インフルエンザの流行がだいぶ終息してきたようです。
例年は1月からA型が大きく流行し、春にB型が流行るという図式ですが、今年もだいたいそのような感じだと思います。パラパラとみられますが、これから暖かくなるため、大きな流行には至らないでしょう。
そんな中、家庭内でインフルエンザが発生し、もらってしまったお子さんが当院を受診されました。いわゆる季節型のインフルエンザは、タミフルという特効薬に耐性を持ったウィルスが混じります。早期に発見し、治療しても熱が3~4日続いてしまう、ということがあります。今年のA型は新型がほとんどのようで、スレておらず、タミフルなどの抗インフルエンザ薬を使用すると、1~2日で解熱してしまいます。
この患者さんはぜんそくもあり、日頃から当院で治療しています。インフルエンザはぜんそく発作を誘発しやすい有名な感染症です。連休前にインフルエンザのA型と判明しましたので、タミフルではやいとこ治療してしまおうと考えました。
当院の今シーズンのインフルエンザA型を治療した印象として、99%は1~2日で熱が下がっていましたので、当然この患者さんもそうなるだろうと思っていたのです。当院はぜんそくの患者さんを多く診ていますが、インフルエンザにかかり、一部咳が悪化するお子さんもいましたが、熱がすぐに下がるので、ほとんどが大して悪化せずに済んでいました。
こういう治療の“手応え”というか、印象ってとても大切だと思います。インフルエンザと診断し、ガッカリする親御さんに対し、治療の経過の目安も話すことができます。この患者さんにも、先程述べたように、じきに解熱すること、ぜんそくは悪化しないことが多いことを説明していました。
しかし、です。この連休は大変だったそうです。熱が下がらず、ゼーゼーも言ってしまいました。想定外のことだったのですが、すんなり改善してくれなかったのだそうです。
親御さんが心配されるのは当然です。申し訳ないですが、当院は休みだったので、他の救急のところで診てもらったそうです。その施設も混雑しており、医師も気が立っていたのでしょう。聴診した上で、ゼーゼーも聞こえず、「これくらいの症状で連れてきて…」という感じだったそうです。「レントゲンは撮らなくていいですか?」という母の問いに「必要ない」と言ったそうです。
状況的に熱が続き、ぜんそく発作も合併していれば、肺炎が心配になります。インフルエンザだけなら、タミフルが効いてくれるはずなので、「何でタミフルが効かないのだろう?」と考える必要があります。ただ、これを考えるのは主治医の役目であり、救急の場だとこんなケースでは入念に聴診をし、重症患者を見逃さないことが大切だと思います。
連休明けに当院を受診され、連休の状況を報告して下さいました。私にはタミフルを使っても1~2日で解熱しないことがとても引っかかっていました。この患者さんに関しては、A型はA型でも季節性なのかもしれませんが、兄弟はすんなり解熱しており、やはり新型の可能性が高いのです。
では、「この熱はインフルエンザのせいじゃないのでは?」と考えるのが自然です。肺炎がないか、と背中に聴診器をあてた途端に異常な音が耳に響きました。
一般論として、肺炎があると息を吸った時に雑音が聞こえ、ぜんそく発作の際には息を吐いた時に音が聞こえます。明らかに背中の右側にクラックルという肺炎などでよく聴かれる異常音が聞こえます。お母さんにも聴診器を手渡し聴いてもらうと、すぐに判別できる程でした。
インフルエンザで肺炎に至ることは、あまりないという印象を持っています。乳幼児や老人がインフルエンザにかかり、体力が弱ったところで、別の細菌感染を合併して肺炎に至ることはあるでしょうが、このお子さんは体力のある小学生です。
肺炎球菌のワクチンは今は休止されていますが、この肺炎球菌も名前の通り、肺炎を引き起こします。ただ、大きくなってくると肺炎球菌よりは、マイコプラズマなどが原因菌としては多いはずです。マイコプラズマもぜんそく発作を誘発しやすいことで有名ですし、レントゲンもマイコプラズマでよく見られるような所見でした。
地元ではマイコプラズマの採血が頻繁に行われていますが、私はしませんでした。当てにならないからです。
よく地元の小児科で半年に3回もマイコプラズマと診断され、その都度点滴に通わされたと聞きますが、小児科医の常識として何度もマイコプラズマを繰り返すことは考えづらく、検査が間違いであることに気付くべきでしょう。
ちなみに、当院では、ほとんどのマイコプラズマに点滴をする必要性すら感じません。内服の抗生剤がとても有効だからです。日本の保険診療では点滴をした方が有利なので、わざとしてるんじゃないかとしか思えないことも多々あります。小児科医は、子どもの嫌がる点滴は避けるように努力すべきなのに、点滴待ちという言葉があるのを親御さん達にもおかしいと思って頂きたいのです。
上越はマイコプラズマ=点滴と思っている患者さんが何故かとても多いので、是非とも“点滴なし”で治そうと思っています。医師の都合のみで治療が決められるべきではありません。
私がアレルギーや呼吸器にこだわっていることもあるのでしょうが、繰り返しになりますが、今回のようにタミフルを使っているにもかかわらず、熱が続くのは変です。また、ぜんそく発作をほとんど起こさなくなっていたお子さんが、発作を起こした時は呼吸器感染が考えられ、しかも熱が続けば肺炎を疑わなければなりません。レントゲンの問いに対し、「撮る必要がない」と断定的なことは言わない方がよかったでしょう。
筋道立てて考えると、おかしな点に気付き、それが正しい診断や治療に結びつくことが多いのです。それを再認識されられましたし、親御さんにも聴診して頂き、学んで頂けたと思っています。


