小児科 すこやかアレルギークリニック

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発作じゃないんですけど
2011年03月08日 更新

先日、ぜんそく発作の治療をされている患者さんが受診されました。

話を聞いてみると、キプレスという抗アレルギー薬の他、アドエアという気管支拡張薬の入った最強の吸入ステロイド薬も出されており、なおかつ点滴が繰り返されていました。しまいには、プレドニンというステロイドの内服までもが連用されていました。

親御さんは、強い薬がこれでもかと続けられていることに不安を覚え、当院を受診されたそうです。知り合いのお子さんが当院でぜんそくと診断され、治療して改善していると聞き、いつか受診したいと思って下さっていたそうです。

それだけの治療をしていて効果がないとしたら、よほど重症か、ぜんそくじゃないかのどちらかです。「えっ!?」と思われるかもしれませんが、そりゃそうでしょう。フル装備以上の薬を使って良くならなければ、診断が間違っている可能性も考えなければならないはずです。

診察に入ってきて、すぐに「こりゃ、ぜんそく発作じゃないな」と気付きました。多分、当院のスタッフも医師免許は持っていませんが、気付いたはずです。咳が痰絡みでなく、作為的と思われる“咳”だったからです。

以前もこんなことがありました。ある医院さんで、ぜんそくの診断でフルタイドという吸入ステロイド薬が処方されており、それでも改善しませんでした。しまいには麻薬系鎮咳薬であるリン酸コデインという薬まで処方されていました。麻薬系と言うと恐いと思うでしょうが、激しい咳の時に使うことが許可はされています。ただし、適応はかなり狭いものと言えるでしょう。

結局、この患者さんも一向に良くならないため、当院に鞍替えして受診されました。この時も当院のスタッフでさえ、「ぜんそくの咳と違う」と気付いていました。医師免許がなくても、正しい判断はできるのです。

更に言えば、7日から一時休止していた「食物負荷試験」を再開しました。食物アレルギーは、アレルギー検査のみで食べられる・食べられないの判断がなされていることが多いのですが、当院のスタッフは患者さんにもかなり適確なアドバイスができるようになっています。一部ではありますが、普通の小児科医のレベルを凌駕していると言えると思います。

先の麻薬系の咳止めを出されていたお子さんの診断は、「心因性咳漱」でした。お子さんが、ストレスを抱えており、それを改善しない限りはなかなか治らないのです。いくら麻薬系の薬を使おうが、吸入ステロイド薬を使おうが、効くはずはないのです。逆に、効果がないから、ぜんそくという診断が間違っているのではないかと気付きべきでした。

冒頭の患者さんも、明らかにぜんそく発作とは思えない“咳”でした。先の患者さんよりは、かなり濃く、強い薬が使われていました。親御さんの方が不安になり、「総合病院に行った方がいいですか?」と聞いても、「いや、うちでいい」と言っていたそうです。

私がその先生の立場なら、自分の知識をフル活用して症状が改善していなければ、専門医に紹介したと思います。治療をみていると、やる気は伝わりますが、私のよく言う「自分の診断や治療が間違っているんじゃないか」という考えは浮かばなかったのだろうかと思います。私もつい先入観が邪魔をすることもありますが、アレルギーには良くならなければ、「押したり、引いたり」することが必要だということは知っているつもりです。

親御さんから話を聞いても、ぜんそく発作と診断するには無理があると思います。ただ、発作には至っていませんが、ぜんそく自体はあるようで、ステロイドの内服や点滴、アドエアは必要ないと判断しました。心因性咳漱なり、別の原因を考えるべきでした。

今回のケースは、元主治医の知識を超えていたと思われ、専門医に紹介すべきだったと思います。紹介して下されば、私がどう考え、どう治療したかをお教えすることができたと思いますが、最後までそうされることはありませんでした。親御さんは、当院に今後の治療を委ねて下さいましたので、私の方針で治療をさせて頂こうと思っています。

患者さんにしてみれば、もっと早く受診すれば良かったとお思いでしょうし、私ももっと早く治療をさせて頂きたかったと思っています。残念ながら、私がアレルギー専門ということはご存知なはずなのに、紹介がない状態が続いています。患者さんも専門医が診て、速やかに適切な治療に移ることを希望されるはずです。

「とにかく患者さんを良くしたい」という強い思いがあれば、専門医に紹介するという選択肢は当然あるはずなのですが、ちょっと難しいケースはこういうことが繰り返されている可能性があります。途中で鞍替えして、当院を受診して下さればいいのですが、その先生の治療がベストと信じきって、通い続ける患者さんもいらっしゃることでしょう。

「アレルギーくらいオレだって診れる」と思っている小児科医は多いと思いますが、こんな風に患者さんの判断で医療機関を替えてしまうと、自分の何が悪かったか分からないまま、場合によっては、似たようなケースに遭遇すると、また同じ過ちを繰り返してしまうのです。

私自身はその先生に「発作じゃない」ことを伝えたいのですが、紹介でもないので、それができずにいます。また、患者さんには診断が違い、治療も異なることを説明せざるを得ないのです。

私の場合、専門外の分野で分からないことがあると、すぐにその道の専門の先生に紹介状を書いています。患者さんにベストな治療をできる医師が対応するべきだし、「自分にも診れる(はず?)」と無責任に引っ張ることで、医院の評判を落としてしまうことを嫌うという側面も正直言ってあります。患者さんが速やかに良くなってくれれば、当院の患者さんが一人減ろうが、二人減ろうが関係はありません。上手くいかなければ、逆に医院の評判を大きく落とすことになってしまうと思っています。

小児科医の診なければならない分野はとても広く、各医師にはそれぞれ得意分野がある訳ですから、知恵を寄せ合って地域医療に貢献していくことが地域の医師のやるべきことでしょう。プライドなり、経営方針なりが邪魔しているのかもしれませんが、それは患者さんには全く関係のないことです。連携のない現状は、寂しい限りだと思っています。