小児科 すこやかアレルギークリニック

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案じています
2011年02月24日 更新

昨日の午後は、中越までアレルギーの講演に行ってきました。

食物アレルギーだけでも1時間以上話すことがあるのに、いまだに誤解の多いアトピー性皮膚炎やぜんそくも正しい理解を持って頂きたかったので、結局予定の時間をオーバーし、最後は駆け足になってしまいました。すみません…。

小学や中学になっても、アトピーやぜんそくが治っていなければ、一生の付き合いになるかもしれません。食物アレルギーもその点は同様かもしれません。ただ、ソバや甲殻類などは、本人が分かっていて、食べない限りは不具合は起こりません。しかし、アトピーは痒くて眠れない、ぜんそくなら呼吸困難で眠れない、なんてことが起こるので、適切に治療されていなければ(その可能性が高いのですが)、“医者を替える”のが一番の対応だったりします。

実際に、ぜんそくで入退院を繰り返していたお子さんが、当院を受診し、治療方針を変えたら、入院をしなくなったなんてことはよくある話です。“医者を替える”のが一番の“治療”だなんて、自分でいうのも何ですが皮肉なものです。

講演が終わり、最後に質問をお受けしたのですが、あまりレベルの低さに驚きました。ほかにもこのような対応を指導されている患者さんがいらっしゃるのなら、即刻“医者を替える”選択をして頂きたいと思っています。

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」という病態があります。食物アレルギーは乳幼児に多く、治りやすい傾向にあります。しかし、中学や高校になって、給食後の昼休みや体育の授業で運動することで、アナフィラキシーを起こしてしまう病気です。

つまり、アレルゲンを食べて、運動するという二つの組み合わせで起こります。対処法としては、アレルゲンを食べたら、運動しないこと、アレルゲンを食べても運動しない限りは症状がでないので、食べた場合は、運動を2時間ほど避けるという対応が取られます。

相談に上がった患者さんは、某市の大きな病院にかかっていたそうです。名前を聞いただけで、信頼されてしまうような病院です。

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」と診断されていたのですが、養護の先生の話を聞いていて、よく分かりませんでした。主治医が精査を諦めていて、予想するに医師自身がよく分かっていないからです。

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」は原因が分からないから、運動をしないようにするしかない、食後1時間は運動をしないようにと指導されていました。それが途中から、1時間でなく4時間は運動を避けなければならないと“方針転換”されたそうです。

4時間と言えば、朝食を食べてそれだけ時間を空けると午前中は、給食を食べてだと午後も体育をできません。実質、何もできないことになります。当院には、他の医療機関での対応に疑問を持った患者さんが受診されることが多いのですが、こんな対応をされているケースは初めてです。新潟県は食物アレルギーの専門医がほとんどおらず、レベルが全国でも最低レベルだと思っています。まさに新潟のレベルの低さを象徴する事例だと思っています。

精査という努力もせず、専門医に相談もせず、これをお読みになったアレルギーの心得のある親御さんでも、そのおかしな指導に愕然とするような対応と言っていいでしょう。

確かにアナフィラキシーショックを起こす可能性がある場合は、専門医でも二の足を踏んでしまいそうになることもあります。しかし、私も含めてアレルギー専門医は「食物負荷試験」を行っており、アナフィラキシーを起こすかもしれない危険を冒してまで、患者さんに食べて欲しいと願っています。食物依存性運動誘発アナフィラキシーはショックに至る可能性もあるため、少し前までは負荷試験はやらない専門医も多かったのは事実です。

しかし、入院という形で疑ったアレルゲンを食べて、院内で運動負荷をかけて、アレルギー症状を再現させることで、原因食品を特定できます。そうすれば、その食品だけを避けていれば、運動はどれだけやっても構わないことになります。

負荷試験というアナフィラキシーの危険を冒してまで、原因を精査することにより、患者さんは何に気をつけたらいいか分かるのです。今のままでは、気をつけるものさえ分からず、常に不安に怯えながら、何もできないということになってしまっています。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの場合、負荷試験をやっても、症状が再現されず、原因が特定できないこともあります。専門病院の場合は、アスピリンという薬を併用することで症状が誘発されることもあるため、被疑食品を食べて運動負荷をかけて何も起きなければ、更にアスピリンを追加して症状が誘発されないか、調べることもあります。そこまでやるか、と言っていいくらいやっていますが、結果的にそれでも分からないこともあると思います。それはそれで、患者さんに申し訳ないと思いつつ、仕方ないのだろうと思っています。

専門医は患者さんの生活の質(QOL)を下げない努力をしています。何も努力せずに、運動するなとはまず言いません。今回、患者さんの方がその指導をおかしいことに気付いていなかったようですが、もしかしたら大病院の先生の言うことだから、間違うはずがないと思っていたのかもしれません。

時々言っていますが、大病院だからレベルの高いことやっているとは限らず、開業医だからレベルが低いという訳でもありません。結局、その医師がどれだけ真面目に、患者さんのQOLを下げないように、一生懸命になっているかでしょう。有名小児科なんだけれど、ビックリするくらいおなしなことをやられていることも目にしています。

小児科医は、扱う分野が広いので、全部分かる小児科医なんてこの世に存在しません。大病院とは言え、分からなければ専門医に相談せずに、患者さんのQOLを極めて大きく下げているのは許される行為ではないと思います。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは確か数万人にひとりの割合だったと思いますが、大病院と言うことで、重症な患者さんが集中するかもしれません。同じように指導されている患者さんが他にもいる可能性があるのです。それを案じています。

一方、今回の指導をした医師も、たまたまなのかもしれませんが、他の分野に関しても分からないものを専門医に相談することなく、患者さんのQOLを第一に考えていないような対応をしているのなら、将来を案じざるを得ません。私も小児科医としては、まだまだ未熟で学ぶべきことは多いので、この言葉は私自身にも向けているつもりです。実際に、自分の治療や指導が患者さんを苦しめる結果になっているのではないかと、いつも不安は持っています。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、普通の食物アレルギーよりは重篤な症状をきたすことが多いため、こんなような極端な、非現実的な対応がなされていることが多いのかもしれません。食物アレルギーの専門医として、そんな指導を放置する訳にはいきません。

当院のホームページを読んで下さっている養護の先生も少なくないようですし、おかしな対応をされていると感じたら、メールでいいですから相談して下さい。私が対応することで、理不尽な指導から脱却できるのだとしたら、それは意味のあることだと思っています。