昨年は、いろいろとイベントがあり、忙しかったでした。決して、今年がヒマという訳ではありません…。
新潟は食物アレルギーに関しては後進県だと言っています。恩師や日本の第一人者のいる都道府県はかなり進歩していますが、新潟はまだまだと言わざるを得ない状況です。
そんな中、昨年5月にエコライスさん、アレルギー支援ネットワークさんのご協力のもと、長岡市でプレアレルギー大学が開催されるに至りました。「新潟でこんなイベントが行われるなんて」と夢のようでした。それを皮切りに、今年から新潟でもアレルギー大学が開催されると聞いています。
新潟県には食物アレルギーの専門医がほとんどいないため、私に白羽の矢が立ち、そのプレアレルギー大学で食物アレルギーについて講師を務めさせて頂きました。それが地元のテレビ局の目に留まり、当院を取材して頂くに至りました。昨年5月末のことです。
当院の取材の目的は「食物負荷試験」でした。テレビ局の方も食物アレルギーの子にアレルゲンを食べさせるなんて聞いたこともないとおっしゃっておりましたが、この場でいつも言っている通り、それが成長期のお子さんにとって「必要最小限の除去」にするために必要なことなのです。
専門医の間ではスタンダードな検査であっても、新潟では専門医がほとんどいないため、検査自体が知られておらず、専門でない先生はそんな検査があることは患者さんには一言も伝えないため、新潟県ではほとんど広まっていないのが現状です。患者さんには冗談めかして「朝鮮半島の某国のように情報操作がされている」と言ったりしています。
取材は1年近く前のことですが、当院で診ている卵アレルギーのお子さんの負荷試験の様子を取材して頂きました。私としては、そのお子さんが卵のアレルギー検査がクラス3と陽性でしたが、卵焼きを食べさせてみて、“卵アレルギーなのに卵焼きが食べられた”というところをテレビカメラにおさめて欲しかったのです。それが放映されれば、県内の食物アレルギーの子を持つ親御さんに少しは勇気と希望を届けられると踏んでいました。
最初は順調でしたが、最後の最後で脇腹に蕁麻疹が出て、少し咳き込み始めました。症状が軽かったので、抗ヒスタミン薬の内服と吸入で症状が治まりましたが、その様子を取材される結果となってしまいました。決して事実をねじ曲げてはいけず、それはそれで現実だったのですが、私の目論みはやや外れてしまいました。でも新潟のテレビで「食物負荷試験」が放映されるのは、史上初のことと思いますので、有意義であったと思っています。
そのお子さんの負荷試験を表面的に判断すると、卵焼きを食べて、蕁麻疹と軽い咳込みが見られたので、卵焼きは食べてはいけないという結論になります。しかし、冷静に判断してみると、一口目でボンと強い反応を起こした訳ではなく、1個食べ切ったあとに徐々に先の症状が出てきたのです。卵アレルギーを克服しつつあるとみるべきです。
私はリベンジの機会を狙っていました。1年近くたったら、もう一度卵焼きで負荷試験をして、何とか園で他の子と同じような食べ物を食べさせてあげたいと思いました。食物アレルギーの診療をやっていると、医師や親が「食べてはいけない」と繰り返しているうちにお子さん自身が“食べてはいけないもの”と思い込み、精神的に食べられなくなるというケースはたまに経験します。親御さんにしても、医師の言いつけを守っていてそうなるのは本意ではないはずです。物心がつく前に、何とかしたいというのが私の考えです。
そして、先日リベンジの機会を得ました。親御さんと相談して、卵焼きという同じ食材を用い、負荷試験を行ったのです。
あっさり書いてしまいますが、結果は成功でした。
1年前と違い、何も起きませんでした。昨年の卵焼き1個を食べ切ってからの症状が出たのは、やはり卵アレルギーが治りかけていたことを表していたのだと思っています。晴れて“リベンジ達成”です。あとは家でも何度か食べて頂き、食べられるという自信を深めて頂くだけです。
自分で言うのも何ですが、私が診ていなければいつ食べられるようになったか分からないし、もしかしたら私が危惧しているように、親御さんが「食べちゃダメだよ」と繰り返しているうちに、体が精神的に受け付けなくなってしまっていたかもしれません。
昨年の負荷試験でのアレルギー症状が出たのを「かわいそうだ」、「負荷試験なんてしたからだ」なんて言う同業者もいるかもしれませんが、昨年の症状が出て、親御さんも卵料理は除去しなければならないことを理解して頂けたし、今回の負荷試験成功につながったのです。食物アレルギーの治療目標である「必要最小限の除去」を実践できたのではないかと思っています。
私は成長期であるこのお子さんには、卵焼きやオムレツ、炒り卵入りのチャーハンなどモリモリ食べて欲しいと思っています。


