昨日、エピペンを処方されている食物アレルギーのお子さんが重篤なアレルギー症状を起こした場合、園や学校関係者がエピペンを使用しても「医療行為」にはならない、と書きました。
薬を注射するんだから、「立派な医療行為じゃん」と思われるでしょうが、目の前に死ぬかもしれない患者さんがいて、しかもエピペンを打てるはずの親御さんや救急救命士がすぐに来れない状況であれば、指をくわえて見ている訳にはいきません。AED(自動体外除細動器)と同じように考えればよいと思います。逆に、何もしなければ人道的な面からは、非難されても仕方ないと思われます。
いわゆる「医療行為」を継続的に行なうことが医師法違反に問われるのです。少し前に話題になった被災地で「医療行為」を行なっていたニセ医者さんは逮捕されましたよね?。
神奈川県など、食物アレルギーの専門医も多く、進んだ地域では、関係者の尽力のお陰もあり、専門医が学校などに出向いて、エピペンの使い方の指導を行なっているそうです。食物依存性運動誘発アナフィラキシーなどは中学生くらいになって急に発症することもあります。これまで何ともなくてもです。そういう意味では、どの学校でもアナフィラキシーショック時の対応は理解しておく必要があります。
しかし、既に食物アレルギーで強いアレルギー症状を起こしており、ましてやエピペンを処方されているようなケースでは、何か間違いが起きれば、エピペンを使うような事態が容易に想定されます。
ですから、エピペンを持っている患者さんがいる園や学校は、リスクを抱えていると考え、アナフィラキシー時の対応を理解しておく必要があります。もちろん、エピペンの使用法もです。
例えば、近くに病院があったとします。救急車を呼べば、すぐに搬送できるから大丈夫、と思っていても、私は決して大丈夫とは思いません。
何故なら、大災害や大規模な事故で救急車が出払っていたら、待てど救急車は来ません。更に新潟は雪国です。ドカ雪が降れば、交通事情が悪化し、救急車とてすぐには到着できません。実際に、私の診ている患者さんが、冬に学校でアナフィラキシー症状を起こしました。当院に救急車で搬送されるまで30分以上かかりました。ちなみに幸い重篤ではなかったので、無事に回復しています。
やはり、園や学校が、好きで重症な食物アレルギーになった訳ではないお子さんを守るために、いろんな事態を想定して、いざという時のために準備はしておくべきだと思うのです。
昨日の新聞記事のように、何もしなかった学校は批判的な論調で書かれました。もちろん子どもを守るためですが、園や学校側は自分の身を守るためにも、準備はしておいた方がよいと考えます。
神奈川県での試みを真似て、私自身、当院でエピペンを処方したほとんどのケースで、園や学校の先生方に当院まで来て頂き、アナフィラキシー時の対応について、エピペンの使い方も含めて指導しています。
親御さんを通して園や学校に働きかけると、“渡りに船”という感じで、すぐに来て下さるケースがほとんどで、食物アレルギー児を取り巻く大人達が一生懸命対応してくれている、という実感がありました。
ただ、全例という訳ではありません。先日も、園の先生に親御さんを通じて声をかけたところ、「医院には行けない。いざとなれば救急車を呼ぶ。」というつれない返事でした。
園や学校も、やるべきことは食物アレルギーだけではないので、いろいろ忙しいのは分かります。ただし、健康があっても園や学校生活なので、健康が脅かされる状況は是が非でも避ける努力は必要だと思っています。
結局、私も地域のレベルアップのために努力はしているつもりですが、敢えて言えば、重症な食物アレルギー児を預けるには、心許ない施設もあると言えるのだと思います。園•学校のケアレスミスによる誤食が原因で重篤な症状を起こしてしまった場合、エピペンを使った早期(30分以内)の初期治療が重要になってきます。
こういうことをまず理解して頂かない限り、「医院には行けない。いざとなれば救急車を呼ぶ。」という私の意向とは全くかみ合わないような回答が繰り返されるのだと思います。
新潟県は、食物アレルギーの専門医が極めて少ないため、こういう理解不足からくる対応を取る施設は少なくないと思っています。これまでは、それで済んだかもしれません。ただ、これからは済むとは思えず、変わらなければなりません。
結局、それを“変える”のは、現時点では極めて少数の食物アレルギーの専門医ということになると思いますが、並大抵の努力では困難だと思っています。しかし、前に進むしかないのです。
間近に迫った「すこやか健康フェア」では、講師の柴田先生からもそういう話も聞けるはずですから、是非とも都合をつけて、聞きにきて頂きたいと思っています。


