小児科 すこやかアレルギークリニック

クリニックからのお知らせ

病院からのお知らせ

便利になったが
2011年02月25日 更新

以前、上越市のインフルエンザの流行状況を知るには、上越市のホームページをみれば分かると書きました。

市内の小学校、中学校の学級閉鎖の状況が一目で分かります。それによると、流行が小さくなっていることが分かります。柿崎や板倉の方でインフルエンザのB型の流行がみられ、だいたいA型の流行の後にB型がくることから、B型が拡大しないことを願っています。

私が小児科医になった頃は、インフルエンザの診断キットがなかったため、流行期に咳や鼻症状の他に、高熱が続けば、インフルエンザを考え、比較的インフルエンザに見られやすい節々が痛い、筋肉痛などの症状もあれば、ほぼ間違いない、と診断していました。熱も4~5日続くこともあり、「しばらく熱が続くので覚悟しておいて下さい」なんて説明していたように思います。

それが「シンメトレル」というパーキンソン病の治療薬がインフルエンザにも有効とされ、副作用が時折みられるものの、使われるようになりました。インフルエンザ迅速キットが開発され、いまやどの医療機関でも鼻水を検体として、短時間でインフルエンザかどうかを調べることができるようになりました。

更に、タミフルやリレンザという一般的に副作用も少ない特効薬が開発され、特に昨年や今年の新型インフルエンザには極めて有効でした。当院で診ているインフルエンザの患者さんのほぼ全員が1~2日で解熱してしまい、以前言っていた“4~5日は覚悟”というのは、もはや4~5日もあれば、園や学校に復帰できるようなレベルに来ています。

当院は地元では歴史が浅く、アレルギーの患者さんが多いため、アレルギーのないインフルエンザ単独の受診はあまりありません。高熱が続けば、熱性けいれんも起こしやすいのですが、今年はけいれんで担ぎ込まれる患者さんはほとんど見かけませんでした。そういう意味では、だいぶ“楽をさせてもらっている”のだと思います。

楽と言うと聞こえはいいですが、“横着している”と言ってもいいのかもしれません。といいますのは、インフルエンザの流行期に熱があれば、どの医療機関でも鼻に綿棒を入れ、インフルエンザを調べていると思います。インフルエンザの反応が出れば、タミフルやリレンザを処方し、出なければ「風邪でしょう」と風邪薬が出されるという光景が見られているのだと思います。

冷静に考えてみると、医者じゃなくてもできることです。迅速キットで陽性、陰性を判断して、抗インフルエンザ薬を出すかどうかをしているだけです。中には、診察もせずに、医院のスタッフに鼻水を先に調べさせて、「インフルエンザでした。薬を出しておきます。」と言ってそれでおしまい、という医院さんもあるようです。確かに、必要最小限のことはしているでしょう。タミフルやリレンザを使えば症状は改善しますから。

小児科の場合は、「それでいいんだろうか?」と思います。溶連菌はのどの壁に綿棒を押しあてて、それを検体として調べます。インフルエンザは鼻の穴に綿棒を深く入れるのですが、のどの検査と違い、これがまた結構痛い。あるお子さんは「鼻の注射だ」と言っており、上手く言ったものだと感心させられます。

当院の場合、子どもの痛がる処置はなるべくしない、ということをポリシーとしています。そうしない方が医院の経営に有利だと言うことは知っています。あからさまな医院さんもありますが、反面教師としています。

上越には「点滴待ち」という言葉があるそうです。点滴をする患者さんの人数が点滴スペースの人数を上回り、点滴をするのに医院内で待たなければならないそうです。小児科でも1回吐いて、1回下痢しただけで「点滴が必要です」なんて方針のところもあるようで、「そりゃスペースは足りなくなるわな」と思います。

来院した発熱の患者さんを、片っ端からインフルエンザを調べ、「インフルエンザじゃなくてよかったね」と言っているとしたら、それでいいのだろうかと思ってしまいます。

今年は胃腸炎や溶連菌、アデノウィルスで熱が出ている患者さんが多かったです。症状や診察で「インフルエンザじゃないな」と分かったりします。そんな子に痛い鼻の検査は必要でしょうか?。無駄に痛い思いをし、無駄に医療費が使われているという現実がそこにはあると思っています。

当院の場合は、基本的には診察してからインフルエンザの検査をするかどうか、考えています。例えば、突発性発疹で発熱している赤ちゃんにインフルエンザの検査をしてしまうことも有り得ます。絶対とは言えませんが、赤ちゃんは一人でどこにも出かけられませんので、家族にインフルエンザがいなければ、インフルエンザをもらいようがないと思います。その時点で可能性はかなり低いと言えます。

また、インフルエンザは咳や鼻症状がだいたい見られますので、発熱だけなら「インフルエンザじゃない可能性が高い」と考え、「じゃあ何だろう?。」と考えています。

検査自体は簡単ですが、子どもに痛い思いはなるべくさせたくない、というポリシーは持っているつもりですので、鼻の検査はなるべくしないようにしています。医療は余計なことをすれば利益が上がるシステムになっていますので、安易な方向に流されないようにしているつもりです。

先日、「○○医院さんに通っていたが咳がよくならない」という患者さんが受診されました。問診の時点ですぐにぜんそくと分かりましたが、某医院さんでは「風邪だ」と言われており、少し長引くとすぐ点滴になっていたそうです。皮膚もガサガサして一見してアトピー性皮膚炎でしたが、これも適確に診断されておらず、保湿剤しか出されていませんでした。症状が良くなっていなくても、いつも同じ薬が処方され、病気の説明も全くと言っていい程なかったそうです。「これって医療だろうか?」と思ってしまいます。

インフルエンザの患者が何十人来たという情報も大事かもしれませんが、見方によっては、迅速キットに診断してもらっているだけです。楽をさせてもらっている分、他の分野にも頭をフル活用して、「なぜ咳が長引くのか?」、「これだけガサガサして痒がるのはアトピーがあるんじゃないか?」と悩むべきでしょう。咳=風邪、湿疹=乳児湿疹なんて、決めつけているようにしか思えないこともあるのですが、これは私に向けた言葉でもあるのですが、診療や経営で安易な道に進むと腕がどんどん落ちていくと思います。

私も早いもので小児科医になって20年近く経ちます。いまだに分からないことが多く、変な言い方ですが、いや、ある意味真実でしょうが、患者さんから勉強させて頂いています。診療していて、毎日が結構“新鮮”に感じています。

先日も食物アレルギー研究会に参加してきましたが、今週来られた食物アレルギーの患者さんに「この前の研究会でこんな話が出たよ」とか「いま専門病院では、こんな研究がされているんだよ」など最新情報を話すことができます。

細かいものまで含めると、“誤診”をしない医者はいないでしょうが、誤診だらけで患者さんの期待を裏切ることだけはしたくないと思っています。今の医療は便利になってきてはいますが、「患者さんのために考えること」を止めないことが大事なのだろうと思っています。