小児科 すこやかアレルギークリニック

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うれしかったこと
2011年02月22日 更新

日々、クタクタになりながら診療しています。

その一方で「食物負荷試験」に精力的に取り組んでいます。開業医は、病院と違い患者さんが気軽に受診できるというメリットがあると思います。開業医も、勤務医に負けず劣らず食物アレルギーにそれなりに精通していなければならないと思っています。

卵アレルギーも微量で症状が誘発されてしまうお子さんもいます。一方、茶碗蒸しのような卵料理で蕁麻疹が出るお子さんもいます。何が違うかと言えば、“重症度”が違うのです。

よく卵アレルギーがあるから、卵の含まれる食材は全て食べてはいけない、と指導している小児科医がいます。中には、卵を含有するビスケットやパンを食べていたのに、アレルギー検査がクラス2と陽性なのを理由に、それさえも中止してしまう医師がいます。

これって“大きなお世話”だと思います。もちろん、日頃の摂取状況を充分に確認する必要がありますが、食べて何ともなかったものを中止する必要があるのでしょうか?。だったら検査をしない方が良かったということになると思うのです。

先程、重症度が異なると言いましたが、食物アレルギーで困っている患者さんが初診された時にこんな話をしています。

卵アレルギーの場合、最も重い患者さんは微量に含まれるものも全て除去する必要があるけれど、最も軽い患者さんは生卵だけ除去すれば良いし、卵アレルギーの赤ちゃんはよく聞くけれど、卵アレルギーの大人はまず聞かない。つまり、成長とともに治ることが多いと言える。治る場合は、卵を微量に含むものから食べられるようになる、と言っています。

そんなに重くなければ、知らないうちに微量に含むビスケットやパンを食べてしまっていることはよくあります。アレルギー検査の数値が高いから困るのでなく、食べて蕁麻疹や咳、嘔吐などアレルギー症状が出るから困るのです。食べて何ともなければ、「食べるな」という医師の指示は適切でしょうか?。間違いと言わざるを得ないと言えるでしょう。

過去に何度も加工品を食べていて、何も症状がでないことを親御さん自身が一番分かっているのに、それさえも食べられないとすれば、ストレスしか生まないと思います。食物アレルギーの専門医は「何でもいいから、食べられるものはないか?」と過去に食べて何ともなかったものを探そうとします。非専門医の場合は、言葉が適切かわかりませんが、臭いものには蓋をしようとします。つまり、アレルギーを起こす可能性があれば、一切を除去してしまいます。

確かに、医師の指示通りにして、何か症状が起きてしまえば、医師の責任です。何でもオーバーに除去しておけば、何も起きないため、何も責任を負わなくていい訳です。医療は命がかかわってきますので、医師が患者さんの方ではなく、自分の身を守ろうとしだしたら、何もできなくなります。

以前も書きましたが、卵焼きなどの加熱した卵料理を食べていたお子さんが、アイスクリームを食べてアレルギー症状を起こしたと当院を受診されたことがありました。アイスクリームは加熱しませんから、生の部分に反応してしまったのだろうと考えるのが無難だと思います。私はこのお子さんに、アレルギー診断書を書きました。加熱してあれば卵は食べてよく、アイスクリームやマヨネーズは避けて下さい、というものでした。

ところが、ある日、ケーキを食べたところ、蕁麻疹と咳込みが起きたそうです。最初、電話で「ケーキでアレルギー症状が強めに出た」と聞いた時は、「私の診断書が間違っていた。迷惑をかけてしまい、どうしよう?。」と正直焦りました。よく考えてみると、ケーキ生地も卵は使っていますが、加熱してあります。卵焼きを食べているお子さんが、ケーキで症状が出るなんて考えにくいはずです。

後に分かったのですが、ケーキを覆っている生クリームにメレンゲが入っていました。つまり、“生”の部分に反応してしまったのでしょう。私の診断書は、基本的には間違っていなかったと言えると思っています。それにしても、盲点を突かれた格好だと思います。

