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かかりつけ
2011年05月04日 更新

自分が親になってみて、子を持つ親の心が本当に分かるのだと思います。

例えば、汗もがちょっと出たくらいで心配になるし、鼻水を少し垂らしたくらいでびっくりして受診されるケースもあります。それを「これくらいで連れてきて…」と怒る医師もいることでしょう。

確かに、さほど緊急性もないのに救急車に乗って受診した場合は、「これくらいであれば、救急車は必要ないでしょう」といわゆる“患者指導”は必要でしょうが、先のケースだと、親御さんはお金を払って相談に来ているのですから、つき合うべきでしょう。

以前も触れましたが、嘔吐を“繰り返す”赤ちゃんを某小児科に連れていったら「胃腸炎。ハイ、点滴。」と言われ、こういうエピソードを繰り返していると言っても、診察室を追い出された話をしました。

結局、胃がねじれて吐きやすくなっている「胃軸捻転」という病気があり、胃腸炎というのは誤診だった訳ですが、大勢の患者さんをこなすことばかり気にかけていると、有名な小児科さんでもこんなことをしてしまうのでしょう。親御さんのSOSにちゃんと耳を傾けてあげないと、患者さんと向かい合うことはできないのだと思っています。

小児科を受診する患者さんの多くは軽症です。風邪や吐き下しがほとんどだからです。しかし、中には重症な病気が紛れていて、先の胃軸捻転のお子さんも、“繰り返す”ことで、その異常に気付くべきでした。

私自身も細かいものを含めれば、自分の気付かない物も含めて、“見落とし”はしょっちゅうしているでしょうから、それを少しでも減らすために、親御さんの訴えに耳を傾けていたいと思っています。話半分で、患者さんを追い返すような真似は、していないと思います。

そういうスタイルで診療していると、「前に行っていた小児科では、質問できる雰囲気ではなかった」とおっしゃいます。私はそう聞くと、「かかりつけ」って何だろうと思うのです。熱が出たり、吐いたりして点滴をしてもらうのが主治医ではないはずです。聞きたいことを聞けないような関係を「かかりつけ」と言えるのだろうかと思います。

困ったことに、前医の出した薬の副作用についての質問など、前医が説明すべきことをよく聞かれてしまいます。それだけ“聞きやすい”のだなと有り難く思う反面、それで他の患者さんの待ち時間が尚更増えるのは、困ったことだなと思います。“患者教育”の一環として、「それは前医に聞く話だよね」と一言つけ加えてから、答えるようにしています。

先日、アトピー性皮膚炎で診ている赤ちゃんが定期受診で来て下さいました。乳児のアトピーは対応に苦慮している小児科医、皮膚科医が多いようですが、良くならないのは、いつも言っているようにアトピーと診断されておらず、過小診断・過小治療が最大の原因です。ツボを抑えた治療をすると、重くない患者さんはじきに落ち着いてきます。この患者さんもそういった一人でした。

あとはいい状態を続ければよく、皮膚のメンテナンスの説明をし、必要な薬を処方し、お母さんも診察室の椅子から立ち上がったところで、「あっ、もうひとついいですか?」と日焼け止めの使用の可否について質問がありました。

これから徐々に紫外線が強くなっていくので、心配しているのだろうと思いました。アトピーの悪化要因として、紫外線の影響もあるでしょうから、それは「かかりつけ」として答える義務があると思いました。それについて説明しましたが、日焼け止めを塗れば、長時間外にいて良い訳ではありませんし、汗もアトピーの悪化要因になります。その辺も追加して説明しました。

「分かりました」と帰りかけに、また「もうひとついいですか」と言われました(汗)。某小児科さんなら追い返されているところかもしれません。別の小児科では「質問が多い」と叱られたり、心配な点を説明していると「お母さんの話より、私の話が重要だから聞きなさい」と言葉を遮られるのだそうです。こんなことがあると、親御さんは萎縮してしまい、聞きたいことも聞けず、我慢してかかり続けることになると思います。敢えて言えば、これらを“反面教師”としていきたいと思っています。

ちなみに、2つめの質問はヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンを受けるべきかという大事な質問でした。この件に関しては、国や市側の説明は圧倒的に不足していると不満に思っています。親御さんは「ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの同時接種後にお子さんが何人も亡くなった」ということはニュースで聞いて知っています。私の認識では、全国的にこれらのワクチンが無料化されたために、一気に接種者が増え、たまたま起きた「乳幼児突然死症候群」と重なって見えたのだと考えています。

同時接種が死を招いたように聞こえる報道の仕方に問題があるし、その誤解を解くフォローもあまりされていなかったようなので、この患者さんのみならず、かなり外来で質問を受けています。「国が大丈夫と言っている」などと適当に答えるのはなく、そのひとりひとりに再開になったいきさつを説明しています。

特に外来が混雑していれば、小児科医にしてみれば「タイムロス」と考えるでしょうが、必要なことというか、仕事の一環だと思っています。いやかかりつけの義務とも言えます。

親御さんから「小児科医には聞きたいことも聞けないもの」と思って欲しくないし、少なくとも当院はそうだとは思われたくないと思っています。地元の医療レベルのアップのために、診療時間は多少は余計にかかるでしょうが、今のスタイルを貫いていかなければならないと思います。