小児科 すこやかアレルギークリニック

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時代の変化
2011年04月12日 更新

週末、福岡に行ってきました。

上越市からだとほくほく線で越後湯沢まで出て、そこから上越新幹線に乗り、東京駅まで出ました。

当地は、やっと春めいてきて、桜の花もつぼみになってきたようです。今の時期が一番地域差が大きいのかもしれません。何がかというと、越後湯沢はスキーで有名かと思いますが、ほくほく線で越後湯沢駅に近づくにつれて辺りは一面雪の原になりました。線路沿いはまた1メートル程の積雪があります。先日も小千谷の方が受診された時に「うちの周りは、まだ雪が1メートル程ある」とおっしゃっていましたが、本当だったんですね…。

新幹線に乗り換えて、群馬県に入ると、また春になり、埼玉辺りから桜が満開になりました。東京は満開のピークが過ぎたようです。飛行機で福岡に着くと、やはり桜は散り始めていました。上越から福岡に強行軍で出掛けた訳ですが、この時期だと景色がこうも変わるものかと思い知らされました。

昨日も書いたように、恩師の退官記念講演会があった訳ですが、食物アレルギーの治療の時代の変遷も知ることができました。

昔の対応は、アレルギー検査が陽性になると、例えば鶏卵や牛乳が陽性だと鶏肉や牛肉もダメとか、鶏卵に反応が出ていると魚卵もダメという指導が専門医も含めて、当たり前だったそうです。また卵製品で症状が出ると、卵を含む一切の食品をすべて食べてはいけないと指導していたそうです。

これはあくまで“昔”の指導であって、残念ながら、未だにこんな指導をしている小児科医もいるのです。さすがに専門医で今はこう指導している小児科医はいないでしょうから、敢えて言えば、専門でない先生の知識はきっと若い頃に勉強した、こういった指導のところで止まっていると言えます。

昨日も「十年一日」という言葉を出しましたが、20年前の指導を“最新”として未だにそう説明しているのは無理があることに気付いて頂きたいと思っています。

それから時代が変わりました。私の恩師を含めた先生方がエビデンス(医学的根拠)のある医療を始められたのです。つまり、アレルギー検査が陽性であっても、実査に食べさせてみても、何も起きないこともあることが知られるようになりました。

ごく一部の専門医の間で徐々に「食物負荷試験」が行われるようになりました。当時は「食べ物は食べて当たり前」なので“検査”とは言えず、専門医が患者さんに食べさせたい一心で、アナフィラキシーのリスクを背負って食べさせてみても、そこに医療費はかかりませんでした。つまり、ボランティアとして行われていました。

私も恩師のもとで「食物負荷試験」の方法を学んできて、ずいぶん無償で負荷試験をやってきました。この状況がだいぶ変わってくるのです。つまり、保健診療として「食物負荷試験」が認められるようになりました。まずは入院の上、その数年後には外来でもできるようになりました。

お金がかかわって普及することもあります。この辺りから「食物負荷試験」が認知されるようになります。新潟県は例外かもしれませんが、「食物負荷試験」をやる施設が増えてきました。全国的にも開業医で積極的に負荷試験の取り組んでいるのは、まだごく少数だと思っています。

そういう意味では、私自身もお金に関係なく「食物負荷試験」に取り組みはじめ、「アレルギー検査が高くても、食べられる」ということを知ることができ、検査の経験を増やしていきました。私自身も新潟県に「食物負荷試験」を広めたいと啓発活動を地道に行っており、患者さんの認知が進むことで少しずつニーズも増えてきました。

開業医になって「時間がないから、負荷試験はできません」なんて言い訳にも何にもならないため、継続しており、逆に勤務医時代よりは数多くの負荷試験をこなしています。改めて食物アレルギーの治療の変遷を聞いてみると、私自身の対応も時代とともに進歩しているような気がします。

「食物負荷試験」が広まってきたことで、アレルギー検査が高いから除去しなければならない、という指導が正しくないことが分かってきた訳ですが、さらに治療の考えが変わってきました。例えば、卵アレルギーがあると、微量に含むものまで除去と言うのが当たり前だった訳ですが、その指導も変化してきました。

つまり、安全量であれば食べても良いという考えです。例えば卵焼きを食べて蕁麻疹が出るお子さんは、“濃いもの”を食べて初めて症状が出るため、“薄いもの”なら食べてもいいだろうと時代が変わってきたのです。これは患者さんにとって福音といえると思います。卵を完全除去するとなると、スーパーやコンビニで食材の裏の原材料表示とにらめっこして「あれもダメ、これもダメ」と言っていたのが、ゆるい除去でよくなったのですから。

重症であれば、完全除去をしなければいけないこともありますが、残念ながら未だに軽症のお子さんに完全を求めている医師もおり、それに必死に従っている患者さんを見ると気の毒になってしまいます。最近の考えだと、「食べて体を慣らす」という方法が正しいと考えられてきており、かえって完全除去の方が食べられるのを遅くする可能性が示されています。真面目にやっても、それが親の希望と逆方向に働くかもしれないのです。

その考えをより積極的に組み入れたのが、アレルゲンを食べることで、より食べさせようとする経口減感作療法とか免疫療法と言われている治療法です。いま一部の専門病院で、より良い方法を求めて研究が進んでいます。もちろん開業医でも、ある程度安全に取り組む方法が構築されれば、当院でも行うつもりで、学会に参加した際に最も私が注目している治療法です。

以上をまとめると、食物負荷試験が普及してきたこと、完全除去ではなく、食べても症状がでなければ安全とされる量なら食べてもいいとされてきたこと、食べて治すという経口減感作という治療が試みられてきたこと、この3点が食物アレルギーの対応の時代の変化と言えると思います。

確かに、私が小児科医になった20年くらい前は「食物負荷試験」なんて県内では誰もやっていなかったし、完全除去を患者さんに強いていたのだと思います。「卵を除去して」と言うのは医者は一言で終わりますが、患者さんは1日3回の食事や、さらにおやつの時に不安にかられ、それが何ヶ月も数年も続いていたと思うと心が痛みます。時代の変化してきたため仕方なかったとは言え、ずいぶん根拠のないことをやってきた訳です。

私を頼ってくれる患者さんに報いるためにも、今の時代に見合った正しいであろう指導をやっていくべきだと思うし、もっと「食物負荷試験」を新潟の地に広めなければならないと思いながら、福岡を後にしてきました。