当院は開業医でありながら、週に何人も「食物負荷試験」を行なっています。
「病院はレベルが高い、開業医はそうでもない」と思っている親御さんも多いでしょうが、それは医師の心がけ次第です。医学的根拠のあることをやりたいと思えば、場合によっては、病院以上のレベルのことも可能です。少なくとも食物アレルギーに関しては、目の前の患者さんに「食べさせてあげたい」と思えば、負荷試験をせざるを得ないはずですが、実際にはそうされていない現実をいつも悲しく思っています。
先日、小麦がクラス2の1歳児に負荷試験をやることにしました。小麦はアレルギー検査の値が卵や牛乳よりも当てになりません。
クラス別の負荷試験の症状出現率を示したデータがあります。卵や牛乳はクラス6ですと、食べられない確率は相当高いのですが、小麦はうどんで負荷試験を行なうことが多いのですが、クラス6であっても73%しか症状が出ない、つまり4分の1は食べても何ともないのです。クラス2ともなると、4%のみ症状が誘発されるだけで、96%が食べても問題ないのです。
この患者さんはクラス2だったのですが、負荷食材はうどんでなく、クラッカーを使うことにしました。先程述べたように、うどんで症状の出る確率は4%ですから、より小麦の含有量が薄いクラッカーなら、勝算は明らかに4%以下のはずです。
かといって、一気に食べさせるのは危険な場合もあるので、少量から進めていきます。クラッカーを食べてみて、口の周りに発赤が出ました。これは食べているうちに消えることもあり、まだ症状が出たと判断はできません。
食べ進めてみると、体に蕁麻疹が出始めました。機嫌も悪くなっています。小さなお子さんですと、ゆっくり食べさせるので、途中で飽きてしまい機嫌が悪くなることもあります。少し中断して様子を見ると、蕁麻疹が少しずつ広がってきます。
ここで、負荷試験は中止となりました。広がってきた蕁麻疹への対応として、内服薬を使い、その後ゆっくり消失してくれました。
96%以上の確率で食べられると信じて負荷試験を行ないましたが、これまでは食べられる方でしたが、今回は食べられない方に転んだ格好になります。皆が食べられると分かっていれば、負荷試験は行なわないので、こんなこともあるのだと思わされました。
クラッカーで症状が出てしまったので、うどんやそうめんなどの麺類、パンは厳しいことは明らかです。現時点では、小麦の摂取は厳しいと結論づけることができるでしょう。
通常なら、「しばらく食べてはいけない」となると思うのですが、冒頭に述べたように医師は医学的根拠のあることをやらなければなりません。ただし、最近は完全除去を続けた方が食べられなくするのではないかと言われています。完全除去が必ずしも根拠のあることとは言えなくなってきた以上、現状でベターな選択をしなければなりません。
今回も“秘策”を使おうがと思っています。新潟県内の企業が、小麦たんぱくの95%を除去した低アレルゲン小麦を使ったクッキーを商品化しています。これを使って、ごく微量でも小麦を摂って頂く努力をした方がいいと考えています。
親御さんの気持ちが落ち着いてからと思っていますが、「食べて慣れさせる」という考え方が専門医の間でも支配的になっており、また負荷試験に挑戦したいと考えています。


