「プロ」って何だろうと思います。
医師は病気治療の「プロ」であるべきです。でも細かいものまで含めると、誤診をしない医師はいないでしょう。プロ野球選手だって、エラーはします。しかし、エラーばかりしているとレギュラーの座を追われます。
でも、この場でよく書いているように、ぜんそくを“風邪”、“マイコプラズマ”、アトピー性皮膚炎を“乳児湿疹”、“乾燥肌”と誤診を繰り返している医院さんは、決して少なくありません。しかも、ぜんそくやアトピーを誤診している場合、「風邪です。薬を出しておきます。」とか「とりあえずこれを塗っておいて。」と副作用の説明もなくアルメタなどのステロイド軟膏が処方されています。
こんなことをしていても、医師は“レギュラー”の座を追われないのです。敢えて言えば、かえって儲かるというおかしなことが起こります。なぜなら、治らないから何度も通ってくれるし、説明もほとんどないので、“3分診療”で済むからです。医師にはペナルティも何もなく、患者さんが見切りを付けて、他の医療機関にかかるので、医師は自分の診断が間違っていることにさえ気付いていないのです。
全ての根底には「お医者さんが間違ったことをするはずがない」という考えがあるのが問題であることに気付き、対処してもらわないと、患者さんは救われないことになると思っています。
先日も触れましたが、市内の小児科に通院しても良くならないと言うお子さんが、当院を初診されました。この方は咳が長引きやすく、実はぜんそくと診断されるべきでした。ところが風邪とか、マイコプラズマと診断され、点滴を繰り返されていました。
私は、お母さんもぜんそくであると気付きましたが、驚いたことに、お母さん自身も小児期からこの小児科に通っていて、やはり風邪と誤診されていました。10年も20年も正しくない治療をされていたことになります。これだけの長期に渡り、ご自分の治療を見直していなかったことになります。市内には、こういうレベルの医療を受けている患者さんが他にもいると思うと、切なくなります。
かく言う私も“誤診”はします。これもよく言うように、治療して良くならなければ、「自分の診断が間違っているのではないか?」と考えて対処すれば、誤診に気付きやすいだろうし、それでも分からなければ、専門医に紹介するようにしないと、患者さんに大きな迷惑がかかります。医師の気持ちの持ちようで、誤診はかなり減らせるはずなのですが、繰り返す医師は繰り返しているのも悲しい現実でしょう。
少し前に、給食後に全身に蕁麻疹が出たというお子さんが当院を初診されました。その日は近くの病院で、蕁麻疹の治療を受けたそうですが、原因の精査はしてもらえずに、当院を受診されました。
食後でしかも広範囲の蕁麻疹です。原因が分かれば、それを避けることができ、また蕁麻疹に悩まされることもなるなることでしょう。それを考えると、原因を意地でも見つけるのが「プロ」だと思うのです。
本来、蕁麻疹の治療をしたところも小児科なので、そこで精査をすべきでした。何を食べたかさえも聞かず、検査をしようという話もなかったそうです。申し訳ないですが、プロの対応とは言えないのではないかと思ってしまいます。いずれにしても、その判断は当院に委ねられました。
ヒントはあっけなく、お母さんから得られました。初めて食べたものとして、カシューナッツがあったからです。カシューナッツは食物アレルギーの専門医の間でも最近頻度が少なくないことが認識されていました。私自身もカシューナッツでアナフィラキシーを起こしたお子さんの経験はあります。
頻度が多いこともあり、医院などで用いられるアレルギー検査の項目に入れられています。昨年調べられるようになったのですが、それを知らない小児科医は多いと思います。
経過からすると、原因はカシューナッツで決まり、と言っていいと思っていました。あとはアレルギー検査の結果を待つだけです。
しかし、何と結果は陰性でした。普通なら、「原因は分かりません」となるはずです。しかし、実際に重めの蕁麻疹を起こし、再度同じ症状を出させないためには、ここでもう一踏ん張りしないといけません。
例外的でしょうが、アレルギー検査は陰性であっても、症状は出ないとは限らないことを知っていれば、更に精査を進めることになります。アレルギー検査が陰性のことも想定して、当日にカシューナッツを含めたナッツ類そのものを持参して頂いていました。
これは「食物負荷試験」のためでなく、「皮膚テスト」のためです。アレルギー検査で調べられない項目は、「調べようがない」ことになるのですが、小針でそのものをつついて、それを皮膚に刺すことで局所が腫れれば、アレルギーがあることを証明する方法があるのです。
ピーナッツやクルミでアレルギー症状を起こすことはよくありますが、このお子さんは普段から食べていました。アレルギー検査も陰性なので、これらは食べても問題はないのです。一応モノを持ってきてもらい、皮膚テストを行ってみました。カシューナッツ、ピーナッツ、クルミ、アーモンド、ピスタチオを用いてみましたが、何とカシューナッツのところだけ大きく、蚊に刺されたような膨疹がみられました。
皮膚テストも陰性なら、「食物負荷試験」をやらないといけないかと思っていましたが、これでカシューナッツを除去する根拠ができたと思っています。
実は、私が診ても原因を特定できない場合があり、これは他の専門医の先生もそうおっしゃいます。今回は「プロ」に徹することができたのかなと思っています。
最近は、当院がアレルギーを専門にやっていることが学校や園でも広く知られてきて、先日もこどもの医院さんで書かれた食物アレルギーの診断書が納得いかないとかなりご立腹のお母さんが受診されましたが、園で「そこではなく、ちゃんとした専門医にかかるように」にと当院をご指名だったそうです。食べていたものまで除去を指示されたのですから、親御さんの怒りもごもっともだと思います。
当院が開院するまで、小児科なら全員が食物アレルギーの「プロ」と思われていたはずですが、そうではないことが広まってきたように感じています。それはいい傾向だと思いつつも、その期待に応えられるよう修行をしていかなければならないと考えています。


