当院は開院して、まもなく4年になります。
最近は、ようやく小児科医として認知されてきたせいか、アレルギー以外の患者さんが初診として受診して下さるようになりました。4年かかったことになります(汗)。ただ、他院で良くならないと、当院を受診されるケースは以前からありました。
先日、1ヶ月の赤ちゃんが当院を初診されました。痰がらみの咳が出て、お母さんによるとゼーゼー聞こえるのだそうです。某医院さんでは風邪と言われていたそうですが、風邪薬がしっかりと出されていました。
いつも言っているように、「風邪じゃないから、症状は改善しないのだろう」と考えました。そもそも生後1ヶ月って、母からもらった免疫があるため、風邪は相当引きにくくなっているはずです。しかも、常識的に考えて、風邪を引いても普通はゼーゼーなんてしません。
真面目な小児科医なら、時期的には外れていますが、RSウィルスも疑う状況です。RSウィルスは例年冬から春にかけて流行しますが、痰が絡むこと、乳児がかかりやすいこと、RSウィルスに限っては母からもらった免疫(移行免疫)が効かないことなどから、RSウィルス感染を疑いました。しかし、結果は陰性でした。
ここから何を考えるかと言えば、いわゆる今回のような「ぜんそく性気管支炎」の引き金のウィルスの多くはRSウィルスが原因とされています。ただ、全部がRSウィルスとは限らず、それ以外のウィルスが引き起こしているのかもしれません。また、1ヶ月で早いのですが、将来的にぜんそくになる予定で、いわゆる“気管の弱さ”が表沙汰になった状態だったのかもしれません。
前医で出されていたのは、抗生剤と、メプチンと言う気管支拡張薬、ペリアクチンという抗ヒスタミン薬、去痰剤でした。1ヶ月未満を「新生児」といいますので、厳密には新生児には当たらないのですが、メプチンやペリアクチンという薬は、新生児には“使用経験がない”ため、使わない方がいいとされています。結構、大胆な薬の使い方のようです。
実は、この赤ちゃん。「けいれん」も心配されていました。最近になって手がワナワナとなるのだそうです。赤ちゃんはモロー反射といい、体を揺れるとそれこそ手がワナワナとなる反射があります。しかし、ここ最近、急に目立ってきた症状のようです。
“急に目立つ”となると、嫌な感じです。少し前に、年長のお子さんがドキドキして手が震えるという症状がホクナリンテープを使い始めた頃から見られ始め、結局はテープの副作用だったのですが、バセドウ病という甲状腺の病気も一時疑い、焦った話をしました。
確認すると、メプチンという薬を使い始めてから、ワナワナが出てきたようです。これでメプチンの副作用の可能性が高まりました。
メプチンを中止し様子を見ると、ワナワナが見られなくなりました。残念ながら、副作用だったようです。
ペリアクチンという薬も、痰を粘稠にして出しにくくなる可能性のある薬です。強い眠気を催すこともあります。やはり新生児には使いにくい薬だと認識しています。
当院ではこの月齢の患者さんにこれらの薬を処方していませんが、副作用は起き得る訳ですし、慎重に投与する薬だと再認識しました。当院の場合は「院外薬局」なので、処方が適切でない可能性があると、優秀な薬剤師さんがチェックして連絡をしてくれるシステムになっています。やはり「院外薬局」は、メリットが大きいのだと、こちらも再認識しました。
ゼーゼーしたからと言って「はい、ぜんそくです」と診断できるものではなく、ましてや、今回は生後1ヶ月の赤ちゃんです。薬の副作用も出やすい上、慎重に対応しなければなりません。RSウィルスは陰性でしたが、何らかのウィルスが気管支に炎症を起こし、痰を多く作っているために、気管支炎が遷延している状態だと考えています。
これまでも1ヶ月のお子さんには、大胆な処方はしてこなかったのですが、もちろんメプチンとペリアクチンは中止して、必要最小限の薬を使い、経過を診させて頂いています。ゆっくりですが、症状も改善しています。
産まれたばかりの赤ちゃんですと、小児科専門医であっても使える薬は限られており、慎重な処方が求められることを今回は理解して頂きたいと思っています。


