湿や泡立ちを良くするために加水分解小麦末を使用している場合があるそうです。患者の急増を無視できず、厚生労働省も注意喚起をしています。
http://www.pref.kyoto.jp/yakumu/komugi.html
アナフィラキシーショックまでは至らず、使用後の顔の痒みという軽い症状もあるようです。男性には報告がないようで、30代女性に多いと言うのも合点がいきます。内科、皮膚科も含めご存知ない先生も多いと思いますので、最近小麦を食べるとアレルギー症状が気になる場合も相談して頂ければと思っています。


