小児科 すこやかアレルギークリニック

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蕁麻疹の話
2010年11月19日 更新

蕁麻疹が出ると、あわてて受診される患者さんを時々見かけます。

診察室に入ると、だいたい一様に「○○があやしいと思う」と親御さんがおっしゃいます。○○には食品名が入ります。つまり、蕁麻疹=食物アレルギーと考えられているフシがあります。

患者さんは、蕁麻疹の原因を解明するヒントになると思って、いろいろと考えて下さるのでもちろん耳を傾けます。しかし、「変わったものは食べていない」とおっしゃり、「原因は何だろう?」と不安そうにされているケースも少なくありません。

以前も触れましたが、お子さんが蕁麻疹が出て、ある小児科を受診した際に、食べて時間が経っているものまで手当り次第にアレルギー検査を調べて、ピーナッツが陽性だったのを見つけて、「原因が分かったよ」とピーナッツが原因だと説明されていました。

ちょっと待って下さい。検査が陽性=蕁麻疹の原因と誰が決めたのでしょうか?。問診をよくして、刑事ドラマではないですが裏を取らないといけません。つまり、ピーナッツが本当の原因であるという証拠をつかまなければ、解決したことにはならないのです。

話を聞いてみると、このお子さんは3日に1回程の割合でピーナッツバターを食べていました。ピーナッツバターには、ピーナッツがバリバリ含まれています。つまり、ピーナッツを犯人に仕立て上げるには、証拠不十分であり、“釈放”する必要があると思うのです。

医師が自信満々にピーナッツが原因だなんて言うものですから、大好きなビーナッツバターを食べられなくなってしまい、お子さんも親御さんも困惑していました。それで当院に救いを求めて受診されました。医師の言うことは“絶対”ですので、根拠のないことは言うべきではありません。好きなものを除去されて、「ありがた迷惑」と言わざるを得ません。

医師の間でも、蕁麻疹=食物アレルギーと捉えられているようです。それが本当なのか検証してみたいと思います。

広島大学の皮膚科は、蕁麻疹のスペシャリストです。その広島大学を受診した患者さんの原因を追求した結果、アレルギーが原因と結論づけられたケースは5.4%だったというデータを見て、皆さんはどう思われますか?。確かに、成人が多く含まれているかもしれず、小児科外来で調べた場合とズレがあるかもしれません。しかし、充分参考にはなるはずです。

5.4%と言えば、20人に1人の割合です。蕁麻疹の原因を食物アレルギーに求めてはいけないと言えるかもしれません。

蕁麻疹にはいろいろなタイプがあります。「物理性蕁麻疹」はまさに物理的な刺激で現れます。機械性蕁麻疹は、掻くことでその場所がミミズ腫れになるものを指します。寒冷蕁麻疹は寒冷刺激、日光蕁麻疹は太陽光線で出現します。これらをまとめて、10.0%でした。

「コリン性蕁麻疹」は、一般の方が想像する蕁麻疹とは少し異なります。不定形の盛り上がったものではなく、細かいブツブツで、ピリピリするようです。体が温まり、汗をかいた時に出やすく、若い世代に多いようです。これが6.5%。

その次が「アレルギー性蕁麻疹」で、エビ、小麦、ソバといった食物の他に、薬剤性も含みます。これが5.4%。「非アレルギー性蕁麻疹」は、変な感じの名前ですね。これは、ヒスタミンなどの痒み物質を含まれた食べ物を食べることで発症します。これが1.2%。

アレルギー性は、例えばエビを食べて、それにより体の中でアレルギー反応が起こり、その結果としてヒスタミンという痒み物質が出て、痒くなります。痒み物質を食べて痒くなるのは、体の中でアレルギー反応が起きていませんから、“非アレルギー性”なのです。

あとはまぶたや唇など限局的に腫れる「血管性浮腫」があります。それが4.2%。いま説明してきたものを併せると、27.3%になります。

当然、「残りは何?」ってことになります。実は残りの72.7%は「特発性」と言われています。つまり、原因が特定できないという意味です。プロ集団が見極めても、3分の2以上は原因検索が難しいことを表したデータと言えるでしょう。

風邪を引いたり、寝不足だったり、体調が悪ければ、蕁麻疹が出やすくなり、それも「特発性」に分類されます。蕁麻疹の出やすい人は、体調のよさが蕁麻疹を出ないようにカバーしてくれていると言えるかもしれません。

こんなことを書くと、医師の方も蕁麻疹の患者さんが来た時に「原因は分からないよ」と言っておけばいいのね、なんて思ってしまうかもしれません。結果的にそうであっても、問診をして原因検索は必要です。しかし、冒頭のようなケースでは、私ならアレルギー検査はしなかったと思います。問診をした時点でピーナッツアレルギーは否定できるからです。

これも以前書いたのですが、この親御さんは恐くなり、ピーナッツを与えられなくなってしまいました。私も食べられるものは食べさせてあげたいと思っているので、「食物負荷試験」を行い、何も症状がでないことを証明しました。まさに医師の不用意な診断が、患者さんに迷惑をかけてしまったケースでしょう。

食物アレルギーの定義は、食べて2時間以内にアレルギー反応が出るものを指しますが、皮膚に出やすく、蕁麻疹も食物アレルギーではよく見られる症状です。しかし、3~4時間してから蕁麻疹が出る、定義にそぐわないタイプもあるようです。

何でも食物アレルギーのせいにしようとするのは間違いです。今日の「特発性」の蕁麻疹が72.7%を占めること、しかし「アレルギー性」も5.4%見られることを念頭に置きつつ、冷静に原因を見極める努力をすることが大切と言えると思っています。