昨日、小麦を含んだ石けんを愛用する女性が小麦を食べることで、場合によっては強いアレルギー症状を起こすケースが急増している話をしました。
不思議なのは、パンやうどんなどの小麦製品を食べていたにもかかわらず、小麦を含む石けんを連用することで小麦に感作されてしまうのか?と言うことです。“感作”とは、アレルゲン、ここでは小麦に弱い体質になってしまうという意味です。
実は、いま最も注目されている考え方が「経皮感作」です。読んで字の如く、皮膚からアレルゲンの影響を受け、感作されてしまうことを言います。
アメリカでは、ピーナッツアレルギーによるアナフィラキシーショックが問題になっており、一説によると年間50名程がピーナッツが原因で死亡していると言われています。そんなこともあり、ピーナッツアレルギーへの対応がいろいろと研究されているようです。その一環として、ピーナッツアレルギーの発症に何が影響しているのかを調べる試みが繰り返されています。
それによると、ピーナッツアレルギーの発症には、家のピーナッツ濃度の上昇との関連が示されました。母がピーナッツを多く食べると、ピーナッツアレルギーのお子さんが増えるなんてイメージかもしれませんが、そうではなくて、周囲の環境のピーナッツ濃度が高いとピーナッツアレルギーを発症しやすいということなのです。
以前から、アレルギー学会で、「アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患か?」と言う議論が真面目になされていました。最近では、アレルギーがあるからアトピー性皮膚炎になるのではなく、皮膚が傷んでおり、そこからアレルゲンが入り込んで感作されていくのではないかと考えられています。
アレルゲンが入るのは「口」からと、「皮膚」からの2つのルートがあり、口から入るとアレルギーを起こしにくくするとされており、皮膚から入るとアレルギーを起こしやすいとする仮説が注目されています。湿疹のひどい患者さんが、ピーナッツオイルを含むスキンケア用品を使用することで、ピーナッツアレルギーを起こしやすくなるという報告もあります。
そこで、昨日の小麦入りの石けんの話ですが、恩師の講演を聞いた時に、この「経皮感作」を思い出したのです。この件に関し、厚生労働省も注意喚起を行っております。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000uaiu.html
その下方からPDFファイルを見ることができ、その中に3例の実際の患者さんの発症までの様子が書かれています。記載はありませんが、以前から小麦アレルギーがあり、小麦が食べられない体質だったなら、問題視されることもなかった訳で、この3名の女性は小麦は問題なく食べていたと思われます。一人を除き、アトピー性皮膚炎は見られませんでした。皮膚に湿疹がなくても、小麦入りの石けんを連用することで、健常な皮膚からも小麦に感作されてしまうことを意味しているのでしょうか?。
少なくとも、皮膚が荒れていれば、アレルゲンは入りやすくなるため、積極的に皮疹の治療を行い、更なる感作を防ぐべきであろうと言われています。以前も触れましたが、アトピー性皮膚炎が重症の赤ちゃんが食物アレルギーも合併しており、前の主治医が食べられるものを探そうとアレルギー検査を繰り返したものの、調べた食事性のアレルゲン42項目すべてがクラス2以上の陽性だったという話です。
この患者さんはまだ離乳食を食べている赤ちゃんだったのですが、1度も食べたことのない食品まで、クラス2以上を示していました。アトピー性皮膚炎も重症だったため、もしかしたら皮膚から感作を受けたのかもしれません。
「経皮感作」の話は、それを裏付けるデータが出てきており、事実である可能性もあります。先程も述べた通り、注目されている理論です。ということは、これからは「経皮感作」のことを念頭に置きつつ、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの患者さんに対応していく必要があると言うことでしょう。
患者さんにベストのことをしたいと思えば、学会や研究会に参加して、最新の情報を入手しておかなければなりません。来月も小児アレルギー学会があります。私も準備はほとんどできていませんが(汗)、当院のデータを発表するつもりです。と同時に、「経皮感作」のことなど、最新の情報を学んできたいと思っています。


