アレルギーの病気は、ぜんそくやアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどいろいろとありますが、それぞれ重症度も様々です。
ぜんそくも一回の入院もなく、年に数回軽い発作を起こすお子さんから、何回も重い発作を起こし入退院を繰り返しているお子さんもいます。アトピーも赤ちゃんの時にあったものの軽快してしまっているお子さんもいれば、全身の広範囲を先日も話した苔癬化した皮膚が覆っている場合もあります。食物アレルギーも卵アレルギーがあったものの、じきに食べられるようになるケースから、卵、ミルク、小麦、甲殻類、魚類、魚卵など様々な食品が食べられないケースさえあります。
重ければ重い程、適確な判断が求められ、それには専門的な知識と技術、経験も必要となります。研修先の福岡の病院で、様々なケースを経験させて頂きました。普通の小児科医が診たこともないような重症な患者さんを日本の第一人者の先生から直接アドバイスを頂きながら、学ばせて頂きました。それは、私の宝であり、支えにもなっています。地元には、アレルギー専門医はおらず、自分が何とかしなければならないということを自覚しているつもりです。
だいぶ前になりますが、ある小児の医院さんでぜんそくともハッキリと診断されておらず、具合悪くなっては点滴に何度も通院するように指示されていた患者さんが、一向に良くならないと当院を受診されました。
ぜんそくはかなり重症でしたが、そうとは診断されておらず、重症だと継続的に治療するようガイドラインで推奨されているのですが、全く守られていませんでした。本来、専門医に紹介されるべき患者さんでしたが、ガイドラインを守る方針ではないようで、点滴が繰り返されていました。残念ながら、ガイドラインを全く守っていない医師も存在しています。
それ以来、重症度に見合った治療を当院にて継続して下さっていました。結構重症でしたので、発作はかなり起こしづらくなっていました。ほぼ無治療の状態でしたから、継続的治療をすれば、症状が軽くなるのは当然のことです。
継続的に治療をしてみて、良くなれば治療が成功していることを表し、イマイチなら治療を強化しなければなりません。以前に比べればかなり良いのですが、時々夜に発作を起こし、病院に駆け込むこともあったようです。
開業医は、日中は一人で診療に明け暮れますので、夜間の対応は正直難しいのです。病院の先生にご迷惑をお掛けするのは本意ではありませんが、夜間に発熱などをきっかけに、重めの発作を起こしてしまうこともあるでしょう。
夜間の発作が目立てば、現在の治療が適切かどうか見直さなければなりません。これまで良くても、ここ最近発作が立て込めば、治療をステップアップする必要は出てきます。実際にこの患者さんも、治療を強化したばかりのところでした。
重い患者さんは、より印象深く、心配なので経過はよく覚えています。急に当院に来なくなったので、「どうしたんだろう?」と心配していました。2ヶ月程経って、ひょっこりと受診されました。ある先生が「自分が責任を持って診るから」と説得され、かかる医療機関を替えていたのだそうです。
私は、自分よりも専門的で、発作を起こさない治療をしてくれる先生がいれば、頭を下げてその先生に治療を委ねます。研修先や学会で学び身につけた重症患者さんへの治療法は既に行っています。日本の第一人者の先生に診てもらっても、同じような治療をするはず、ぐらいの治療はしておりましたので、しかも治療を強化したばかりでしたので、その効果をみていたところでした。
情熱を持って、しかも自分が責任を持つと言ってくれるのは、大事なことです。この患者さんは、もともとは重症なのに、前医で流れ作業的に治療とは言えない対応をされてきたので、「オレが何とかする」と責任を持って対応して下さるのは患者さんにとっては有り難いことでしょう。
ただ、私自身も地元で唯一の小児科で、アレルギー専門医として、このお子さんの10年先、もしくはだいたい高校を卒業するまで地元にいるでしょうから、場合によっては15年先を見据えて治療しています。今、当院で診ているその他のぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどで重症な患者さんも10年先、15年先を見据えて対応させて頂いているつもりです。上越市に医院を構えて、逃げも隠れもできないし、それくらいの覚悟はあります。
この2ヶ月やられていた治療をみても、私のやり方を踏襲したものでした。現在よりも症状を良くする秘策があって、「自分が責任を持って診る」と言ってくれているのかと思いましたが、そうではなかったようです。とても残念なことですが、手のひらを返したように「転勤があるから、継続的に診られない」と言われたそうです。良くしたいという気持ちはあったのだろうと思いますが、結局「何だったのだろう」と思ってしまいます。患者さんを混乱させてしまい、謝るべきだと思うのですが、そんな言葉もなく、また当院に戻ってこられた訳です。
重症な患者さんは、一度当院にかかると、そのまま当院に通院されることがほとんどだと思っています。今回のことを振り返ってみると、私にも何らかの足りない部分があるのだろうと思います。
ただ、ぜんそくに関しても、最新のガイドラインに沿った、お薦めの治療法を行っているところです。もっと症状を安定させたい、見落としはないだろうかと常日頃から考えながら対応してきたつもりです。先日の学会でも、このケースではないですが、日本の第一人者の先生に治療に困っているケースを相談してきたところです。
よく開業医は軽い患者を診て、病院は重い患者を診ると思っている方が多いと思いますが、アレルギーに関しては決してそうとは言えないと思います。全国のアレルギー専門病院では、治療の進歩に伴い、入退院を繰り返す重症なぜんそく患者さんが外来治療が可能となっているため、ぜんそくの発作による入院が激減しているのです。場合によっては、病院以上の重いケースでも当院で診ているのだと思います。
患者さんは、好きでアレルギーを持った訳ではないし、重症であれば、慢性に経過し、すぐには良くならないため、病気と付き合っていく姿勢が求められます。良い時も悪い時もあるでしょう。良い状態を保つようにしないと、より悪化してしまい、結局自分に跳ね返ってきますし、当然患者さんにもご迷惑をお掛けしてしまいます。長い目で見ながら、より安定させる方法を模索する姿勢が大切だと思っています。
10年先、15年先と書きましたが、小児ぜんそくは軽症なら8割治ると言われていますので、10年経たないうちに治ってしまう可能性も充分あります。しかし、重症の場合は2割しか治らないという報告もあります。ですから、場合によっては10年後、15年後にまだ私が診つづけているかもしれないのです。
恩師に教えられた通り、患者さんから逃げることなく、専門的な目で、10年先、15年先を見据えた治療が重症なアレルギー患者さんには求められていると思います。格好つける訳ではないですが、それが「患者さんに対して責任を持つ」と言うことだと思っています。