ここで考えたいのが、専門でない小児科の先生だとこのケースおいても、完全除去を指示するでしょうから、卵焼きまで食べていたものを、ビスケットなど微量しか入っていないものまで食べられなくなってしまいます。医師に言われてしまうと、その通りにせざるを得ませんが、冷静に考えると、おかしな指導であることが分かります。自分の家族にでも、同じような指導をしているだろうか?と思ってしまいます。

親御さんにとって“完璧”を求められるのは、かなりキツい話だと思います。微量でも反応してしまうくらいの重症なら、命と言うか、健康がかかわりますから、親御さんは“必死”になります。それは子どもの身を守るために致し方ないのですが、だからこそ、専門医は親御さんをいかに“必死”にさせないかを考えています。ところが、その必要のない軽少な患者さんにまで“必死”にさせているのが問題なのだと思っています。

私が考えるに、卵アレルギーに限った訳ではないのですが、「加工品をいかに食べさせるか?」がポイントだと思います。加工品でも「卵を食べている」という気持ちがありますので、親御さんは気持ちに余裕ができ、“必死”になる必要はなくなるのです。

例えば、ビスケットに含有する卵蛋白の量は、卵焼き1個の数百分の1だと思います。これだけ薄いと、アナフィラキシーの起こる確率も相当減らすことができ、親御さんの物理的と精神的な負担さえも減らすことができると考えています。さらに、最近は完全除去よりも、食べられるものは食べさせた方が、慣れていくのではないかとも言われています。

この加工品の使い方を私は福岡の研修先の病院で教えて頂きました。卵アレルギーの場合は、ゆで卵を使って負荷試験をするという全盛の時代に、恩師の先生は加工品を使って負荷試験をして、食べられる食材を増やしていくという手法を取られていました。

最近はこのやり方が見直されてきて、アメリカなどでも注目されていると聞いています。今回の食物アレルギー研究会でも、加工品を用いた「経口減感作療法」の演題も出ていました。私は恩師に先見の明があったと思っていますし、そういう先生のもとで学ばせて頂いたことを誇りに思っています。

実は、今回の私の発表も加工品を用いれば、親御さんの精神的負担を軽減できるという内容でした。また改めて触れるつもりでいます。

今回、私の恩師が食物アレルギー研究会の会長をされた訳ですが、会長講演がありました。45分の講演時間の中で、ともすると海外の論文を引用するケースが多いのですが、ほぼ自前のデータを使い、盛り沢山の内容の講演でした。食物アレルギーの第一人者の先生でも、45分間にあれだけの話をできる先生はいないのではないか?と思えるほどでした。

何がうれしかったかと言うと、その膨大なデータの中で、私が福岡で学ばせて頂いた時に出したデータを使って下さっていたことと、講演の一番最後のスライドに「共同研究者」として私の名前も入っていたことです。

恩師の病院は、毎年のように若い先生を国内留学先として受け入れ、専門的知識を身につけては、地元に帰り、アレルギー専門医として活躍していると思っています。そんな大勢の門下生がいた中で、私もその一人でした。

私の場合は、新潟県に食物アレルギーの専門医がいなかったので、尚更力を入れざるを得ず、福岡にいる頃にそれなりの知識を付けさせて頂きました。今回、恩師の会長講演を聞いて、私がまだ足下にも及んでいないことがよく分かりました。勉強不足であることを思い知らされました。それでも、共同研究者として名を連ねさせて頂いたことは、やっぱりうれしいことです。

逆に、恩師の名を汚さぬよう、身の引き締まる思いでもあります。昨日も当院から70キロ離れた街からおかしな指導を受けてきた食物アレルギーの患者さんが受診されました。敢えて言えば、正しいことを見つけ出すのが困難な程のレベルでした。こんな患者さんを減らすため、恩師の門下生として新潟の食物アレルギーの医療レベルを少しでも向上させていかなければいけないと思っています。

PS:今年10月に開催予定の当院の独自のアレルギー啓発イベントである「すこやか健康フェア」は恩師を招いて、食物アレルギーの講演をして頂きます。そろそろ場所の確保など動いていかなくてはなりませんが、新潟市での開催を予定しています。ご期待頂きたいと思っています。