春休みは、連日のように「食物負荷試験」が入っています。
食物アレルギーの診断書の提出を求められる時期でもあり、こういった時にしか受診されない方もいらっしゃるのですが、その時点におけるベストの診断書を書くのがプロだと思っています。
以前、卵を食べて症状が出たことがある、と言ってもそれが今はどうか分かりません。今は治って、除去する必要がないかもしれません。「食べないように」と言うのは簡単です。子どものことを考えると、「何か食べられるのでは?」と貪欲になるべきでしょう。
食物アレルギーも軽いお子さんは、どんどん食べられるようになります。ただ、重症だとなかなか難しい。先日、負荷試験を行ったお子さんもそうでした。
卵アレルギーがあり、以前、カステラを負荷してみたところ、アレルギー症状が出てしまいました。それから結構時間が経ったので、“リベンジ”を図ろうと、再度カステラを選びました。
最初は良かったのですが、徐々に発赤が出て、更には咳込みが出てきました。聴診器で聞くと、軽くゼーゼーと言っています。この状態は専門医の間でも若干意見が異なるようですが、一応アナフィラキシーと言えると思います。
気管支拡張薬の吸入と抗ヒスタミン薬の内服で改善してくれれば良かったのですが、抑えきれず、これ以上悪化してもらっても困るので、アドレナリン注射を行うことにしました。
「食物負荷試験」は食べて何ともないことを証明する検査ではありますが、一方で今回のように症状を誘発してしまうこともあります。その時に内服薬、吸入、注射薬などを使用することになるのですが、誘発された症状への対処法を親御さんにみて、学んでもらうチャンスでもある訳です。今回は、ちょうどお母さんだけでなく、お父さんもついてきて下さっていました。
新潟県は、食物アレルギーの専門医が極めて少なく、アレルギー症状を起きた時に、アドレナリンを適切に使用されることがかなり少ないと言わざるを得ません。だいたい、点滴をして、ステロイドを投与する形になります。病院の場合ですと、入院を勧められることも少なくありません。
専門医はどうするかというと、早めにアドレナリン注射を行います。その圧倒的な効果を知っているからです。医院で使う薬はアドレナリンですが、同成分を患者さん自身が速やかに注射できるようにしたのが「エピペン」です。
医師ですら、こういった薬を躊躇する傾向があります。自分の子どもを守る意味でも、親御さんがアナフィラキシー時の対応を、日頃からシュミレーションしておく必要があります。負荷試験で予想外に症状が誘発された時が、どう使い、薬がどう効くかを学んで頂くいい機会になります。
アドレナリンを筋肉注射させて頂きましたが、親御さんには時間的経過をみて頂くよう、お願いしていました。
症状の改善は、数分で起こりました。5分以内でした。注射の時点で、体の所々に蕁麻疹が出てきていましたが、消失しはじめました。ご両親共に「こんなに効くんですか」と目を丸くしておりました。こういった症状を起こさないに越したことはありませんが、これも現実なので、実際にお子さんでどのように効いたかを冷静に見ることができたのは、今後に活かせるはずです。
これまではエピペンを持っていなかったのですが、少量を含む卵の加工品でアナフィラキシーに至ったので、今後のことを考えるとエピペンを持って頂いた方がいいと考えました。
日本有数の専門病院に通う患者さんであっても、特にお子さんが小さい場合は、エピペンを持っていても、アナフィラキシー時に使うことをためらってしまい、なかなか使えないと聞いたことがあります。専門でない医師でもそうなので、当たり前と言えば当たり前です。今回のように、一度でも目の当たりにしていると、適切なタイミングで使用できるのかなと思っています。エピペンを持っていても、必要時に使わなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
エピペンを買って頂く時に、メーカーの用意した説明のビデオを観て頂きますが、こういう症状の時に使うとどうなるということが示されておらず、その点で分かりにくいと思います。今回のように、ご自分の目で注射前からの経過を見られるケースも多くないはずですが、いつ起こるか分からないのがアナフィラキシーです。今後に役立て頂けるものと信じています。


