今年は夏の猛暑の反動か、秋に冷え込んだせいか、ぜんそくの調子の悪いお子さんがとても多かった印象です。
そんな状態がずっと続いていましたが、ここ最近は落ち着いてきたようです。しかし、感染症が多く、ずっと忙しい状態が続いています。
小児科医は感染症を診る機会が多く、「のどが赤い」にしても、それが溶連菌なのか、アデノウィルスなのか、「下痢をしている」にしても、それがロタウィルスなのか、アデノウィルスなのか、その他の胃腸炎なのかを見極める繊細さが必要だと思います。
名前がついている感染症は、症状が強いから名前がついているのであって、院内で簡単に調べることができます。症状が強いと、親御さんは心配します。原因を特定すれば、その不安は少しは和らぐことが多いと思います。
先日、熱が出たお子さんが当院を受診されました。のどが独特のブツブツした赤さがあり、「これは溶連菌だな」と思いました。熱はありましたが、診察時は下がっているようです。首を触ってみると、リンパ節がゴロゴロと触れます。「もう99%溶連菌だ」と確信を持っていました。
こんな時はのどを綿棒でこすって、それを検体として溶連菌かどうか迅速キットを用いて検査しています。溶連菌は小児科医としては、なるべく見逃してはならない病気です。なぜならキチンと治療しないと、腎臓病になってしまうこともあるからです。溶連菌には抗生剤という特効薬がありますので、そうならないように抗生剤を長めに内服して頂くのが常套手段です。
のどの所見が典型的でないと、私自身も「溶連菌だったんだ…」と思うこともありますが、特徴的なのどの所見なら、まず間違いなく溶連菌が出ます。今回は99.5%くらい自信がありました。今は、迅速キットでその場で答が出ますから、答え合わせができる訳です。ただ、インフルエンザの迅速キットもそうですが、100%の診断精度ではないと思いますが。
答やいかに。「陰性」でした。私の自信がもろくも崩れ去った瞬間でした。
いつも言っているように、診断を間違えば治療も間違います。根拠のある医療をやるためには、ほとんどの小児科が各種迅速キットを持っていると思いますので、それで裏付けを取り、正しく診断して、その診断に合った適切な治療を行うべきです。ウィルスが原因なのに、効果のない抗生剤を使うような根拠のないことはやるべきではないのです。
ちょっと話は逸れますが、私の診ているぜんそくのお子さんが、発熱とともに一気に咳が悪化し、ゼーゼーも少し聞こえるようになりました。熱の出た初日に診察し、その時は「風邪で悪化したのかな?」と思っていました。その後も熱が下がらず、咳で夜に起きる状態が続き、発熱3日目で再診して下さいました。
ここで血液検査で炎症反応を調べてみたら、いかにもウィルスが原因という値でした。少なからずの小児科医が「抗生剤の点滴をしましょう」なんて言うところでしょうが、私が血液検査をしたのは、正しい治療方針を立てるためです。ウィルスが原因であろうと診断していて、抗生剤を使うのは間違っているとしか言いようがないのです。
今どき、熱が3日以上続き、ゼーゼーが悪化する「ウィルス感染症」と言えば、私はRSウィルスくらいしか思いつきません。ここでRSウィルスを調べると、医院の損になると調べない医師が多いでしょうが、患者さんに正しい診断名を告げるため、RSウィルスは入院する確率も高く、患者さんに適切な注意喚起をするため、私の診断能力を上げるために、自腹を切ってRSウィルスを調べさせて頂くことにしました。案の定、RSウィルスでした。
地元の感染症情報で「RSウィルスが流行っている」とはまず聞きません。間違った情報を小児科医が流すべきではないし、それに頼らざるを得ない親御さん、園関係者は不幸だと思います。間違った理由が医院の経営的な側面が大きいのならば、地元のレベルが低いことを表していると思います。それを正すのが私の役目でもあると思っています。
さて、話は戻りますが、まず間違いないと思っていた溶連菌疑いのお子さんののどから溶連菌が検出されませんでした。これは、私にとっては一大事です。正直、ヘコみます。
親御さんは何も言っていなかったのですが、「薬は飲んでいないですよね?」とダメ元で聞いてみました。そうしたら、実は昨日近くの内科に行って扁桃腺の熱だと言われ、抗生剤を処方されたという事実が判明しました。ただ、出された抗生剤が錠剤だったため飲めず、つぶしてかろうじて1回は飲めた、ということでした。
溶連菌は抗生剤が劇的に効きます。それですべて納得できました。お母さんにしてみれば、よそで薬をもらったとは言いづらいと思ったのでしょうし、ほとんど飲めなかったため、治療の大勢に影響はないとお考えだったのでしょう。しかし、1回しか飲めなかった抗生剤が著効して、本来なら検出されるはずの溶連菌が出なくなってしまった、というのが真実だろうと思います。
これで私のヘコんだ気持ちも回復しました。似たようなのどをみたら、「まず間違いなく溶連菌でしょう」と言うことができます。溶連菌が出なかった理由を、諦めずに解明できてよかったと思っています。
先程述べたように、溶連菌にかかると腎臓病を防ぐことも大きなポイントです。中途半端に抗生剤を使って、腎臓病を引き起こしてしまってはマズいので、キチンと治療できます。
自分の過去の経験や知識をフルに使い、診断することが医師の役目でしょう。そのためには、問診しながら、病気を想定して考えながら診察し、正しい診断をつけることが大切です。自分の経験と考え合わせ、「おかしい」と思ったら、尚更キチンと問診し直すことも大切でしょう。今回の経験で、根掘り葉掘り聞く姿勢が大切だと思い知らされました。


